表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第2部:才能の値段 第1章 輪を広げる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/75

第60話 静かな反対者たち

「セレナさ、学校好きじゃないでしょ?」


ある日の夜、マリーナにそんな爆弾発言を投げつけられた。


「はぁっ!?なら何で入学してるのよ」


出来るだけ冷静に、冷静に。

はやる胸の音を小さいため息で落ち着かせようと努力してみる。

まだマリーナを信頼する材料が集まってるわけじゃない。

まだ早い。


「知らないよ、そんなの。でも、セレナ見てると学校の中と寮の中で全然違う顔してるよ? 自覚ないの??」


明るいだけの子じゃなかったかぁ……

きちんと人を観察する目を持ってる。

これは、私が迂闊だった。


「初めての高等学校で疲れちゃっただけだよ」


「ホント?」


「うん。マリーナに心配かけさせちゃってごめんね」


それでマリーナは引き下がってくれた。

ふぅ……

学校での態度ももう少し気をつけないとな。


◇◆◇


「今日は以前行ったランタンのメイン装置と外装を組み合わせて、ランタンを完成させる。出来たものから挙手で知らせるように」


なるほど、だから今までの授業で出来上がったものを回収されてたのか。

私は手元に配られた、回路と外装を改めて確認する。


ん?

外装の付与が私のものじゃない。

すると、


「なお、メイン装置も外装も、基準に満たないものは、学園の“スタンダード”なレベルのものと取り替えてある。組み合わせて事故が起きてはまずいからな」


なるほど、不良品は扱わせないってわけね。


…………


こころに暗い影が落ちる。

子供の頃以来の火魔法をあたりに打ちまくって、学校を破壊したい衝動にかられる。


ふと、マリーナと目が合った。

すごく心配そうに私を見ている。

……ほんと、マリーナが信頼できるなら、今すぐ打ち上げてしまいたい。


私は笑顔を作ってマリーナに手を振ると、再び手元の素材に目を向けた。

要はランタンを教科書通りに組み立てればいいんでしょ!


そこからは早かった。

教科書の手順だけを頭に叩き込む。

素早く手を動かす。

それだけだ。

何も考える必要はない。


「出来ました!」


手を挙げる私。

ランタンを確認し、満足気に笑う教師。

私はいつまで我慢すればいい……

握り込んだ拳、手のひらに突き刺さる爪が皮を突き破りそうだ。


その時


「出来ました!」


マリーナが手を挙げる。

それを見た教師が


「……うん、まあよろしい」


と、歯切れの悪い返事をした。

なんだ、今の反応?


◇◆◇


授業終了間近、ランタンは回収されるため、私はすぐにマリーナの席にいき、回収される前のランタンを見せてもらう。


「マリーナ、ランタン見せて!」


「え、うん。別にいいけど?」


パッと机の上からランタンを取り上げ、一通り確認する。


な、なんだ、これ。

完成度が私のよりはるかに高い。

ランタンをつけても内部温度が高くならない。

火の魔石を下ではなく、上に装着することで、回路が短く、魔力をより効率的に使える。


ランタンの下には網目状の金具が付けられていて、下から排熱処理が出来るようになってる。

これなら耐火処理すら必要ないかもしれない。


下に置くのは向かないけど、吊るす形のランタンなら、ちょっとした暖房効果もあるかもしれない。


「マリーナ、これ耐火処理は?」


「うん、薄くだけね。そんなに必要じゃないから」


やっぱり!

だけど、これは教科書通りではない(・・・・・・・・・)はずだ。


その時、ランタンを回収しに教師がやってきた。


「セレナくん、席に戻りなさい」


「先生!これは教科書通りじゃありません。なのに何で評価されるんですか!?」


「それは君が知る必要のないことだ。我々は“全体”を見て教育をしている。“過度な独自性”は教育の場では扱えない。これは評価に値する。君の外装は評価に値しない。我々がそう判断した。それが全てだ」


そう言い教師はランタンを回収して去っていく。

私は奥歯を噛み締め、


「セレナ……」


そう声を掛けるマリーナへ振り向くことなく、自分の席に戻った。


◇◆◇


授業が終わり、教師が実習室を出て行く。

私に近づいてくるマリーナを感じつつ、さっきひどい態度をとってしまったので、どうしようかと迷っていると、


「セレナさん、ちょっといいかな?」


そう声を掛けてきたのはマルクスくんとカリウスくん。

いや、正確に言えばカリウスくんはボーッとしながらついてきてるだけだったけど。


「ちょっと話したいことがある。放課後少し時間を作ってくれないか?」


こ、これは!

