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予兆


「ロイド、久しぶり」


今まさしく目の前にいるのは、3ヶ月前、谷底で助けたドラゴンの少女フリューレだった。

前とは違い、金色の髪をなびかせ、その身を鎧に包んだその格好は凛としていた。

ロイドはガントレット、サークレットを外すとトライルブレイザー通称TBから降りる。

山間だけあって上着のジャケットを羽織っていても少し肌寒い。しかし今のロイドには不思議と寒さを感じなかった。


「や、やぁ、フリューレ,大丈夫か?」


目の前のフリューレを、まじまじと見つめながら,口から声をしぼり出す。

「ええ、本当に危なかったわ。おもった以上に強くて、油断してたの。でも、またあなたが助けてくれるなんて・・・・」

申し訳なさそうに苦笑いをするフリューレ。

「そういえば、お前、傷負ってるんじゃないか?背中とか、」

ポーチをまさぐり、白い四角い布を出すとロイドはフリューレに近づく。

背中を見ようとぐっと近づくロイドにフリューレは驚き戸惑った。

「え、あ、ロイド、なに?」

「いいから、ほら見せろって、どこだ?」

「あ、え、ちょ、ちょっと、まって、きゃあ」

金色の髪をどかし背中を見ようとしたロイドを思わず両手で押しやる。

か細い腕はそこまで力はないが、フリューレの抵抗に1、2歩下がる。

「「あ、ごめん。」」

おもわず同時にあやまる。さぁぁとゆれた髪からのぞいたフリューレの頬は少し赤かった。

そして


ぷ、ふっ、ふふふ、あははははは


どちらともなく笑ってしまった。


ようやく打ち解けたところで、ロイドはもう一度フリューレに言った。

「いや、さっき背中とか血でてたからな、他にもいろいろ。痛まないのか?」

心配そうにするロイドに

「ああ、あれはあたしであってあたしでないから、」

と答えると、あ、しまったという顔をするフリューレ。

「あたしであって、あたしじゃない?」

「え、あ、うんとね、なんと言うか・・・。ほ、ほら、変身すると性格が代わるって言うか・・、でもほら怪我してないから。」

くるりと背中を見せるようにしてターンするフリューレ。ふわりと舞い上がる金色の髪の毛の仕方から鎧が見える。鎧には傷が一つも付いてない。

上半身と腰の境目絡みえる下地にも血がにじんでいる様子はなく。どうやら本当に怪我はなさそうだ。

「まぁ、怪我がないってならそれでいいんだけどさ。でも痛いところがあったら、遠慮なくいってくれよ。」

そういって前も足に張ってもらった布状の物をパタパタ振るロイド

「ありがとう。」

と嬉しそうにフリューレは答えた。

・・・なんか話をごまかされたような気もしたが・・・

それよりもロイドはフリューレの着ている鎧が気になった。

「前は着てなかったよな、それ、」、

「うん、お母様が、『あなたは本当に怪我がたえないんだから』って、作ってくれたの」

「へぇ、そっか、でもすごく似合ってていいぞ」

似合っているといわれ、うれし恥ずかしそうに照れながらフリューレは微笑んだ。


ロイドはコクピットシートの後ろからリュックを出して座る。

フリューレもロイドの隣に座った。

「でも、ロイドどうしてあなたはここにいるの?」

リュックから取り出した水筒をあおるロイドにたずねた。

「ああ、ちょっとタケキノコを取りに来てたんだ。ほら」

キノコがたくさん入った袋を、見せる。

「高く売れんだよな。これ」

「いくら高く売れるからって、ここはもうあたしたちの支配領域よ?そんな危険を冒してまで手に入れる必要があるの?」

あきれ顔のフリューレ。

どうやらキノコを探しているうちに境界を越えずいぶんドラゴンの領域内に来ていたらしい。

