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笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第2部:才能の値段 第1章 輪を広げる

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第77話 向かうべき道

「それでは第一回ウルヴィス高等学校競技会、開催でしゅ!」


 盛大に噛んだ私の挨拶に一瞬間があったが、盛大な拍手と共に競技会が始まった。


「ううっ、消えてなくなりたい……」


「ドンマイ、よく頑張ったよ」


 私の泣き言に、マリーナが抱きしめて背中をポンポンと叩いてくれた。


(アーハッハッハッ、でしゅ、でしゅってー! 赤ちゃんじゃないっての。アッハッハッ)


(うるさい! オバケは夜まで黙ってなさい!)


 頭の中で大騒ぎしてる心の相棒、澪にツッコミつつ、私は周りを見渡す。

 開会式を行ってるのは学校の講堂。全校生徒と外部見学者を収容できる建物はここしかないからだ。


 この後騎士科、衛兵科、魔導科、神官科の学生はそれぞれ演習場へ、魔導具科と調理科はそれぞれの実習室へと分かれていく。

 商人科は、同じように型を決めようかと思ったら、


「好きなように商売させてくれ。商機を見極める目も商人には必要なことだから」


 と、商人科の先生に言われ、それもそうかと納得したのでほぼ任せっきりにした。

 競技会の最後の表彰式でそれぞれの商売方法と金額の発表を行う予定だ。


 外部参加者は、スカウト目的の工房等は無料で招待、単に見学したい、楽しみたい人達は、負担の少ない金額で見学料をもらっている。

 まあ正直見学料で儲けるイベントではないので、ここは重要視してない。


 なお私たちは運営側で、その気になれば有利なように操作出来てしまうため、競技会には参加してない。

 その代わり表彰式で『光るオルゴール(ムジカルーチェ)』の“同時制御(ミレモデーラ)”を披露する予定だ。

 ふふっ、絶対ビックリするぞ……。


 ◇◆◇


 私たちはマリーナとカリウスくんが屋外競技、リディアとマルクスくんが屋内競技、私が全体の指示役として学校の玄関口に設けた本部で待機とした。

 はぁ、私もみんなのやつ見てみたかったんだけどな……。


 そんなことを考えているとレオニス先生がやってくる。


「セレナ、今いいか?」


「はい、ヒマでヒマで仕方ないですから、大丈夫ですよー」


 レオニス先生は私の隣に腰を下ろす。


「お前は将来どうするつもりなんだ?」


「将来? うーん、こう、みんなが笑顔になって喜んでくれるような魔導具師になりたいんですよね」


「具体的には?」


 具体的?

 あんまり考えてこなかったんだよなぁ。

 何せ他に考えなきゃいけないことが多すぎて、気が付いたらここにいたから。


「正直まだ何も。やっぱり考えてないとまずいですか?」


「ルキウスに聞いたが、高等学校入学前に母親から必ず目標を決めておけと言われてたそうじゃないか。それはないのか?」


 あ…………


「あーーーーっ! 忘れてた!!」


「キサマというやつは……。ルキウスから心配した手紙が届いたから、聞いてみればこれか」


 ど、ど、ど、ど、どーしよー。

 ――もう、二年も前の話なのに。

 これで未だに決めてないとかママに知られたら……ひーっ、怖すぎる!


「この前帰省した際に魔法を使ったそうだな? 母親があれは目標まだ決めてないと、それで見抜いたそうだ。なかなかいい母親だな」


 あぁ、終わった……

 卒業するまで帰省するのやめよっかな。


「そういう訳で、今のうちに決めておいた方が傷が少なくて済むぞ。俺たちの年代で王都にいて、“台風娘”の恐ろしさを知らんやつはいないからな」


「それは身を持って知ってますぅ……」


 どろどろに溶けて机の上にスライムのように広がる私を一瞥し、レオニス先生は眼鏡の位置を直す。


「まあそんなお遊びはともかく、正直もったいなくてな。俺はおべっかで人を褒めるなど互いに時間の無駄だと思っている」


 突然なんの話だろ?


「その俺から見ても、お前の発想は飛び抜けていると言わざるを得ない。“同時制御(ミレモデーラ)”を独自で編み出したり、街灯の件といい」


「技術が優れているだけでは一流止まりだ。超一流になるには、発想が要る。お前にはそれがある」


 そう言うとレオニス先生は立ち上がり、


「まあ今日は無事に競技会を終わらせろ」


 それだけ言って去っていった。

 もしかして少しは期待してくれてる……のかな?


