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笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第2部:才能の値段 第1章 輪を広げる 高等学校二年生

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第93話 冒険者の現場 前編

「ここが冒険者ギルドだ。さっき説明した通り、王都周辺によく出る魔物討伐や、魔導具や薬などの素材採集なんかが主な役割だな」


 今日はグレッダさんの案内で冒険者ギルドへ来ている。

 素材なんか自分で集めろという変わり種な考えを持つカリウスが、珍しく現場を見てみたいと熱望したためだ。


「タブラ、ウルヴィス高等学校から招いた俺の客人だ。よろしくな」


「かしこまりました、グレッダ様」


 グレッダさんが受付の男性にそう言うと、恭しくお辞儀をしたタブラさんは、カウンターから出て来て、店内に向けて大声で、


「てめぇら、グレッダ様の客人の学生さんたちだ。失礼な態度取ったら……分かってるな?」


 と、その場にいる冒険者たちに呼びかけた。

 うわっ! すごい大声。

 思わず耳をふさぐ。


 見ると、私たちを値踏みするような視線の人や、今の言葉にただただコクコク頷く人など様々だ。

 落ち着いてる人ほどベテランなんだろうな。


「ルーカス! いるかっ?」


 グレッダさんの声に奥から一人の男性が静かに歩いてきた。

 男性と言ってもたぶん歳はうちらと、そう変わらないだろう。

 銀色の短髪で、背はカリウスと同じくらいで、同年代では高めの方だと思う。


「なんですか、グレッダさん?」


「俺のところの客人でウルヴィス高等学校の学生さんたちだ」


「こいつが俺の後輩で、よく鍛えてやってるルーカスだ。よろしくな、セレナちゃん(・・・・・・)


 ん? なんで私だけ名前呼んだの?

