表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

最後の戦い

 マカナとの例の会話から約百年後、ルレロは二か月に一度の定例行事、ジズド領侵攻に参加するためにベラドルゴ帝国軍の宿営地に来ていた。この場所での戦争は何度も経験しており、辺りの地形は熟知している。六百年経って人も街も変わっていったが、自然だけは俺に着いてきてくれているようだな、とルレロはしみじみと感じた。

 ルレロは皇帝に志願し、大元帥という戦の司令官としてではなく、一介の兵士として参加することになった。装備も一般の兵士と同じ物にした。

 これは流石に隊長に止められたが、「久しぶりに初心に戻りたいと思ってな。たまにはいいだろう。それとも、この私がこんな戦いでやられるとでも思っているのか?」と凄むと慌てて首を横に振り、ルレロの申し出を認めた。

 兵士たちはいつになく緊張した面持ちで、ルレロを迎えた。普段の弛緩した雰囲気とは違って、戦争初期のような雰囲気が漂っていた。

 侵攻当日。空は抜けるような青空であった。ルレロはその明るさに、これから為そうとすることにおいて、少し躊躇いを覚えたが、強い意志で何とかそれをかき消した。

 隊長より、号令が出された。ルレロは他の兵士に混じり大声を出しながら、走り始めた。

 その時ふと、あの頃が思い出された。遠い昔の、不死が発覚する前の初戦争。生き残るという気概でいっぱいだったあの時。ルレロは心の中で苦笑した。終わりの日に始まりの日の事が思い出されるとは。

 敵側からも防衛のために兵士が突進してくる。

 ルレロは味方の誰よりも前に出て、敵兵の群れの中に飛び込んだ。

「おい!出すぎだぞ!」

 隊長が叫ぶ。後ろからは、誰が飛び出したかは分からなかった。

 ルレロは剣を抜かなかった。ただ、前を見つめその時を待つのみである。

 敵兵が前から斬りかかってくる。

 さよなら。誰にとはなく最後にそう呟いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