 ◇◆◇


 お昼に一度戻ってきたみんなと、本部でご飯を食べる。

 とりあえず午前中はそれほど大きな混乱もなく、順調に進んでるみたい。

 学年複合チームも、三年生がリーダーという王道パターンがやはり多く、三人で仲良く相談したり、中には下級生がリーダーのチームなど、様々な個性が出ていたそうだ。


「でさ、魔導科の三年生のクレア先輩いたじゃない?」


「ああ、去年氷の檻見せてくれた?」


「そうそう。今回もあれ出したんだけどさ、そうしたら相手のチームが協力して大きな炎であっという間に溶かしちゃうわけ!」


 興奮したマリーナが身振り手振りを交えて楽しそうに説明してくれる。


「そうしたら、上に意識が向いたその一瞬の隙をついて、クレア先輩のチームメイトが氷の輪っかで足を縛り付けてね、動けなくなって転んだところに、また氷の檻をズドーンって」


 ドーンッと机を拳で叩き、


「チェックメイトってさ。あれ、最初の檻はわざと形だけ作って囮にしたのよね。すごかったわぁ〜」


 夢見る乙女の顔になってるマリーナ。

 あんた、屋根の魔導具はいいの?


 なるほど、これか。

 先生やママが言ってたのは。

 他人を見ると確かにふわふわしてるように見えてしまうな。


「マリーナ、あのさ……」


 私はさっきの先生との話を話せる範囲に絞って話した。

 ここだとみんないるからね。


「うーん、確かに将来何になってるか? って聞かれると難しいけど、方向は決めてるよ。私はまずは屋根の魔導具を作って、故郷の事故を減らす。そうしたら改良したり、他の国に役に立つ魔導具を作り続けるの。それが出来れば場所はどこだって構わないわ」


 そうか、なりたいものじゃなくてもいいのか。

 やりたい事、みんなを笑顔に出来るために……。


 んー、固まらないなぁ。

 ちょっと朝笑った罰に、夜にでも澪を呼び出して聞いてみるかぁ。


(相談乗るのはいいけど、まずは自分で考えてから来てよ?)


 むっ、先に釘刺された。

 仕方ない。


「セレナさんでも迷うことあるんだね。そうしたら今度の休み、みんなでお疲れ様会と気分転換兼ねて、街の温泉でも行ってみない? ちょうどお店で割引券もらったらしくて、友だちと行ったらどう? って少しもらったんだよね」


「普通女の子温泉に誘う? あんた相当ドスケベね」


 リディアの容赦ない一言に、マルクスくんは慌てて手を振り、


「ち、ちち、違うよ! 混浴とかじゃなくて、ちゃんと別々だって。上がった後に休めるスペースもあるから、そこでゆっくりするのも悪くないかなって思ったんだ。最近みんな忙しかったろ?」


「そだねー、それくらいならいいかな。マリーナとリディアは?」


「私、そう言えばまだ温泉行ったことないんだよね。行ってみたいな」


「そ、そこまで言うなら付き合ってあげてもいいわよ」


 マリーナはOK。

 顔を赤くして口を尖らせながら同意するリディアは、


「おー、マルクスくん、リディアが付き合ってくれるって。彼女出来て良かったじゃん!」


 と、からかっておく。

 さて、と。


「こんのー! セレナっ、待ちなさい!!」


 そんな叫びを上げた頃には、私はもう立ちあがって走り出している。

 その上……


 ポムッ、と柔らかい衝撃音が響く。


 さっきこっそり作っておいた『風壁(エアウォール)』、やわらかめバージョン。

 リディアはこれにまともにぶつかり、バランスを崩して後ろに倒れそうになる。

 ――わわっ、リディア、なんて鈍臭い。


「おっと!」


 そこへうまいこと滑り込んだマルクスくんが、リディアの肩を持ってなんとか支えきってくれた。

 ふー、助かった……。


 そこへ、


『十分後に競技会、午後の部をスタートします。みなさん各会場へお戻りください』


 と、先生からのアナウンスが入った。

 屋上から下に向けて拡声魔法を使ってる姿がちょっとお間抜けだけど。


「セレナ、あとで覚えておきなさいよっ!」


 マルクスくんに支えられ、顔を真赤にしながらリディア達が会場へ向かっていった。


 あーあ、また暇なお留守番かぁ。

 少し将来のこと考えてみよう。



 そんな舐めた態度をしていたら、まさか午後始まってすぐに騒動が起きて私は駆り出されることになる。


 やっぱり日頃の行いって大切だね、うん。

 ……はぁ。


行動が先走るセレナにとって、目標を立てることは大の苦手。果たしてセレナはヴェルダに帰ることが出来るのか?(笑)


次回、第78話『権力の有効利用』


午後の騒ぎを起こしたのは、なんと顔馴染みのあの人達。セレナのお説教が炸裂します!


今何か目標って持って生活してますか?

もし持っていたら、どんな目標か教えてくださいね♪

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