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笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第1部:守られる才能 第4章 選び取った立ち位置

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第53話 自分のための一歩

 二月の終わり。

 懸念点だった高等学校の試験も無事終わり、私もアミーカも無事に合格を勝ち取った。


 まあ私は一瞬危ないことがあったんだけど……


 クラスのみんなも高等学校に進むメンバーはきちんと合格を決め、就職するメンバーもきちんと先の道を決めている。


 職業研究の副産物と言うか、今までなら人に頼らず自分でなんとかしようとしていたことも、気軽に声を掛け合える環境が出来たので、放課後教え合う空気が当たり前になってた。


 全てが順調、後は卒業式を待つばかり。

 そんなことを呑気に考えていたある日の放課後のことだった。


 ◇◆◇


 ドンッ!


 私とアミーカは何故かクラスメートに取り囲まれていた。


 そしてルナとクルトが重そうな本を私とアミーカの机の上に置いたのがさっきの音だ。


「どうだ!」


 クルトがそう自慢気に胸を張る。


「ちょっとクルト、それじゃセレナたちも分かんないって」


 ルナがクルトの袖を引き注意する。

 なんかこの二人、職業企画進めてるうちにだいぶ仲良くなってない?

 もしかして……


 私がニマニマ笑ってると、ルナが気付かれたことに気付いたようで、顔を赤くして後ろへ一歩引いた。


「セレナ、何笑ってんだよ?」


「さあねー。後でかわいいルナに聞いてみたら?」


 そこでアミーカも気付いたらしい。


「クルト、大切にしないと私たちが承知しないからね?」


 と、これまたニマニマ。


「は?何のこと言ってるんだよ。それよりこれだよ、これ!見てくれよ」


 クルト大丈夫かな?そのうち女心が分かってないとか言ってフラレそうかも……


 とりあえず私は一番上に置かれた本の表紙に目をやった。

 そこには


『ヴェルダの街を作る職業たち』


 と表題がある。

 中をパラパラとめくってみると、まず街の地図があり、その中に番号がふられている。


 次のページからその番号とページ数が書かれていて、見るとその職業についての紹介、そこの店主や個人へのインタビュー、関連する職業などがまとめられている。


 なるほど、要するにルナとクルトを中心に、みんなが今まで話し合い、調べ合い、まとめ上げた努力の結晶と言うわけだ。


「すごいじゃん!これどうやって本にしたの!?」


 私は本を持ち上げて、クルトを賞賛した。

 初等学生なのに、こんなしっかり調べた本を作るなんて、これは本当にすごい。

 思わず身震いするほどだった。


「俺たちがノートに情報まとめてるのをマチルダ先生が見てさ、知り合いの印刷屋さんに頼んでくれたんだ」


「だから本になってるのはそこに置いた二冊だけなの。でも皆が頑張った記念にって」


 私がこんなこと言うのはすごく失礼だけど、マチルダ先生はあの授業改革の話以来、とても先生らしい。

 それまでの気弱で頼りない感じは、今は微塵も感じられない。


 もしかしたらみんなの成長は、そんな先生の成長を感じ取ったこともあったのかもしれない。


「そっかぁ、へぇー、でもすごいな」


 そこでふと気付いた。


「あれ、でも別に自慢だけじゃないよね?これ見せて私にどうして欲しいの?」


 そう聞くとクルトとルナを始め、みんなの顔が一様に曇りがちになる。


「あのね、活動を認められて本まで記念で作ってもらって、私たちは一年前とは比べ物にならないくらい頑張ったって言えるの」


「ただな、こう本にまとまっちまうと、なんか終わったなーって思ってさ。これで終わりにして本当にいいのかなって。みんなそんな気持ちなんだよ」


 周囲のみんなもうなずいたり、うつむいたり。

 とりあえずおおむね同意のようだ。


「はあ、それは分かったよ。で、あらためて私たちに何をしろと?」


「二人はこういう気持ちになったことはないかと思ってさ。もしあるならそこからどう進んだのか聞きたかったんだ」


 なるほど。

 頑張って進んできて、ふっと目標を失ったからそこからどう立ち直るかか……


「あのさ、これって誰のためにやってたことなの?」


 私の質問にみんなが押し黙ってしまう。

 その中でクルトが


「俺は誰のためってのは特に考えてなくてさ、今まで考えなかった職業の関連性とかが面白いなって思って」


「これ、もっと前から知ってたら、もっと勉強したいこともあったのにと思って、なら下級生にも教えたやりたいと思ったんだ。だから強いて言えば下級生のためかな」


 そう言ってきた。

 次にルナが


「私はクラスのみんなのため。私の気付いたことを知って欲しい、みんなが社会に出ても仲良くいられたら、仕事だってうまくいくことを分かってほしかった」


 みんなの話を聞いていると、だいたいこの二つの意見のどちらかだった。

 うーん……このまま終わるとまずいかな。



 そんな中、最後のクラスメート、リリア。

 彼女だけは理由が違った。


「私は自分のため。だって自分が将来なりたいものについて、より詳しく調べられて、しかも現場の人の話が聞けるなんて、こんな幸運なことないじゃない?」


 その理由を聞いた瞬間、


「リリア、合格!!」


 私の言葉にみんなの不満そうな顔、声が上がった。

 さて、どう伝えようかね……


 私はもう一度、みんなの顔を見渡した。

 それぞれが、自分の答えを探すような目をしている。

 ……うん、これでいい。


 そうか、もうすぐこの教室に来なくなるんだな。そう思うと、胸の奥が、少しだけ痛んだ。

全員合格おめでとう!

クラスみんなで作った本の完成。でも、燃え尽きてしまった彼らに足りないものとは?

リリアの答えが、核心を突いていましたね。


次回、第54話「終わらせ方を知る」

ついに明かされる「つむじ風コンビ」の正体!

セレナが語る「ワガママ」の効能と、クラスの「完成」。

卒業前夜、彼らは本当の意味で自立します。


クルトとルナ、いつの間にかいい雰囲気に!

鈍感なクルトと赤面ルナ、皆さんはこの二人の恋、卒業までに進展すると思いますか?

(私はニマニマしながら見守りたい派です)

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