第67話 忘れていた信頼と向き合う時
サアアァ……サラサラ
すごく穏やかな音が聞こえてくる。
私が目を開けると、どこまでも広がる海。
白い砂浜に置かれたビーチベッドの上に私は寝ていたようだ。
「あ、起きた起きた。おはよっ、セレナ」
「澪! また引っ張り込んで、何の用よ? 今とっても悩んでる最中なの!」
「知ってるよ。最初に会った時に言ったこと忘れてるでしょ? 辛いことがあっても二人ならお互い頼れるよって」
「あとさ、あんた十三歳になったよね? 今まで一度も起きてる時に私に呼びかけなかった理由を聞かせてもらおうかしら」
あ……忘れてた。
だって最初のは五歳の時だし、次のは入学からこっち忙しかったし、仕方ないじゃん。
「忘れてたのよ、悪いっ!?」
「悪いわっ!! 私がどれだけ寂しい思いをしてきたことか」
そう言って泣く真似をする澪。
ま、まあ確かに呼びかけ忘れてたのは悪かった。
「ちなみに今回は私が呼んだわけじゃないからね。セレナからここに来てるから」
「えっ、私そんな事考えてなかったよ?」
「それだけ心がまいってたってことよ」
そう言って澪がテーブルに置いてくれた飲み物に手を伸ばし、一気に飲み干す。
「あまっ! これ、冷たいけどココア?」
「そそっ、アイスココアね。頭使いすぎてるセレナには、甘い物が必要かと思ってさ」
まあ実際には飲んではいないんだけど、澪のそういう心遣いが今はただ嬉しかった。
◇◆◇
「とりあえずマリーナちゃんには言っちゃえば?」
軽く伝えてくる澪。
「なんでそう思ったの?」
「だって、あんたが信頼もしてないのに、なんで相手が信頼してくれるのよ。必要なのはこっちから信頼すること。違う?」
ズキッ!
胸の奥の一番深いところを、まるで刺されたような痛みが襲う。
「今彼女に求めようとしてるのは、単なる友達以上のことでしょ?」
「そ、そうだけど……」
「だったら先にセレナから手札見せなきゃダメじゃん。知りもしないセレナの事情についての理解なんて出来るわけないでしょ?」
「……でも、私の事情押し付けちゃって、マリーナに重荷にならないかな?」
「なるに決まってんじゃん。だから何? それで友達やめる? それならそれまでの関係だったってこと。私はその上でマリーナちゃんなら大丈夫だと思うって言ってんのよ?」
澪は迷うことなくきっぱりと告げてくる。
「なんでそんなに言い切れるの?」
「アミーカちゃんが王都で料理勝負申し込んだ時、セレナは勝手なことして! って怒ってた? むしろ喜んで自分から巻き込まれに行ってなかった?」
「……行ってた」
そう答えると澪はにっこり微笑んで、私の手を取る。
「そんなもんだよ、友達なんて。好きな友達のためなら動けちゃう。少なくとも二人はそれくらいの関係は築けてると思うな、私は」
その言葉が温かく私の心に染み渡る。
「そうだね、あんなにたくさん笑いかけて、話しかけてくれてるのに……もっとマリーナのことを見てれば良かった」
王都でのことも、調律者の力のことも、全部黙って抱えてきた。
それで、いつの間にか人を信じるのが下手になってたみたいだ。
「ねぇ、澪、私どうしたらいい? どうしたらまた素直に人と付き合えると思う?」
「セレナは素直に付き合えてるじゃん。もう友達二人と、彼氏候補二人いるわけだし?」
「だっ、誰が彼氏候補よっ!!」
マルクスくんとカリウスくんのことだろうけど、そんなつもりで付き合ってはいない!
「えー、どっちもイケメンじゃん。マルクスくんなんて性格もいいし、お買い得だと思うんだけどなぁ」
「人の友達、モノみたいに言わないでくれる?」
「そうそう、そのくらい元気な方がセレナっぽくていいよ。くだらないことに悩んでないで、さっさとマリーナちゃんの懐に飛び込んできな」
そうだな、もう悩むのはやめて真っ直ぐぶつかってみよう。
「まったく、澪の能天気さにはいつもやられちゃうね」
「それが私のいいところ。しっかり見ててあげるから頑張って」
「うん、行ってくる!」
そう言うと私の足元に穴が広がり、あっという間に吸い込まれていく。
「もうちょっと穏便な帰り方考えとけー!」
私の叫びはただただ闇に吸い込まれていった。
マリーナ、待ってて。
きちんと、話すからね。
澪との会話の中で自分の不信感の大きさに気付かされ、気持ちの立て直しが出来たセレナ。
帰り道が落とし穴って(笑)
次回、第68話『踏み越えて結び直された友情』
セレナの目覚めからスタートですが、早々にマリーナから怒られます。
澪みたいな夢の中の相棒がいたら、何か相談したいことありますか?
また、シチュエーションはどういう状況がいいですか?
良かったら教えてくださいね♪




