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笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第2部:才能の値段 第1章 輪を広げる 高等学校二年生

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第91話 仲間に話す理由

「さて……と。とりあえずセレスさんがお茶持ってくるから、それ待ってから話そっか。途中で中断されるのもなんだし」


 客間のソファについた私たちは、とりあえずいったん落ち着いた。

 この部屋には私たちしかいない。

 グレッダさんは自分がいては思うように話せないだろうと席を外してくれた。

 本当に気遣いのかたまりのような人だ。


 程なくしてセレスさんがお茶に簡単なお菓子を添えて持ってきてくれた。

 去り際に


「しっかり怒られてねー」


 と耳打ちして去っていく。

 後で覚えときなさい!


 私はお茶を一口飲み、喉を潤した。


「で、セレナ。こんな部屋まで借りて何話そうっていうの? まさか品評会(ミラビリア)のことでもあるまいし」


 と、リディアが口火を切った。

 ……軽い現実逃避もここまでか。

 私は覚悟を決め、椅子から立ち上がった。


「そうだね、話すのは私のこと。まず勘違いしてほしくないのは、今まで話さなかったのはみんなを信頼してなかったからじゃなくて、みんなを巻き込むんじゃないかって怖かったから。それだけは覚えておいて」


 そして私は二年前の王都であったことを話し始めた。

 グレッダさんとの出会いはすでに話した通り。

 肝心なのはそこからだ。


 親友のアミーカと料理勝負に挑む際に『低温蒸し』の発想、それを実現するための『蒸気のゆりかご(クナ・ヴァポリス)』を作ったこと。

 そして王城料理長、オーギュスト・ブルーム公爵とグレッダさんが、私とアミーカの名前を前面に出さず、自分たちの名で交渉し、矢面に立つ形で動いてくれた。


 ベーネ工房で街灯を見て思い付いた新しい街灯、そしてそこから発展させた『照明革命』。

 これに将来性を見出した侯爵家次期当主のカイル様が中心となり、私とアミーカに関わる責任を自分の名で引き受けると明言した。


 私は胸のネックレスを取り出し、そこに彫刻された本から生まれる狼の紋章を懐かしく眺めた。



「まあ、これでほぼ全部かな。で、その時にカイル様に楽しいこと考えたらまた連絡くれって言われたんだけど……」


 そこで私はわざとにこやかに笑いながら


「最低限の挨拶しか贈らなかったら、たまには顔くらい見せろって言われてしかたなく来たってのが今回の目的なの」


 と言って、小さく舌を出す。


 先程以上に呆れ返った顔の中、マリーナだけは、額に指を当てて首を横に振っていた。

 あらためて聞くとショックだったらしい。


「だからー、みんなにもカイル様のとこ行く時に一緒に付いてきて欲しいんだよね。セレナのお・ね・が・い」


「「はあっ!?」」


 わわっ!

 慣れないことはするもんじゃない。

 いや、どんな言い方してもびっくりするか。

 伯爵で緊張してるのに、さらに侯爵家次期当主と会えとか言われたら。


「セレナ、何故これを話した? うちらに言わず一人で王都に来れば、リスクも負わず、うちらも巻き込まれず、全て問題ないように思えるんだが」


「だって、一人で来るのが怖かったんだもん」


 と言うと、カリウスが珍しくコケた。


「まあそれは半分冗談だけど、なんか嫌になったんだよね。みんなに隠して付き合っていくのが。レオニス先生はパパ経由で知ってるし、マリーナには前に魔法練習の時に倒れた後に話してある」


「だからってリディアやマルクス、カリウスを軽く見てるわけじゃない。みんな大切な私の仲間。なら、ちゃんと私のことを伝えて、その上で付き合ってもらいたい。そう思ったの」


