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笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第2部:才能の値段 第1章 輪を広げる 高等学校二年生

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第97話 逃げない選択

競技会(ケルターレ)……?」


 私の呟きにアミーカが反応する。


「うん、セレナは学校ごとの比べ合いにしたでしょ? でも私達と同じ年齢でもう働いてる子達もいるじゃない? だから年齢別で学校外も参加できる形にしたらたくさん集まるかな、って」


 その考えを聞いた時、私の頭がトンカチで殴られたようなショックを受けた。

 私は自分たちの学校という領域でしか考えなかったのに、アミーカはもっと広く年代で考えてた。


「ただ、このスタイルだと地域を超えてっていうのが難しくて、セレナ達みたいに参加を絞った開催の方がいいのかなって悩んでたの」


 なるほど。

 そう考えるとどちらも一長一短なのか。

 しかしアミーカは私が適当に言い出したアイデアをすごくしっかり考えてくれてたんだな。

 勝手に魔導具だけにするとか言ってしまった後悔が今さら押し寄せてきた。


「アミーカごめんね。勝手に魔導具だけにするとか言っちゃって」

「ううん、最初にこれ考えてくれたのセレナだもん。好きにやっていいんだよ。私はせっかくくれたチャンスを活かしたかっただけだから」


 あれ、そうだっけ?

 ……あ、あー、確かにそうだったかも。

 そういえばアイデア思いついた私を、アミーカは凄くうらやましそうにしていた。


「プッ!」

「な、何? 突然吹きだして」

「いやね、年代別ってアイデア出したアミーカ凄いなって落ち込んでたんだけど、そう言えば春先はアミーカが落ち込んでたから、私達高等学校行っても変わらないなぁと思ってさ」


 一瞬きょとんとした顔をしていたアミーカだけど、すぐに分かったようで、そこからは二人して大笑いしていた。


「頑張る少女たちの姿は美しいね。さすが見込んだ二人だけはあるよ。……それで、どうしたい?」


 カイル様が少し嬉しそうにそう聞いてきた。

 そういえばこの人、楽しいことと有能な人が好きだっけ?

 きっとこの企画が『楽しいこと』に引っかかったんだろうな。


「みんな、どうする? ここでなら延々悩んだ勝負事の方に持っていっても実現出来そうだけど?」


 そう、カイル様が口を出してきたということは、形にしたものを見たい。

 そのための助力ならするという隠れたメッセージということだ。


「そうだね、それなら勝負事にしよう」


 マリーナがそうハッキリと伝えてきた。


「品評会にしても、結局は『どっちが上か』って噂になるよ。それで外の学校が褒められたら、傷つくのはそこで頑張ってる子たちだと思う」

「俺は元から競技会が良いと言ってたからな」


 マリーナとカリウスの主張はどちらもハッキリとしていた。


「マルクスとリディアはどう?」


 二人を見ると、少し言いづらそうにしながら、


「うん、僕は『工房で扱うなら』って考えてみたんだけど、明らかにこちらが優れてるって判定が出ていれば、価格が付けやすいなと思う」

「そうね、お客様に根拠を示しやすいのは助かるわ」


 なるほど、二人ならではの視点だ。

 と、言うかさ……。


「えっ、何? そしたらみんな元々競技会の方が良かったってこと?」

「それはそうよ。セレナだって元々そうだったじゃない。仕方なしに実現可能な方向性を探ったら今の形に落ち着いてるってことなんだから」


 即座にマリーナに言われてしまうが、確かにそうだ。

 私も競技会で腕を競い、それが就職先にまで繋がればという想いで提案してたはずだ。


 グレッダさんに噛みつき、オーギュスト様に無謀にも勝とうとして、カイル様に『照明革命』を差し出してまで保護を交渉した、あの時の私を思い出す。


『貴族が横槍を入れてくるかも?』

 その一言に、私は面倒さを思い出して逃げていた。


 ここには『使える』ものが揃いすぎてる。

 なら、これを全て使って、私のやりたいことを実現する。

 もう――迷わない。

 私は、ここで逃げない。


「カイル様、この競技会を成功すれば、王様の方針に沿った、とても大きなイベントを作った、そして国民の技術向上に貢献したという大きな名誉が手に入る。間違いないですか?」

「そうだね、詳細は詰める必要はあるが、概ねその解釈で間違いない」


 私はオーギュスト様へ語りかける。


「オーギュスト様、一つ聞いておきたいです。アミーカが去年準優勝したコンクール、あれは忖度があっての準優勝ですか?」

「そうだ。高等学校の優勝者は貴族しかあり得ない。アミーカ嬢を二位にするにもかなり揉めたと後で聞いたよ」


 やっぱりこれは予想通りだったか。

 そして最後にグレッダさん。


「グレッダさん、会場ってまだ取ってないですよね?」

「あぁ、まだ詳細が決まってないからな」


 私はソファから立ち上がり、おでこを指でトントン叩きながらその近くをぐるぐると回るように歩く。


「何してんの、セレナ?」

「シッ! あの時のセレナは何か考え込んでるの。たぶんとんでもないこと言い出すから心構えしておいた方がいいよ」


 アミーカめ、失礼なっ!

 でも確かに私は今までの規模をひっくり返すようなことを頭の中で組み上げていた。


 アミーカの考えた年代別、地方も参加出来る仕組み、貴族邪魔…………よしっ!



 私はグレッダさんに大きな紙とペンを用意してもらい、テーブルの上に紙を広げて次々と書き込みを始めた。



 それを覗き込むみんなの顔が、一度呆れた顔になり、次第に真剣味を帯びてきてたというのは後から聞いたママの弁だが、確かにそのくらい呆れ果てた規模のことを私は提案したんだ。


 やはり誰もが胸に押し殺していた「競う」というポイント。ようやく忌憚ない意見が出せたなとホッとしてます。


次回、第98話「黎明祭プリマルクス


 セレナの描き出したイベントの規模の広がり、そして貴族の横槍問題をどう解決するのか?



 ラテン語ベースで名前をつけると、変に長ったらしい名前になることが多く、いつも短めに抑えるのに苦労してます。

 今回のプリマルクスも、直訳としては少しズレがあるので、これが一度でピタッと決まるととても気持ちが良かったりします。

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