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笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第2部:才能の値段 第1章 輪を広げる

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第61話 代わりの道

『やすらぎの甘み』


 何とも甘ったるそうな店名のここが、私が受験の時に渋るパパを引き込んで入ったカフェだ。

 一緒に入るフリをしてパパだけを入らせて、変な視線を浴びせられたと文句を言われたのも、遠い昔のように感じる。


 個室をお願いし、案内された先はピンクの壁紙に色とりどりの星が貼り付けられた、何とも夢あふれる部屋だ……子どもにはね。


「こ、これはなかなか独特な部屋だな……」


 あのカリウスくんでさえちょっと引いている。

 それが見られただけでも連れてきた甲斐があったというものだ。


 私とリディア、マルクスくんは紅茶、マリーナはホットココア、カリウスくんはアイスコーヒーを頼み、飲み物が来ると、早速話の続きだ。


「とりあえずマルクスくんの不満は分かったよ。他の人……たとえばリディアとかはどうなの?」


「えっ、私? ……そうねぇ、平均的な魔導具師を作ろうっていう学校の理念は分かるけど、それ以上を作ろうとするとすぐ止められちゃうのは、ちょっと不満かな。もっとみんなで楽しく切磋琢磨出来ると思ってたから」


「だからリディアさんにも知ってほしくて声をかけたんだ。寄付金さえ納めていれば、額によるけど、ある程度の自由な製作が出来るようになる。でもそれって本来誰でも出来て当たり前だろ?」


 ふっと見ると、マリーナが何か言い出しにくそうな感じでもじもじしている。

 なんだろう?


「マリーナ、何かあるの?」


「えっ!? う、うん。さっきのランタン、明らかに教科書とは違う仕様なのに、先生は何も言わなかった。セレナのには言ったのに」


 そう言って少しうつむく。

 私が何事かと顔をうかがうと、寮で一緒になって以来、見たことがないほど暗い顔をしたマリーナがそこにはいた。


「もしかしたら、知らなかったけど、うちも寄付金を納めてたのかもしれない……」


 ボソッとそうつぶやき、黙り込んでしまった。


「ってことは私とセレナだけ?寄付金なしで抑えつけられてるのって?」


 リディアの言葉に、少し落ち着いてきたらしいマルクスくんが


「いや、カリウスもだ。こいつの場合は払わせなかったから、事情が違うけどね……」


 と、説明する。

 払わせなかった?

 寄付金のシステムを知っているなら、払えるものなら払った方が得のような気もするけど。


「寄付などという無駄金を使うなら、俺の魔導具研究に金を使ってもらいたいからな。だが研究のための放課後の実習室使用は特別な許可がいるそうだ。それが何かは言わずとも……だろ?」


 なるほど、また『寄付金』か。


「ねえ、先生の給料と魔導具の素材費は王都から出てるじゃない?私たち授業料は払ってるわけだし、寄付金って何に使ってるのよ」


 リディアがもっともな質問を投げてきた。

 たしかについ寄付金が悪いで話を進めてしまってたけど、何に必要かは考えてなかった。


「学校の設備の修繕や新しい器具の購入。優秀な教師の引き抜きとからしいよ。何せ魔導具科意外にも商業や騎士、鍛冶師とか他に八コースもあるから、いくらお金があっても足りないらしい」


「そういうことだと寄付金が悪いって一概に言えなくなっちゃうわね」


 マルクスくんの答えに、リディアが天を仰ぐ。

 確かにリディアの言う通りだ。

 たかだか『お金』が必要なだけの話なのに、『寄付金』なんて変な要素をくっつけるから悪い!


「ねえ、要するにお金あればいいんだよね?学校が商売すれば良くない?」


 私の発言に四人が振り返る。


「それは……どうだろう?」


「学校が商売とか出来るわけないでしょ、アンタバカなの!?」


「セレナ、さすがに厳しいと思うよ?」


「やはり学校は面白いな」


 とりあえず否定的な発言四連発(?)を叩き込まれた私はちょっと後ずさりながらも、なんとか続ける。


「別にね、物売れって話じゃないの。売るのは情報だよ」


「情報……ああ、なるほど」


 カリウスくんはうなずくけど、たったあれだけの言葉で伝わったのかな?


「要するに学校が品質管理を行い、学校で作った魔導具、開発した設計図を工房に売る。工房はその分の時間を金で買えるということだな」


 おぉ、ほとんど伝わってた。


「たぶんそれだけじゃないよね? 一般人で勉強したい人って意外といるから、その人たち向けの授業も売れる情報じゃないかな?」


 いつの間にか立ち直ってたマリーナ、ナイス!

 ……っていうか、油断してたら二人に全部言われたじゃんかぁっ!!


「そ、そういうこと……」


 私はガックリうなだれながら一言つぶやくのが精一杯だった。


「なるほど、とても面白いと思う。けど実現可能性は低くないかい?」


 マルクスくんの言葉にリディアが面白くなさそうに鼻を鳴らす。


「はんっ! 私たちからしたらそれで少しでも良くなる可能性が見えるなら万々歳よ。それともあんた、特別扱いは嫌ってのは建前だけだったの?」


 バンッ!!


「ふざけるな、あれは僕の偽らざる本音だ!!」


 激怒したマルクスくんの襟を掴み、リディアは顔を近づけて


「だったら四の五の言わずにあんたも何かだしなさい。一手で逆転できる奇跡なんてない。泥臭くてもあれこれ手を打つしか、現状を破る方法なんてないのよ」


 パッと襟を離すとリディアは不機嫌そうに席に着いて、あごに手を当てて考え始めた。


「あのさ、別にここで正解揃える必要なくない?」


 私がそう言うと、リディアが目を細めて睨みつけてくる。


「アン――」

「はいはい、私は本気だよ。でもね、私たちの考えたことが正解とは限らない。学校側にも譲れない何かがあるかもしれない」


「だから、まずは寄付金で苦しんでる人がいる。そのための代替手段もいくつか考えられる。それを伝えることから始めてみない?」


 私の言葉にリディアは少し考え、一応納得はしてくれたようだ。

 眉間のシワが完全に納得してないのがバレバレではあったけど、今はそれでいい。


「まずはさ、あれこれ考えても、話の持って行き先をしくじったら仕方ないよ。どう“学校”に伝えるかを次考えよう」


 みんながうなずいた。

 すると――


 コンコンコン


 個室のドアがノックされた。

 あれ?何か注文してたっけ?


「どうぞ!」


 マルクスくんの声にドアがゆっくりと開く。

 そこに立っていたのは、眼鏡をかけて白衣を着た男性。

 ……誰?


「レ、レオニス教授……」


 マリーナが両手を口に当て、信じられないものを見るような目で男性を見ていた。


「お前たち、なかなか面白い話をしていたな。どれ、もう一度しっかり聞かせてもらおうじゃないか?」


 不敵な笑みを浮かべ、レオニス教授は私たちのテーブルに余っていた椅子に腰を掛ける。



 …………え、どうしよう??


寄付金優遇への対抗策を練るセレナ達。甘い店での密談中、変人教授に見つかってしまいましたね。


次回、第62話『秘密会議の招待客』

教授と5人組。果たしてその行く先は破滅か共謀か?


学校や仕事帰りに友達とカフェ。

あなたはいつもどんな話題を話すことが多いですか?

良かったら教えてくださいね♪

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