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笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第2部:才能の値段 第1章 輪を広げる

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第79話 私は魔導具師だ

「いやー、セレナちゃんの演説は大したもんだったな」


 あれ、なんでこの人研究室いるんだろ?

 周りのみんなも緊張しちゃってるし。


「グレッダさん、帰らないの?」


「セ、セレナッ!」


 マリーナがとても慌てて手をワタワタと動かしてる。


「そう冷てぇこと言うなよ。レオニスだって久しぶりだから、少しな」


「ふんっ、お前はもう少し伯爵らしく振る舞え。騒ぎを起こしおって」


 あ、プライベートならこんな感じなのね。

 そう言いながらもいつもより高いお茶っ葉で紅茶を出すあたり、少しは気を遣ってるみたいだ。


「ねぇ、セレスさん、アミーカとは会ってる?」


「あ、この間お買い物してる時にたまたま会ったよ。お友達と楽しそうにしてたから大丈夫だと思うよ」


「そっか、それなら良かった」


 私の初等学校のお友達。

 一緒にグレッダさんにも立ち向かった、忘れようったって忘れられない親友。


(私も頑張ってるよ、アミーカ……)


「なんでセレナさんが伯爵様と知り合いなのかは聞いても大丈夫なのかな?」


 マルクスくんがおずおずと手を挙げながら、遠慮がちに声をかけてきた。


「あー、レオニス先生と一緒。うちのパパの友だちなの。それで王都に遊びに行った時に紹介されてさ」


 するとリディアが驚いたように


「セレナって貴族なの!?」


 と聞いてきた。

 私のどこを見たらそういう結論が出たのか。

 我ながら貴族からは一番遠いところにいる自覚はある。


「んなわけないでしょ! パパが王都の冒険者ギルドの薬師として働いてた時に、なんかウマがあって友だちになったんだって」


「最初は冒険者として会ったから、私の中ではロックボアの丸焼きとお酒が好きなおじちゃんってイメージなんだよね」


 そう言うとグレッダさんは


「セレナちゃんは貴族と知ってもあまり態度は変わらんかったがな」


 とツッコんできた。

 ……というか、うちの家族全員、貴族への態度じゃないような。

 なんなら親友のパパが一番気を遣ってる気もする。


「まあ伯爵だけど、冒険者だし、庶民だからって下に見たりする人じゃない。利用してやろうとか変なこと考えない限り、きちんと味方でいてくれるいい人だから、そんな怯えなくて大丈夫だよ」