「ま、ハンターの性ってやつかな。でもそのおかげでフリューレにまた逢うことができたしな。」

ニカッとロイドは笑うその笑顔に、

「も、もう、あたしだったから良かったものの、他のドラゴンだったら今頃はどうなってたことかわからないんだからね!」

フリューレは頬を染めてぷいっと顔を背けた。

「いや、わりぃわりぃ、次からは気をつけるよ。」

ロイドはその癖のある頭をバリバリとかいた。そんなロイドを見て

「うふふふふ、もう、ロイドったら、次から気をつけてよね。」

「そうだな、気をつけるよ。あははは。」

と二人は笑う。


「そういえば、咄嗟のことでたおしちまったが、こいつもドラゴンなのか?」

首を失い肉塊となったそれをロイドは指差した。

「いいえ、これはディノサウルって言うんだけど、私たちドラゴンとはまったく違うわ。元は同じ種だったって言う説はあるけれどね。」

「そうか、俺には見分けがつけがたいんだが・・・」

「まったく違うわよ、もう、あたしたちをこんなのと一緒にしないで、ほら、こことか・・・」

フリューレは怒ったように形のいい眉を吊り上げ、一つ一つその違いを説明していった。

「それに、ディノサウルは言葉だってわからないんだから!あたしたちとはまったく違う生き物よ!それにあたしたちにとっては、こいつらは不吉の予兆なの。」

「わ、わるかったよ。で、フリューレはどうしてこいつと戦ってたんだ?」

「それなんだけど・・・・」

「どうしたんだ?」

「このディノサウルは本当はもっと高い山脈とかに住んでいて滅多にこんなところにきたりしないの。」

「まよいでたのかな?」

「それならいいんだけど、ここ最近、多くの目撃例があって、あたしたちの仲間も何人か被害があったの。で、その真偽を確かめるために巡回してたんだけど、運悪くばったり出くわしちゃって・・・。」

「こいつらの住んでる山脈ってあそこか?」

とロイドは後ろのそびえる山脈を指差した。

「ええ、でもなんで?」

そういえばと、ロイドはファン爺の言葉を思い出す。

・・・・「北東の山脈に鉱山が見つかったんだってさ」・・・

たしか今は・・・と考え込むロイドの顔をフリューレが心配そうに見つめる。

その視線気がつくと、

「ああ、実は3ヶ月くらい前にあのむこうの山脈で、鉱山が見つかったらしくてな、いまは中央惑星政府が管理して採掘してるはずなんだが、もしかしてそのせいもあるか?」

しかし首をよこに振り

「なら、なおさらここにはこないわ。だってそこには沢山の人間がいるんでしょう?それなら逆にえさに困らないし、ここまで出てくることはないわ。」

さらりと恐ろしいことを一うフリューレに苦笑いをするロイド。

「ははは、えさか。たしかにな。でもあんなのが俺たちのコロニーに飛んできたら困るな。」

「そういえばロイドって、どこのコロニーに住んでいるの?」

「ドゥム・スピーローだ。」

「あの運河にある?ふぅーんそうなんだ。」

「知ってるのか?」

「え、あ、うん。ちょっとね。それに、あそこは大きいもの。」

フロンティアコロニー『ドゥムスピーロー』、ここら辺では結構大きい部類に入る。

「そうなんだよな、それにあそこは俺の親父が開拓したコロニーなんだ。」

遠い目をして今は亡き父に思いをはせる。

・・・・仕事を終えて帰ってくると出迎えた俺の頭をぐりぐりしてくれたっけ・・・。

でもどうして今こんなことを思い出したんだろう・・・・。

ふと横のドラゴンの少女をみる。西の空に傾いて赤みがかってきた日の光をあびて光る髪の先を、指でもてあそんでるその姿をみて、こんな辺境のしかもドラゴンの地であるのにもかかわらず安らぎを感じた。

