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笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第2部:才能の値段 第1章 輪を広げる 高等学校二年生

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第82話 手探りの途中

「ダメだ、やり直し!」


 くっそー、これで何度目だ。

 レオニス先生めぇ……。


 ん? 何してるのって?

 全国魔導具品評会、『ミラビリア』の企画書をみんなで考えて、レオニス先生に判定してもらってるんだけど、ずーっとダメ出し食らってるのよ。

 何が頭くるって、どこが悪いのか教えてくれないの。


「そんなことも教えてもらわなければ分からないならやるな」


 と、まあそんな訳で私たちはずっと悩み続けてるわけだ。


「何なのよ、あのサディスト! 修正点の一つも教えろってのよね!」


「セレナ、お前、ここが俺の研究室と知っての発言か?」


 もちろん聞こえるように言ってるのだ。


 ハァ……と、大きな溜息をそれこそ聞こえるように吐きながら、レオニス先生はこちらへ椅子の向きを変えて話しはじめた。


「あー、ではヒントだけな。内部のターゲットは決まってるわけだな? では会に参加するメリットは? 会を開くにあたり、出張ってきそうな権力者は誰で、そこへの対策は?」


 あ……。

 そう言われると私たちの案は、みんなが好意的に参加をすることを前提として、その先の具体的な進め方や規定についてばかりを考えていた。

 参加してもらえないかも? とは考えもしていなかった。


「参加してもらうために他校の末端まで考える必要はない。最低限ここを動かせれば勝ち。その相手の見極めと対策からしっかり考えてみろ」


 そう言って椅子を戻して机に向かう。


「むー、最低限かぁ」


「ちょっと関係しそうな人を書き出してみようよ」


 マルクスがそう言って模造紙に図を書いてくれる。

 とりあえず会場は王都に用意する。

 これはこの前グレッダさんが手配に協力してくれると約束を取り付けてあるので心配はない。


 取りまとめは私たち。

 ここまでは問題ない。

 と、なると……。


「やっぱり各学校の校長は抑えなきゃだね」


「あとは魔導具科の科長だね」


 マルクスとマリーナの言葉に私たちは一斉にうなずく。


「高等学校がわざわざ出てくる、出たいと思う理由作りかぁ……一番分かりやすいのはお金なんだけど、それだと競技化しちゃうしな」


「なぁ、競技化するのは悪いことなのか?」


 私のつぶやきにカリウスが不思議そうに声を上げた。


「人を集めて作品を見せ合うのであれば、そこに優劣が出るのは自然なことだろう? そこを無理に消そうとするから変なことに頭を悩ますんじゃないのか?」


 でもなぁ、競うと貴族が出張って来て面倒なことに……そうか、みんなはそういう意識がないから不思議に感じるのかもしれない。


 私は運良く一足先に王都で貴族の面倒さも、頼れるところも見てきたが、たぶんこの中でその視点に気付けそうなのは、領主の娘のマリーナくらいだろう。


「マリーナはどう思う?」


「んー、たぶん競技会に戻すと、お金や権力で名誉を掴みに来る、面倒な層も動き出すと思うよ。王都なら貴族とかね」


 ほら、彼女は危険性を分かってた。

 だけどカリウスの言うことも分かるんだよなぁ。

 この会の性質をどこに置けばいいか。


「せんせー、王様に伝手ない?」


 バキッ!


 あ、先生のペンが折れた。

 すごい勢いで私の方に振り向き、文句を言ってくる。


「お前は何を言ってる! 俺がどうして国王に伝手があると思うんだ!?」


「いや、王都いた人ってなんか訳わかんない人脈あるから、もしかして? と思って。貴族なんて王様捕まえりゃ一発で黙るのになぁって思ってさ」


「王都でそんな発言してたら不敬罪で捕まっても文句は言えんからな?」


 新しくペンを取り出し、先生は書き物に戻った。

 もう少しヒントないかなーと首を伸ばして様子をうかがうが、一向にこっちを向く気配はないので、どうやら今日のところはあれで全部のようだ。


「さて、どうする? メリットを強化すれば面倒なやつが出張ってくる。そこを恐れてメリットを弱めればそもそも参加が危うい」


「ねえ、セレナ。ターゲット決めるのもいいんだけど、参加者の宿泊費や交通費なんかは誰が負担するの?」


「あ……。そ、それも考えなきゃなのか」


 迂闊だった。

 ダメだ、なんか全国版を考えれば考えるほど壁が次々と出て来て、まったく成功の絵が見えてこない……。


 なんで私こんな事してるんだろ?

 いつの間にか、魔導具のことだけ考えていれば許される場所じゃなくなっていた。


 昔みたいに何も考えずにママと一緒に魔導具の練習したり、パパの料理褒めすぎてじゃれつかれたり、アミーカやリオと走り回ったり……。


 私は上を向いて気分転換をするふりをした。

 そうでもしないと涙が出てきそうで。


 あー、ダメだ、ダメだ!

 私はもう高等学校生なんだから。

 いつまでも子どもみたいなことを言っちゃいけない。

 進むしかない。

 そう思わなければ、ここで崩れてしまいそうだった


 ――コンコンコン。


 するとその時研究室のドアをノックする音が聞こえた。

 レオニス先生が席から立ち上がり、ドアを開けると、そこには――

競技会と品評会、性質の差で起こりうる問題への回答もなく、現実逃避まで始めそうになるセレナでしたね。


次回、第83話『あり得なかった協力』


あり得なさ過ぎる来訪者。

話を聞くうちにセレナの怒りが大爆発します。



今回のセレナの立場、お仕事をされてる方なら一度は味わったことあるんじゃないでしょうか?

ちなみに今回まだ答えは出てませんが、あなたならどちらに舵を切ったらいいと思いますか?

良かったら教えてくださいね。

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