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笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第2部:才能の値段 第1章 輪を広げる 高等学校二年生

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第80話 重ねゆく友情 前編

「はぁ〜、極楽、極楽」


 私たちは学内競技会の成功を祝うついでに、マルクスとの約束通り、みんなで温泉にやってきた。


「なんかこういう休日もいいわね〜」


「日頃の忙しさが溶けてくわね」


 マリーナとリディアも満足しているようだ。

 もちろんマルクスとカリウスは男湯なのでここにはいない。

 例え混浴があったとて一緒に入るつもりはないけどね。


「それにしてもセレナ、王都旅行に私たちも付いて行って本当にいいの? しかも旅費・宿泊費諸々グレッダ伯爵持ちって」


「あぁ、いいのいいの。たまにはこっちに顔見せてくれって頼まれたからさ。それにグレッダさんも若者と関わるの好きなのよ」


 肝心な部分をぼかして私はリディアの質問に答えた。

 カイル様なんて侯爵家次期当主に呼びつけられてることを言ったら、一人で行くハメになる。

 唯一事情を知ってるマリーナにだけは、寮で泣きべそかきながら、必死に頼み込んで了承してもらったけど。


 なのでみんなを巻き込んだ分、私の事情はきちんと王都でみんなに話すと約束させられた。

 話したくはないけど背に腹は代えられない。

 きちんとそこは約束した。


「そういえばセレナさ、カリウスの呼び捨て認めてたけど、好きなの?」


「はっ? そんなわけないでしょ。初等学校の時はさんだのくんだの付けてなかったから、なんか鬱陶しくてさ。いい機会だから乗らせてもらっただけよ」


「マリーナは? そういうのないの?」


 なんだなんだ?

 リディアがえらく恋愛モードに振り切ってるぞ。


「私は……故郷にいるんだよね、約束交わした人が」


「嘘っ! もうしたの? キスとかしたの??」


「ちょっ、リディア! さすがにはしたないよ」


 私からはしたないなんて言葉を引き出すとか、さすがリディアだな。

 私だって気にならないかと言えばなるけど、あんまりそういうの詳しく聞いたら悪いじゃん?