・・・・まるで家にいる時のようだ・・・・

「家か・・・」

「家?」

首をかしげ聞き返すフリューレに、

「そろそろいかないとな、日が暮れる前に戻らないと・・・・」

パンパンとズボンに付いた土を払う。

「そう・・・・。」

どこか残念そうにフリューレはうつむく。

立ち上がったロイドは、何かを思いついたようにTBのシートの後ろから袋を取り出した。

「どうしたの?」

ロイドの行動にフリューレはたずねた。

「こいつの情報は、俺たちのコロニーにはないんだ。フリューレのおかげで大体の事はわかったんだけど、一応サンプルをね。」

腰のホルダーに収められたガンスライサーを抜くとブレードモードに切り替え、鱗ごとディノサウルの肉を切ろうとした。

ガリガリガリ

「あ、っくそ、こっちのほうが欠けちまった。」

ひびの入った刃をみて困ったロイドの視線の先に、すっと棒のようなものが差し出された。

「はい、これを使って。これはあたしたちドラゴンの名工が鍛えたものなの。」

それはフリューレの腰に吊るしてあった剣の柄だった。

「おう、いいのか? わりぃな。じゃあ、ちょっと借りるぜ。」

剣を手に取り目の前に掲げ眺めると、その輝く刃を凄みをロイドは感じた。

軽く片手で振るい感触を確かめ終わると、ロイドは肉塊に向かって剣を構える。。

すっと肩から力を抜いて剣を正眼に構える。イメージを大事にするTBで剣を使っているロイドだ。

その構えは堂に入っていた。

その姿を見て、ほぅっーと見とれてしまうフリューレ。

「はぁ!」

硬いうろこに向かって、ロイドの腕と剣は綺麗に弧を描いた。

何の抵抗もなくふりぬく手ごたえに、

「空振りしたか?」

しかし次の瞬間、鱗の表面にすすーっと線が走り

ぽとっ、

綺麗な切り口を残して鱗と共に肉片が地面に落ちた。

「すごい切れ味だ・・・・。」

素直にロイドは驚いた。

そして、ロイドはサンプルを袋にしまう。

「ありがとうな」

フリューレに剣を帰そうとした、そのときだった。


ごぉー


突然大きな黒い影が二人を包んだ。

「さがしましたぞ、フリューレ様!」

「まったく、あれほど先に行かないでくださいと何度言ったらわかるんですか!」

バサバサと翼をはためかせて焦げ茶色と緑色の、2体のドラゴンが降りてきた。

「オルガ!ロッシュ!」

見上げ、声をかけるフリューレ。

その背後に、身構えるロイドに気がつき、2体のドラゴンはくわっと目を見開いき威嚇する。

グルルル

いつでもロイドに飛びかかれるようにと体制を整えた。

「二人とも待って。」

フリューレは手を広げて静止をかける。

「しかし、このにおいは・・・そいつは人間ではありませんか?」

焦げ茶のドラゴンが声を荒げる。

「ほう、おまえは・・・あのときのやつか?」

緑色のドラゴンがロイドを見て言う。

「そ、そうなのオルガ、彼よ。」

「しかし、これはどういうことですかな、フリューレ様、なぜ人間がこの我らドラゴンの地に?」

いるはずのない人間がここにいることに不快を表すオルガ。

「キノコを取りに来て間違って入ってきてしまったらしいわ。」

フリューレはロイドをかばうように言う。

「そうか、ならば人間よ、さっさとこの地を去れ。本来ならばかみ殺してやるところだが、お前には借りがある。見逃してやろう。さぁ、行け!」

オルガは緑色の体を一歩踏み出す。

「そんな言ういい方をしなくても・・・」

フリューレ言い返そうとすると

「族長がおっしゃられたことをお忘れですか?フリューレ様。人間は恐ろしい生き物だってあれだけおっしゃっていたではありませんか!」

焦げ茶のドラゴンはフリューレを諭すように言う。

「で、でもねロッシュ、彼はわたしがディノサウルに殺されかけていたところを危機一髪で助けてくれたの!」

ぐ、こげ茶色のドラゴンのロッシュは押し黙った。

しかし今度はオルガがその緑色の巨体を揺らして口を開いた。

「ふん、人間風情が、たかだか数回フリューレ様を助けただけでいい気になるなよ。それに、フリューレ様、この人間の乗るそこのトライルブレイザー、ドラゴニウムが使われているんですぞ!そのドラゴニウム欲しさに人間たちは我々ドラゴンを殺していることを、知らないわけではないでしょう。」


