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笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第2部:才能の値段 第1章 輪を広げる 高等学校二年生

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第88話 動き出す舞台

 校長の予想外の頑張りのおかげで、品評会(ミラビリア)への参加校は全六校中、ウルヴィスを含めて四校の参加となった。


 王都を中心に高等学校の所在は六つの大都市に分かれている。

 剣と魔法の名門・セプテントリオ。

 商業都市として名高いリプス。

 独自の人脈を築くカウルス。

 雪害対策から魔導具に力を入れ始めたカエキアス。

 そして、私たちのウルヴィスだ。


 今回参加を表明してくれたのは王都とセプテントリオ、ウルヴィスを除いた三都市の高等学校。リプスは商売に強い学校、カウルスはプライベートな付き合いのある校長がいるということでそれぞれある程度の勝算は持っていたらしい。

 しかしカエキアスだけは予想外だったそうだ。


「私もあまり付き合いがあるところではなかったので知らなかったんだが、よくよく聞いてみると、少し前から冬の雪害対策で魔導具に力を入れようという周囲の街の動きがあるらしく、カエキアスもそちらを強化したいそうだ」


 クルッとマリーナを振り返ると、「テヘヘ」と笑っている。

 マリーナの故郷、ボレリアスの街から何かを働きかけたのかもしれない。

 それが今回の話をきっかけなのか、元々言っていた雪害対策への話なのかは分からないけど、これは私たちにとっても追い風になった。


「そういうことで非常にプライドの高い二校が残ったわけだが、まあそこにカエキアスが加わらなかっただけ、君たちにとってはだいぶ条件が軽くなったはずだ。品評会(ミラビリア)の企画書は各校に渡してあるので、後は君たちがテーマを決めれば各校動き出せる状態だ」


「テーマ……か」


 マルクスのつぶやきに私たちもふと考え込む。

 品評会(ミラビリア)で私が見たいのは、完成品だけじゃない。どう考えて、どう作ろうとしたか、その違いだ。

 それなら、広く魔導具師としての腕を見られるテーマとして……。


「テーマを二つ設けよう。一つは『人の生活を便利にする魔導具』、二つ目は『なくても困らないけど、あると嬉しい魔導具』。テーマ二つに対して各校それぞれでチームを出してもいいし、ひとつのチームが両方作っても構わない。ただしそれぞれのテーマで材料費は上限を設ける。……これなら各校の工夫が見えるからいいと思うんだけどどうかな?」


「うん、いいんじゃないかな。条件を縛り過ぎてないところがいいと思う」


 早速マリーナの賛成が得られてホッとしていると、レオニス先生(あくまのてさき)がいつも通りツッコんできた。


「それでは足りないな。きちんと開発と製作にかかった期間、魔導具の開発・製作過程を示した文書の提出も合わせてさせないと、お前の目的は達せないのではないか? この国の魔導具師のレベルを上げる(・・・・・・・)というな」


 ん?

 あれ、私そんなこと言ったっけ?


「あの……先生、私は単純に他の学校がどういう魔導具を作るかを見たいだけで、そんな高尚な目的は持ってないんですけど」


「はっ!? お前まさかこんな大事にしたのは本当に私欲のためだというのか?」


「え、ダメでした?」


「くうぅぅっ!」という変な声を漏らしながら、レオニス先生は眼鏡を外して眉間を揉み、腰を折り曲げる。


「馬鹿者! それで品評会(ミラビリア)の開催意図をどう説明するつもりだった!」


「私も見たいからみんなも見たいでしょ? って。……ねぇ、分かるよね、これ」


 振り返って同意を求める私の目からみんなは視線を外す。なぜっ!?


「……あぁ、分かった。お前は心底魔導具師なんだな。言っておくが誰もがみんなお前と同じように深い興味を示し、当たり前に新しい魔導具を作りたい、見たいわけではないことは知っておけ」


「そ、そうなの?」


 再度同意を求める私の言葉に、みんなからも


「まぁ、セレナほど積極的にどうこうはないかなー」


「私は作りたいものさえ作れれば、それ以外は今のところ……」


「俺はそもそも研究がしたいので、色々見れる分には構わんぞ」


「僕は将来工房を任されるから、見れる分にはいいかもな」


 リディア、マリーナ、ちょっとくらい、分かってくれてもよくない?

 マルクスとカリウスの方がまだ味方的な立場じゃんか。

 ……マリーナ覚えときなさいよ、寮戻ったらくすぐりの刑だからね。


「分かった、分かった。まぁ俺も建前と本音はまるっきり違うことはあるからな。別に開催理由がそれでも構わんが、きちんと対外的な理由はそれらしいものを作っておけ。もしそのまま当日伝えでもしたら、試作中の空飛ぶ魔導具にお前を括り付けて王城に突っ込ませるからな」


 なんて怖いことを言う教師だ。

 それならこっちにだって……。


「分かりました。そんな素振りを少しでも見せたら、奥さんとお子さんにパパの学校での真実の姿を伝えて怒ってもらうようにします」


「はんっ、俺の住まいも知らん奴がそんなことを言っても脅しにもならんぞ」


「教員名簿って知ってます?」


 その一言にレオニス先生の顔が凍りつく。

 まぁもちろん見たことなんかない。

 ただのハッタリだ。


「まあそれはいいとして……」


 逃げたな?

 私から視線をわざとそらしてるのがそのいい証拠だ。


「お前らそろそろ夏休みだろう? グレッダのところに行く準備はしてあるのか?」


「準備も何も……荷物まとめるくらいだし」


「手土産くらいは用意してるのかと聞いてるんだ。まさか手ぶらで行くつもりじゃあるまいな?」


 なめないでいただきたい。

 初等学校卒業してからは、お世話になった、というか今もなってるオーギュスト様、カイル様、グレッダさんにはきちんと折りに触れ贈り物や手紙で近況報告を書くようにしてるんだから。


 きちんと私の出来る範囲で、背伸びし過ぎない範囲の手土産を用意してある。

 ……今月きつかったから、マリーナと半したけど。


「その顔なら大丈夫そうだな。じゃああとはしっかり中間考査で成績を残すことだ。万が一赤点など取ってみろ……」


 その先何も言わないということはそういうことだ。

 実習ならバッチリ!

 座学だってここのところ忙しかったけど、一応毎日少しずつは勉強してたからね。

 私にぬかりはないよっ!



 ……と、思う時ほど足元すくわれるんだよね。

 まさかあんな事態になるとは、我ながら思いもよらなかったよ。


各校の名前と特徴が初めて出てきました。そしてテーマも決まり、だんだんと形になってきましたね。


次回、第89話「一度きりの選択」


足元をすくわれるとは、セレナの身にいったい何が起きたのか? そして一度きりの選択とは? もしかしたらそこのあなたも経験のあることです。



今回の『ミラビリア』のテーマはセレナが決めましたが、あなただったらこのテーマにしたなというものはありますか?

もしあったら教えてくださいね♪

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