「まあ、その辺はさすがに秘密にさせて」


 お湯に浸かったせいか、照れているのか、マリーナの頬はほんのり桜色に色づいていた。


「そういうリディアはどうなの?」


 私の質問にリディアは眉を上げて


「いたらもっとデートとか行ってるわよ! 悪いっ!?」


 と返してくる。


「それに……私はまず自分のお店を継がないといけないから、たぶん相手を探すならその後かも。うち、子ども私しかいないから」


 だからワガママな……いや、言うまい。

 それにアミーカも一人っ子だけどワガママではないし。


「お店と彼氏って関係なくない? リディアせっかく可愛いんだから、もう少しトゲトゲした話し方直せば、モテると思うんだけどな」


「そ、そう? 私モテると思う?」


 マリーナの言葉に頬が緩むリディア。


「そうだね。リディア、ティミナやクーラへの話し方は優しいじゃない? あれを男子にも出来るならもっとモテるような気がするよ」


 この前たまたま朝の登校時に見かけた時の三人はとても柔らかい雰囲気で、楽しそうだった。

 あれならコロッといく男子はいくらでも出てきそうだ。


「セ、セレナまで何よ。褒めたって何も出ないわよ」


 こういう単純なところが心配ではあるけど。


 二人はもう、将来や誰かとの約束を考えている。

 私はまだ、魔導具の先にしか目が向いていない。

 でもそれでいい。

 今は、それが一番大事だから。


 そこからは寮での話をリディアに話したり、逆にリディアから普段どういう生活をしてるのかなどを聞かせてもらったり、中休みを挟みながらたくさんのことを話した。


 気が付けば相当時間が経ってしまい、男子を待たせすぎたことに気付いた私たちは、急いでリラックススペースへと向かった。


 ◇◆◇


「はあ、久しぶりにお前と温泉に来たな」


「そうだね、カリウスは休みの日、鍛錬以外はずっと家にいるからね」


「俺のせいか?」


 いつもの無愛想な顔の眉間にシワが寄って、不機嫌にも見えてしまう。


「せいだよ。ふふっ、いいんだよ。カリウスはそれで」


「そうか。お前くらいだ、変な顔ひとつせず俺に付き合ってくれるのは」


 そう言うカリウスの顔は少しだけ寂しそうにも見える。

 女子から鑑賞物扱いされ、男子はやっかみ半分であまりカリウスには話しかけてこない。

 カリウスの心の痛みに気付くことなく……。


「今は増えたろ?」


「そうだな。お前のような変人が三人もいるとは思わなかった。しかも女子でな」


「ははっ、みんなの前で言うなよ。セレナさんとリディアさんに怒られるぞ」


 そう言うとカリウスが少し不思議そうな顔で、


「お前は呼び捨てにせんのか?」


 と聞いてきた。


「うーん、なんか女の子を呼び捨てって、彼女か奥さんみたいなイメージがあってさ。呼びづらいんだよね……」


「そうか、まあ無理することはない。お前は優しいからな。そのままでいいと思うぞ」


 カリウスはこういう不器用な優しさを持ってる。気にかけた後に少し照れてわずかに視線をそらすような、照れ屋なところも含めて、僕はカリウスのことが好きなんだ。


「ところでお前は俺や研究室に付き合ってばかりだが、いい人はいないのか? 何人かから声をかけられてたようだが」


「お前は本当によく見てるよな。……まあ悪い子ではないんだけど、顔や家を見ていることが多くてさ。なんか疲れちゃってね」


「しかしリディアには心惹かれてるだろう?」


 突然の指摘に僕の心臓は高く跳ねた。


「な、何を突然?」


「彼女はお前の工房よりも遥かに格下だ。それなのに負け犬にならず、いつか勝ってみせると努力を続けている」


「それに、おべっかだらけの他の女子と違い、いいことはいい、悪いことは悪いとハッキリ伝えてくる。お前はそういうところに惹かれてると感じたが、違ったか?」


 こいつは、いつの間に恋の教科書まで読み込んでいたんだろう?

 そんなに的確に分析されるとは思わなかった。


「今は二人だけだから素直に言うよ。確かに僕はリディアさんが好きだ。けどね、今伝えるとこの関係が壊れそうで怖い。それに僕はリディアさんほど付与が上手くない。勝つまでは……とは言わないが、せめてもう少し追いついてからにしたいんだ」


「そうか、お前が決めたことだ。反対はせん。だが……リディアが誰かに揺らいだり、取られたりした後で後悔するお前は見たくない。早いうちに伝えた方がいいと思うぞ」


 珍しく優しい目をしてそう伝えてくる。

 これは、本当に相手のことを思ってる時の、彼の表情だ。


「……うん、そうだねカリウス。ありがとう。――っていうか、お前はいないのか? そういう気になる人は」


「俺には女は不要だ。一生を魔導具研究に費やしたい。ああ、一緒に研究するという意味なら、セレナの発想や、マリーナの総合力は欲しいかもしれんな」


「お前……それ絶対言うなよ」


「ああ。俺にだってそのくらいの分別はあるさ」


 本当に分かってるのかな?

 カリウスはたまに突拍子もない行動に出るから、少し心配ではある。


「そろそろ上がるか。話しすぎたかもしれん。女子を待たせたら何を言われるか分からんぞ」


「ああ、そうだね。そろそろ上がろうか。……カリウス、さっきの話だけど」


「大丈夫だ。決して皆の前では話さん」


「頼むね」


 こうして僕たちはお湯から上がり、着替えてリラックススペースへと向かった。


 まさかそこから三十分も待たされるとは思わず、女子の長湯についてカリウスと共に討論したのも……まあ、いい思い出だった。

まさかのマリーナにお相手がいたとは! そしてマルクスの想いは果たして成就するのか?


次回、第81話『重ねゆく友情 後編』


魔導具品評会の話と、セレナの大きな欠点が発覚。マリーナにめっちゃ怒られます。



男女の友だちグループで、スーパー銭湯みたいな施設に行ったことある人います?

私が学生の頃はまだそういう施設少なかったので、なかったんですよね(T_T)


あ、でも部活の大会で男女混合の部活だったので、温泉行ったことはあります!(←負けず嫌い(笑)

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