・・・ドラゴニウム・・・


ドラゴンの骨に含まれるという無限の可能性を秘めたレアメタル。TBをはじめ、今ロイドたちが使っている電子機器のいたるところにつかわれていた。かつては、友好関係を結んでいたドラゴンに提供してもらいそれを使っていたのだが、その多様性から需要が増え、数が足りなくなり価値が高騰。一攫千金を得ようと生きているドラゴンを狩る者まで出てくたのだ。それに怒ったドラゴン達は全面戦争を宣誓。そして、今現在のように見かければ戦を仕掛けるという犬猿の仲になってしまったのだ。


「そんなことは知ってるわ、でも、でも、」

ひっしに言い返そうとするフリューレの肩にロイドは手を置いた。

「フリューレ、ありがとう。でも、もういいんだ。」

「ロイド・・・。」

「そもそもドラゴンの支配域に入ってしまった俺の不注意がいけなかったんだ。だから、」

「ううん、あの時本当にあなたがきてくれなかったらあたしどうなってたかわからなかった・・・、それに、それに、ロイド、あなたにもう一度会いたくて会いたくて・・・やっと会えて、あたしとてもうれしかったの!」

あの日以来、また会える日を、もしかしたらもう二度と会えないないかもしれない、でも、もしかしたらとロイドに逢える夢を何度見たことだろう。それを思うと、気持ちがあふれ出して、青い瞳から流れる涙を止めることが出来なくなってしまった。

「泣くなよ、俺だってフリューレを助けられて良かった、それに俺もお前にもう一度逢えて本当によかったよ。」

両手で顔を覆い泣きじゃくるフリューレの頭に手を置くと金色にいろどられた髪を優しくなでた。

「オルガとロッシュだっけ?」

ロイドはまっすぐ2体のドラゴンを見つめて

「悪いのは俺だ、すぐここから立ち去るよ。すまなかったな。」

手に持った剣をフリューレの腰の鞘に戻すと、

「じゃあな、フリューレ」

リュックを片手に持ってフリューレから離れると、TBまで戻り、ハッチをあけた。

「ロイド!」

振り返ると、涙で真っ赤に晴らした青い目に鼻水でぐちゃぐちゃになったフリューレの顔があった。

「まったく、せっかくの可愛い顔がそれじゃぁ台無しだ、そらよ、」

「あっ」

投げたタオルをキャッチしたのを見送ってロイドはコクピットに乗りこんだ。

「フリューレ、あんまり無茶して2人に心配かけんなよ、元気でな!」

フリューレに向かってニカッと笑うとハッチを閉めた。

ガンドレットを装着しサークレットを頭にかぶる。

・・・機動・・・・

ブゥンと展開したモニターにタオルをぎゅっと握り締めるフリューレの顔が映った。

「じゃあ、フリューレを頼むぜ。」

「ふん、貴様にいわれるまでもないわ。」

ロイドは一回うなづくとフリューレたちに背を向け歩きだす。


 ロイドーーーーー!!


