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笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第2部:才能の値段 第1章 輪を広げる 高等学校二年生

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第96話 評価の席へ 後編

 やがて私が焼き付けを終えると、みんなも順次焼き付けを終える。

 私は手早くオルゴールに回路を組み入れてカイル様へ一つ渡す。


「さ、横のスイッチを押して箱を開いてみて下さい」


 私に言われるがままにスイッチを入れ、箱を開くカイル様。

 すると、箱の上蓋の内側が薄い赤色に光り、とてもゆったりとした音楽が室内を満たし始めた。


「この曲はカノンって言って、『永遠に続く』という意味が込められてるそうです。あいにく誰が作ったかとかは、もう分からないみたいですけど」


(で、いいんだよね、澪?)


(うん。バッハとか言っても知らないだろうしね)


 そう、この曲はオルゴール職人さんのところに出かけて私が澪を叩き起こして作ってもらった特別製。

 だいたいの音を書き出して、演奏させながら都度修正をかけていく。

 終わる頃には私も職人さんもグッタリだった。


「アドルフォス家の長きを願うのに相応しい曲と思い、用意しました。ほら、みんなからも」


 一人一人渡す際に、私から名前を紹介していく。

 カイル様はそれを大切そうに受け取りながら、握手をして謝意を述べていく。


 渡し終わるとカイル様は一つ一つを開き、光と音を確かめ、全てを確認し終えると、両手を広げた。


「セレナ嬢、やられたよ。確かに発想という意味では驚くには値しない。ただ、学生という立場で同時制御(ミレモデーラ)まで使いこなすとは恐れ入った」


 クイッ、クイッ。

 その時私の袖が引っ張られる。

 見るとママがちょっと不機嫌そうな顔で控えていた。


「ちょっと、この間あれ何で見せてくれなかったのよ」

「え、だってベーネ工房ではスカウトもらえたしいいやって思って」

「あれ見せてくれてたら即決してたわよ、師匠は!」


 そんなことを言われても、みんながそこに行きたいかどうかなんて確定してないし。

 私の目的は、せっかくみんなを巻き込んだなら、せめて将来の選択肢を広げることだ。


「オホン、そろそろいいかな?」


 見ると、私とママの言い合いにみんなが注目していた。

 カイル様も申し訳なさそうな顔をしている。

 うわ、恥ずかしい……。


「まあ確かにうちで雇うとまでは約束は出来ない。だが、もし仮にうちに職を求めに来たなら、第一候補として考慮するよう取り計らっても構わない。見事だったよ」


 その言葉に誰もが顔をほころばせる。


「それではあらためて席につこうか。グレッダ殿、お茶をお願いしてもいいかな?」

「はっ、もう間もなく来るかと」


 言い終わると同時に、セレスさんともう一人のメイドさんが、ワゴンを引いて入ってくる。

 そして手早くお茶を入れて去って行った。

 カイル様は紅茶を口にしてカップを置く。


「さて、ところでセレナ嬢。今困ってることはないかい?」

「人に期待しすぎるどこぞの侯爵家次期当主に困ってます」

「それは諦めてくれたまえ」


 諦めなきゃダメなのっ!?


「たとえば何かのイベントで困ってたりはしないのかな?」

「ねえカイル様、素直に参加しない二校をどうにかしようか? って言えないの?」


 そう言うとカイル様はニヤッと笑い


「それは言えないさ。そう言ってしまうと私からの好意になってしまうだろう? あくまで君が願う形にしないと借りに出来ないじゃないか」

「貴族のそういうところ、面倒で嫌いですよ。もっと素直に言えばいいのに」

「アッハッハ、君は本当に素直だね。だけど私もそこは同感さ。今は体制に合わせるしかないから仕方なくこうしてるだけでね」


 そのタイミングで入口のドアが開く。

 するとそこには、


「アミーカ!」

「セレナ!」


 久しぶりの再会に、私はアミーカへ駆け寄り抱きしめる。


「何よ、遅かったじゃない」

「ごめん、でもちょっと待ってたから」

「何をよ?」


 するとアミーカのすぐ後ろから、見たことのある白髪の老人が入ってきた。


「オーギュスト様ぁ!?」

「おぉ、セレナ嬢。久しぶりだね。少し背が伸びたかな?」


 キッと後ろを睨むとカイル様がとても楽しそうに笑ってる。

 この人……絶対わざとやってたな!


「オーギュスト様、どうぞこちらへ。アミーカ嬢も久しぶりだね。三ヶ月ぶりくらいかな?」

「はい、先輩たちの卒業式ですね。わざわざお声がけくださいまして、その節はありがとうございました」


 そう言って左足を軽く引き、スカートの裾を軽く持ち上げ、右足の膝を曲げて姿勢を低くする。


「うん、貴族の挨拶もだいぶ板についてきたようだね。素晴らしいよ」


 カイル様は今度はこちらに向き直り、


「さて、それでは関係者も揃ったことだし、セレナ嬢たちの言う品評会(ミラビリア)、アミーカ嬢の競技会(ケルターレ)の話をしようじゃないか」



 そう言ってニコリと笑いソファへと腰掛けた。



 私とアミーカは顔を見合わせるだけで、それ以上お互い何も言えなかった。





―――――――――――――――――

 仲間への評価を勝ち取ったところへ現れたアミーカとオーギュスト様。そして語られた競技会ケルターレとは?


次回、第97話「逃げない選択」


 あらためて全ての要因を確認していくセレナが最後に下す決断とは?



 競技会の「ケルターレ」はラテン語そのままですが、「蹴る」を思い出してしまい、どうしても変な感じを受けてしまいます(笑)

 外国の言葉でなくとも、方言とかで「うん?」と感じた言葉ってありますか?

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