まさかウワサに聞いたことがある告白タイム!?


「あ、マリーナさんも一緒にお願い出来るかな?」


私の妄想は一瞬で崩れ去った……


近づいてきてたマリーナは少し驚いた顔をして、了承の合図を送った。



そしてあっという間にその日の放課後。

誰もいなくなった教室で、私とマリーナ、マルクスくんとカリウスくんの4人、そしてリディアが残っていた。


「リディア、何でいるの?」


「アンタ、私に魔導回路教える約束だったでしょ!そっちの話が終わるまで本でも読んで待っててあげるから、早く終わらせてよね」


するとマルクスくんがリディアに向けて、


「いや、リディアさんも一緒に聞いて欲しい。たぶん君もセレナさんと同じな気がするから」


リディアは訝しげな顔をしながら、開こうとした本を閉じて、こちらの輪に加わった。


「いったい何よ?」


「二人とも、この学校の評価が何で決まってるか知ってる?」


「そんなの教科書通りに出来るかどうかじゃないの?」


私はつまらなそうにそう答える。


「それも間違いじゃない。ただ、それ以上の評価軸があるんだ」


「寄付金……だな」


マルクスくんとカリウスくんが続けてそう答える。

寄付金……なるほどね。


「僕の家はウルヴィスでも最大の規模を誇る工房『石のささやき』を経営してる」


「あ!それ私が……いや、何でもない」


内緒って言われてたのすっかり忘れてた。

するとマルクスくんが苦笑いを浮かべ、


「いいんだ。セレナさんが月一で働きに来ることも知ってる。もちろん、その技術を盗むことが目的なのもね」


――その時、リディアがマルクスくんに掴みかかった!


「あんた、ヘラヘラ笑って、自分が何言ってるか分かってるの!!」


すると、マルクスくんはリディアの肩を突き飛ばす。


「分かってるさ!俺はもう嫌なんだ。工房の跡取り息子だからと特別扱いされるのも、うらやんだ目で見られるのも!!」


いつも朗らかなマルクスくんからは想像出来ないほどの怒った顔。

突き飛ばされたリディアは呆けた表情でマルクスくんを見ていた。


「授業中の手際を見てれば分かる。回路のことならセレナさん、付与のことならリディアさんに僕は敵わない」


「僕は今、学年一番の評価をつけられてるそうだ。笑っちゃうだろ?僕は、僕が評価されている理由を、誰よりも分かっている。それは、寄付金を一番多く納めてるからだよ!!」


そう言ってマルクスくんは、机に手をつき、顔をうつむかせた。

そして落ちる一滴の涙。


こんな時に何だけど、私は男の子も泣くんだなぁと、変なことを考えてしまった。


「マルクスが泣いてしまったから代わりに言うが、要はセレナさんもリディアさんも、優れた腕を持ってる。マルクスはそういう事を直接言いたかったらしい」


カリウスくん、台無し!!

ほら、マルクスくん、頬赤くなってるじゃん。

可哀想……それとも男の子ってこんなものなの?


まだ時間はありそうだな。


「ねえ、こんなところで話してたら誰に聞かれるか分かんないよ?ちょっと場所移動しない?」


「いいけど、アテはあるの?」


「うん、受験の時にパパと入ったカフェが、個室もあったからさ。あそこなら大声さえ出さなければ大丈夫だと思うよ」


そう、マルクスくん以外のみんなの価値観を分かってない今は、まだ動けない。

せめて残りの三人がどう思ってるかは聞き出さないと。


「それはいい。俺はパフェというものを食べてみたかったんだ」


カリウスくんが不思議なセリフを吐く。

うん、分かった。

この子、真面目なのにズレてるんだ。

悪い子ではなさそうだ。


「よし、それじゃあ街に繰り出そう!」


私のわざと元気よく言った声に、みんな元気なさそうに返事をする。

こんなんで大丈夫かなぁ……?

評価基準は寄付金?腐敗した実態に、マルクスの涙と怒りが爆発しましたね。


次回、第61話『代わりの道』


学校の状況を整理し、セレナ達が見いだした提案とは?


自分の力だけではどうしようもない、そんな悔しい思いをした経験、皆さんにはありますか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