 そこで私は少しそっぽを向いて頬をかく。


「ま、まあ言う機会がないところにこの話がきたから、ついでに巻き込んでその時言おうってしたのは悪かったけどさ」


「セレナっ!」


 リディアが立ちあがって私へ近づき、両肩を掴んでガクガクと揺さぶってくる。


「あんたお詫びに王都滞在中にここで最高のスイーツ奢りなさいよ?」


「は、はいぃ〜」


 揺れる〜、気持ち悪いよぉ〜。


 私の返事を確認すると、リディアは手を話して腕組みをする。


「ふんっ、あんたの無茶振りなんか今に始まった話じゃないわ! しょうがないからまた巻き込まれてやるわよ」


「リディア、言葉遣い戻ってるよ」


「もういいの、あんな作った私は。あんたの話聞いてたら思い出したわよ、これが私なんだって。あんたが隠し事やめるなら、私だって作り物の私をやめるわ!」


 そう言うとプイッと横を向く。


「でも女性らしい口調は出来たほうが……」


「あんた、どの口が言ってんのよ。スパッツも知らなかったクセに!」


 私のほっぺを横に引っ張るリディア。


「それに私の家はお店よ。場面に合わせて口調変えるくらいなら前から出来るわ」


 そう言って手を離し、軽くしなを作ると、


「お嬢様、いかがなさいましたか。私が何かお手伝い出来ることはございますでしょうか?」


 と、心配そうな表情を向けてくる。

 その姿に一瞬ドキッとさせられたのは絶対に秘密だ。

 その姿にドキッとしたのがもう一名いたようだけど、この時の私には知る由もなかった。


「こんなもんよ。いつでもこれでいる必要はないわ」


 私は思わず、さっきまで引っ張られていた頬をそっとさすった。


「ま、まあ貴族と話せるなんて滅多にない機会だし、セレナさんがいるなら大丈夫だよね。せっかくだから楽しむとするよ」


 そう言いながらマルクスの膝は笑っている。

 真面目な彼が今回一番の被害者だろう。

 ……さすがになんかお詫び考えとこう。


「それじゃあ明日からの予定考えないとね。せっかくだから遊ぶ以外にも勉強出来ることもしないともったいないし」


 マリーナのその一言が出た瞬間、突然客間の扉が開く!


「そう言うことなら!」


「私たちにお任せを!」


 そこに現れたのは、


「ママっ!!」


 ママとセレスさん。

 セレスさんは後でしばくとして、なんでママが?


「セレナ〜、パパもいるぞー」


 二人の影からパパまで顔をのぞかせていた。

 なんで、なんでっ!?


 そこにグレッダさんが悠然と入ってきた。


「セレナちゃんも大きくなったとは言え、まだ子どもだ。だから保護者として俺が呼んでおいたのさ」


「そうだぞ、セレナ。俺達も貴族のしきたりには疎いが、大人としてある程度世間は渡ってきてる。多少は防波堤にはなってやれるんだから、こういう時は素直に頼るんだぞ?」


 そう言ってパパは私の頭を撫でてくる。

 久しぶりの感触だ……。


「みんながセレナの友だちか。いつもこんな娘に付き合ってくれてありがとう」


 そう言ってパパは頭を下げる。


「グレッダはこう見えて一応貴族だからな。王都でやりたいことがあるなら、俺達が案内しよう。計画立てるのも手伝うぞ?」


「魔導具師なら工房も一つ二つ案内出来るわよ。王都でどんな魔導具作ってるか気になる子もいるでしょ?」


 そこからはみんなで王都で学ぶ・遊ぶ計画を立てる時間となった。地図を広げ、工房や店の名前が次々に挙がっていく。



 さて、私は今のうちに……。

 私はグレッダさんにこそこそと依頼をしておいた。

 せめて巻き込んだみんなに、少しでもプラスになるように。


パパとママの登場は都合良すぎかなと思いつつ、考えてみたら未成年(この世界では16歳)なのに出てこないほうが不自然かなと思って登場させました。


次回、第92話「外から見た私たち」


魔導具師らしくベーネ工房の例のビックリ焼き付けを見学に行く一行。けれど想定外の事態が起きてしまい……



これでセレナの過去をみんなが共有したことになります。ちなみに貴方がマリーナ除く三人と同じことされたら、どんな反応ですかね?

良かったら教えて下さいね。

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