 見るとルーカスくん? は少し懐かしそうな目で私を見るが、私の方には全く記憶にない。

 たぶん空似ってやつだろう。


「歳も同じだし、中を案内するなら若者同士がいいだろ? 俺はここで待ってるからルーカス頼むな」


「グレッダさん、お酒飲みたいとしか聞こえないんだけど?」


「ガッハッハ、セレナちゃんには敵わないな。否定はしないが、仕事だってちゃんとあるんだぞ?」


 するとタブラさんがファイルをいくつか持ってきてグレッダさんの前に置く。


「冒険者がどういう依頼を受けてるか、危険性の増したエリアはないか。仮にも国防を名乗ってるからな。頻繁に見ておく必要があるんだ。もちろん酒は飲むがな?」


 ニヤッと笑うグレッダさんに私たちも笑顔になる。


「それでは案内しよう。まずは鍛錬場へ。こちらだ」


 私たちにそう告げると、ルーカスくんはさっさと歩いていってしまう。


「ねえ、美形だけど、あの素っ気なさ。誰かを思い起こさない?」


「あー、いるよね。四六時中研究のことしか考えてない変人」


 リディアの質問に私が答えていると、横からぬっと顔を出したカリウス。


「それは俺のことか?」


「よく分かったじゃん。成長したね、えらい、えらい」


 カリウスの頭を撫でてあげると、「よせ」と手で振り払ってくる。

 せっかく褒めてあげたのにさ。


 見ると先の方でルーカスくんが立ち止まって待ってくれていた。


「あ、ほら、待たせてるから行こう!」


 私たちはルーカスくんのところへ急ぐ。


「ごめんなさい、待たせちゃって」


「いや、構わない。君たちは仲がいいんだな」


「まあ悪くはないかな。一緒に温泉行ったりもしたし」


 その言葉にひどく驚いた表情を浮かべるルーカスくん。


「バカっ、それだと混浴みたいに聞こえるでしょ! ……アハハ、ちゃんと男女別ですからね」


 顔を赤くしてマリーナが言い訳すると、ルーカスくんは少しホッとした表情を浮かべた。


「てっきり一緒かと思って驚いた。ウルヴィスではそんなにオープンなのかと」


「混浴もあるけどね。でも若い人は使わないみたい。やっぱり裸見られたくないもんね。あまり気にしなくなったおじいちゃん、おばあちゃんばっかりだよ」


「そうか。……この先が鍛錬場だ」


 そう言ってドアを開ける。

 そこには天井のない開けた空間に、剣などの打ち込み用の立木や、私たちも学校の魔法訓練の時に使ってた的などが、ところ狭しと並んでいた。

 今は三人くらいの冒険者が木剣で打ち合いをしている。


「新米の冒険者は、よくここでベテランから戦い方を教えてもらう。かく言う俺もグレッダさんからここでよく教えてもらってる身だ」


「それは面白いな。ルーカス、ぜひ一度手合わせしてくれないか?」


 ノリノリなカリウス。

 そうだった、最近一緒の時は大人しい場面しか見てなかったけど、そもそも肉体鍛えるの大好きなヤツだったよ。


「ああ、構わない。それじゃあ防具を……」


「いらん。俺とてそれなりには鍛えてある」


「そうか。それなら」


 そう言って手近な棚から木剣を取り出し、一本をカリウスへ投げ渡す。

 見事にそれを片手でキャッチして、ブン、ブンと振り、感触を確かめている。


「ねぇ、大丈夫? カリウスの強さなんて知らないんだけど」


「あぁ、一応あれで騎士科の中では中堅くらいの腕はあるみたいだよ」


 マルクスの言葉にリディアが驚きの声をあげる。


「えぇっ、何それ! あいつ何者なのよ」


「父親が騎士で、母親が魔導具師でね。あいつは両親の仕事、どちらを継いでもいいように準備してるんだ。普通はどちらかでしょ? 両親ともに好きだからって。クソ真面目なんだ、あいつは」


 そう言ってカリウスを見つめるマルクスの目はとても優しい。

 二人がなんで友だちなのかよく分からなかったけど、ようやく少し分かった気がした。


「では、いつでもどうぞ」


 ルーカスくんの開始の言葉に、カリウスは鋭い踏み込みからルーカスくんの胴を狙って突きを繰り出す。

 ルーカスくんは木剣を縦にして右へ滑らせ、かわしざまくるっと身体をまわして左足でカリウスへ蹴りを入れる。


 右腕いっぱいを伸ばしていたカリウスは避けきれずに転がり、すぐに木剣を杖代わりに立とうとしたところへ、とても冷えた目をしたルーカスくんに、喉元に木剣を突きつけられ、


「参った」


 と両手を上げた。


 ふ、ふわー、すごっ!

 カリウスの突きだってすごく速かったのに、ルーカスくんはそれ以上に凄かった。

 さすがグレッダさん仕込みってだけはあるな。


「す、すいません、あまりに突きが速くて手加減出来ませんでした。素晴らしい剣才の持ち主だと思います」


 そう言ってルーカスくんはカリウスに手を伸ばす。


「あっさり勝ったやつに言われてもな……」


 手を取り、立ち上がりながらカリウスがそう言うが、


「いえ、剣だけなら分からなかったですよ。ただ私がここで学んでるのは、魔物相手に死なないための戦い方なんです」


「剣も体術も魔法だって使うし、いざとなったら石ころだって投げます。だからつい足がでてしまいました、すいません」


「構わん。そういう戦い方もあるのだと知れて、俺はこれでまた強くなれる。感謝する」


 話は聞いた。

 それでも、カリウスの進もうとしている場所だけは、まだよく分からない。

 今のセリフだけ聞いたらあんた立派な冒険者だからね!


「それでは次に皆さんに関係ありそうな、ギルド内の工房をご案内しましょう」



 おおっ、魔導具師もギルド内に工房あるんだ!

 何作ってんだろう?

 私は子どものように胸がワクワクするのを止められなかった。


 まさかのカリウスvsルーカス。

 さすがに新米とは言え本職、ルーカスに軍配が上がりましたが、本気出させたカリウスも凄かったですね。


次回、第94話「冒険者の現場 後編」


 次は魔導具工房の案内。冒険者向けの魔導具の紹介と、とんでもない展開がセレナたちを待ち受けます。



 よくよく考えると模擬試合、しかも一瞬だけとは言え、本作初めてのバトルシーンだったのかな?(リオとビッグボアの魔物同士はありましたけど)

 たぶんしばらくはまたバトルシーン出てきませんが、見たい人っています?需要あればそういうエピソードも考えてみます。

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