もう一度だけ、振り向いてもらいたくて、フリューレは精一杯の声を出してロイドの名前を叫ぶ。

「フリューレ・・・」

ロイドは振り返らず、ただ挙げてたその手親指をうえに挙げた。

「ロイド・・・。」

去っていくTBを見つめるフリューレを赤々と燃える夕日が包み込んだ。




「さぁ、フリューレ様、我々も戻りましょう。」

「ええ。」

泣き腫れた顔を隠すように兜をかぶると、光を身にまとい、フリューレはドラゴンへとその身を変える。

そして3体は飛び立った。

「オルガ、ロッシュ、わたしは・・・」

「もうなにもいいますまい」

と一言いってオルガは口を閉ざす。

「実はフリューレ様、こんなときで申し訳ないんですが・・・」

ロッシュがおずおずと切り出す。

「わたしはもう大丈夫。で、どうしたの?」

「はい、実は・・・・」

ロッシュがその先を言おうとすると、オルガがその先をさえぎった。

「その話は族長の前で話そう。フリューレ様も今しばらくお待ちください。」


「ただいま戻りました。」

兜を脇に抱えフリューレは族長の部屋に入る。

いつも荘厳としているのだが中はざわついていた。

「フリューレ、お帰りなさい。」

「いったいどうしたんですか?」

「ええ、実はディノサウルの大群が南に向かっているという報告がありましてね。」

耳を疑うフリューレ。ディノサウルはその一生を同じところで過ごすはずなのにいったいなにがあったというのだ。

「ところで、フリューレ達の方は何か報告することはありますか?」

・・・ロイドのことを言わなくてはならないの?・・・

そう思ってどうしようかと迷っていると、後ろに控えていたオルガが口を開いた。

「フリューレ様がディノサウルと接触。そちらは処理いたしましたが・・・・ロッシュ、」

この先はお前が話せと、オルガは促した。

「あ、はい、前から監視していた中央惑星政府の発掘部隊が全滅。そして、アレが目を覚ましました。」

族長達の間に戦慄が走った。

「とうとうこのときが来てしまいましたか・・・、」

フリューレの母である族長は額に手を当てると頭を振る。

「お母様、アレとはなんあんですか?」

「フリューレにはまだ話していなかったから知らないのも当然ですね、あのディノサウルたちがいる山脈の下にはテラメノムという山のように大きい生物がいるのです。そして私たちは祖祖父の時代から監視してきたました・・・。いつかは起きるとおもっていましたが、それがいまとは・・・・。おそらく採掘が刺激してしまったようですね。」

ロッシュに向き直ると、

「で、その進路は?」

「まっすぐ南下しそのまま運河に到達する模様です。」

運河と聞いてフリューレはビクンとなった。

・・・・運河のコロニー『ドゥム・スピーロー』、ロイド・・・

すると誰かが

「そっちには確か人間どものコロニー『ドゥム・スピーロー』があるほうか。まぁ自業自得だな。」

「まったくだ、いい気味だ」

声のしたほうをフリューレはキィッと睨む。しかし声の主は気がつかないのか「ざまぁみろ」だとか

「このまま全部のコロニーを壊してしまえばいい。」と話を続けていた。

「フリューレ様」

そんなフリューレの態度ををオルガがたしなめる。

「族長、とりあえず南の避難だけで、後は様子見でいいじゃないでしょうか。よもや人間どもを助ける義理もありますまい。」

族長を囲む一人が言った。

「そうですね。ロッシュはとりあえず引き続きテラメノムの監視をお願いしますね。」

「はい、かしこまりました」

「では、そういうことですから、フリューレ、事が落ち着くまでは南にはいかないように、オルガ、避難のほう指示を頼みましたよ。」


部屋を出ると

「フリューレ様、くれぐれも単独行動はお慎みください。それと・・・あの人間の青年のことはお忘れになってください。それがあなたのためです。」

オルガはそう言い残すと、任務のために去っていった。


フリューレは部屋に戻ると鎧を脱ぎ捨て、兜を床に投げつける。兜が転がって止まった

机の上を見るとロイドがくれた携帯食料が載っていた。

真空パックで防腐処置を施されたそれは3ヶ月経った今もそのままの形を保ち続けていた。

「ロイド、あたしはどうしたらいいの・・・。」

今にでも飛び出していってロイドの下へ行きたい衝動に駆られる。

でもわたしは、ドラゴンでそしてその族長の娘・・・勝手なことはできない・・・でもあたしは・・・

ぎゅっと胸に四角いロイドの思い出を抱きしめると、これから起こる惨劇で生き残ってと、ただ祈り、そしてその祈りの虚しさに涙するのだった。







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