「さっき俺を利用したくせに、よくそういう事が言えるな」


「あれは騒ぎ起こした罰って言ったでしょ。グレッダさんだからお願いしたけど、セレスさんなら有無を言わさず引きずり回したわよ」


 ブルッ。


 セレスさんが一瞬震えたけど、まあ見なかったことにしよう。


「しかし高等学校を街へ開くというのはいいアイデアだな。確かヴェルダでも似たようなことをしていたな」


「ああ、あれは私じゃなくてクラスのみんなだよ。街の職人さんとか呼んだりね」


「だがその行動を起こさせたきっかけはセレナちゃんとアミーカちゃんだろう?」


「んー、まあそこまでは否定しないけど」


 そんなやり取りをしていると、マリーナが


「ちょっ、セレナ、初等学校でも似たことしてたの!?」


 と割り込んできた。


「いや、だからクラスのみんなだってば。私がやったのはイタズラしまくったのと、授業改革みたいのだけだよ」


「なによ、それ?」


 リディアがツッコんできたので、大まかに『つむじ風コンビ』と、授業改革について説明をした。

 話を聞けば聞くほどみんなの顔が歪んでいった気がしたが、きっと気のせいだろう。


「なるほど、セレナは高等学校で急に目覚めたわけでなく、元々そういう資質があったんだな」


「なんで、いきなり呼び捨てにしてくれてんのよ、カリウスくん」


 突然呼び捨てにされたので思わずドキッとしたが、きっとカリウスくんのことだからロクな理由じゃないんだろう。


「む? さん付けが面倒になった」


「何よ、それ。じゃあ私もこれからはカリウスって呼ぶわ。ってかマルクスくんもマルクスって呼ぶ。私もくん付け面倒だったんだよねー」


 これは本当だ。

 ちょうどいいから便乗させてもらおう。


「えっ! えっと、別に構わないけど……」


「ってか仲間内でくんだのさんだの面倒だからみんな呼び捨てでよくない? 無理強いはしないけど」


「そうね、じゃあ私もそうさせてもらうわ」


 リディアは同意するが、マリーナは


「私は……なんか抵抗あるから少しずつってことで」


 とのこと。

 まあ領主の娘だから失礼に感じるのかもしれない。


「さて、次は全国ね。今回の反省まとめてから企画練り直さないと」


「セレナちゃん、全国ってなんだ?」


「ああ、競技会、高校対抗でやろうかなって。今日のはそのテストケースだったから」


 グレッダさんは腕を組んで、途端に難しい顔をする。


「なんか難しいことある?」


「いや、王都の高等学校で競技会をやってるのは知ってるか?」


「うん、そもそもアミーカからそれ聞いて思いついたんだもん」


「そうか……あれはな、競うということよりも、貴族のお披露目的な意味合いが強いんだ。これだけ成長しましたよ、とな」


 そう言って私の方にグッと身を乗り出すと、


「もしそれをやるならそこと衝突する可能性があるぞ」


 そう忠告してくれた。

 それを聞いて気付いたことがある。


「ねぇ、アミーカは料理の部門で二位って言ってたんだけど、もしかして本当は一位だった可能性あるの?」


「それはあり得るな。庶民の立場で二位ということは、それだけの評価をしないとおかしすぎるからだろう。確実とは言えんが、貴族への忖度が大きく働いたことはあり得ると思うぞ」


 くだらな過ぎる……。

 ただでさえ力も権力もあるくせに、名誉まで欲しがって実力を捻じ曲げるなんて。

 腹の底が煮えくり返る思いで、私は拳を握りしめる。


「あとは、そもそもそれで負けた場合、自分の学校が他の学校よりも劣ると思われるのでは? という意識も働くな。参加をしない学校が出ても不思議ではないぞ」


 そっかぁ。

 私は楽しそうだなって思えたけど、それは対外評価を気にする層には届かないか。


「ねえ、セレナ。競わせる必要ってあるのかな?」


 マリーナが突然そういうことを言ってくる。


「セレナは最初、『色々見れて楽しそう』って言ってたじゃない? それなら競う形にこだわらなくても、見るための現実的な方法を考えたほうがいいような気がしたんだけど」


 そうか、そう言われれば無理に競う方向に持っていかなくてもいいのか。


「グレッダさん、高等学校って各地で違いあるのかな?」


「む? そうだなぁ、基本のことは変えるわけにはいかないのでそれほどの違いはないが、研究室レベルならば違いは出てくるんじゃないか? 王都は貴族比率が断トツで高いから違いが分かりやすいがな」


 私は頭の中で色々と弾き始める。

 色々見るため、競うことにこだわらない、各校何かしらの違いはある……。

 よしっ!


「品評会にしよう! 私は、魔導具の品評会をやる。他の科は……同じテーマで、各自やりたい形を考えればいいと思う」


「え? 勝手すぎない?」


「知らない。だって他の科の約束事なんて分からないもん。それに私は魔導具師。魔導具が見たいっ!」


 そういう私の言葉にみんな呆れ顔だ。

 だけど、レオニス先生が言ってた。

 魔導具を楽しむことを忘れるなって。

 それならこれが私のやりたいことだ!


「ワーハッハッハッ! その自分勝手なところはさすが“台風娘”の子だ。いいのではないか? 魔導具科が動けば他の科だって黙ってはいないだろう。自然とその科にふさわしい場が出来るだろうさ」


 そうだった。

 私の原点は魔導具を色々見たいだ。

 マリーナの一言が思い出させてくれた。

 約束破ることになっちゃうアミーカには、後でちゃんと手紙を書いて謝ろう。

 私は私の気持ちに嘘をついてまで続けられなかったと。


「グレッダさん、王都帰る時にアミーカに手紙お願いしてもいいかな? 競技会の形変えたのきちんと謝らないと」


「別に構わんが、それなら手紙を出して、その後夏休みにでも王都に来たらどうだ? 直接謝りたいだろう」


「えっ? でも夏休みは私もアミーカもヴェルダに帰るから、そこでいいけど?」


 するとグレッダさんが私に寄り、そっと耳打ちをする。


「カイル様がセレナちゃんのことを気にかけてる。一度顔を見せて差し上げろ。アミーカちゃんは俺が引き止めといてやるから」


 あぁーー!

 嫌な名前が出てきた!!

 いや、恩人なんだけど、あの人ちょっと苦手なんだよな。

 期待が高すぎて……。


「わ、分かった……」


 それしか言えない私は、出来る限りダメージを減らすための方法を頭の中で考え始める。

 こうなったら……全部巻き込んでやる!


 私はニヤリと、我ながら不気味だろうと思われる顔でマリーナたちを見渡す。


「あのさ、夏休みに……」

競技会スタイルも全科対象も捨て去り、魔導具のみに絞ったセレナ。無責任にも見えますが、原点に立ち返ったとも言えますね。


次回、第80話『重ねゆく友情 前編』


この間約束していた温泉回です。女湯、男湯でそれぞれどんな話が展開されるのか?


今回のセレナの判断、


①セレナらしい

②セレナらしくない


どっちに感じましたか?

良かったら教えてくださいね♪

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