中身
目に留めていただきありがとうございます。
目が覚めると、僕は喉が乾いているのを感じた。
だから水を飲もうと思った。僕の机に置いてあるペットボトルに、天然水が入っているはずだ。机に手を、しかし僕の手は、動かなかった。
はは、夢でも見てるのか僕は。いやもしかして、これが金縛りってやつなのか。
小さく笑って、しかし喉が乾いていた僕は、水を飲みたくて必死に手に力を込めようとした。
「無駄だよ」
誰かの声がした。よく聞き慣れた、でも誰の声か、その時は分からなかった。
僕は声を無視して力む。
「無駄だってば、分からないの」
瞬間、僕は、その声が誰のものかに、気付いてしまった。気付きたくなかった。
「もう、分かってるんじゃんか」やめろ、やめろ。
「あー、すっかり体がなまっちゃったよ」
そんなはずはない。
「さて、じゃあ、そろそろ学校に行くかな」
嘘だろ、やめろ、僕は水が飲みたいんだ、学校なんて行かなくていい、やめてくれ。
「学生の本業は勉強することじゃないか」
布団から起き上がり、手に力をいれて立つ。
扉に向かって歩き出す。
「本当は水より冷たいジュースが好きだからね」
何週間と、風呂やトイレに行く以外に触りもしなかったドアノブに触れ、回す。扉が開く。
僕の焦りを無視して、僕は部屋から出る。
やめてくれ。やめてくれ。
「自分のこと嫌いなんだろう、もう嫌なんだろう」
小さな声で僕が呟く。
確かに僕は僕が嫌いだけれど、お前みたいな僕も嫌いだ。
「君は僕だろ」
「僕は僕が理想としてる僕だ」
「もう嫌な僕とはお別れだ」
「良かったな」
やめろ、何を言ってる、僕は僕だ、お前は僕じゃない。
「あら、今日は早いのね、おはよう」
ダメだ、返事をするな。
「おはよう母さん」
何で
僕は、自分が溶けて消えて行くのを感じ
目を覚ますと、僕はびっしょり汗をかいていた。息は乱れて、心臓の鼓動の音が全身に響く。
僕はペットボトルに手を伸ばした、が、そこにペットボトルなどなかった。
僕は立ち上がって、ドアノブに手をかけた。
感想、アドバイス等ありましたら、是非お願いします。