第21話 メイド来訪、ロックボア料理の勝負が始まる
翌朝。
一番早く家を出たパパに、「不倫しちゃだめだよー」と声をかけて盛大にコケさせた後、私達は朝ごはんを食べてお迎えを待つことにした。
すると9時になる5分前にコンコンコンと工房のドアがノックされた。
工房の人が扉を開けるとメイド!って姿のカワイイお姉さんがいた。
「お初にお目にかかります。私、フォルティウス伯爵家にてメイドの職をいただいております、セレスティン・ブランと申します。」
メイドのお姉さんは工房のお兄さんに深々と頭を下げて挨拶をした。
工房のお兄さんは、挨拶を受けただけで口を半開きにして固まっていた。
……あ、これはもうダメなやつだ。
「グレッダ様のご命令でセレナ・シルヴァーノ様とアミーカ・ルナリス様をお迎えに参りました。お二方はご在宅でしょうか?」
なんだかその話し方に頭がクラクラする…
(この人と四日間か……)
胸の奥が、ほんの少しだけ重くなった。
私達はママに連れられセレスティンさんに紹介された。
「こちらが娘のセレナで、こちらが友達のアミーカちゃんになります。グレッダ様にはご迷惑をおかけしてしまい大変申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いいたします。」
ママは頭を深々と下げる。
ママ、敬語使えたんだ…
また心を読まれないうちに私とアミーカはまず下宿へとセレスティンさんを連れて行った。
◇◆◇
セレスティンさん、私とアミーカはテーブルにつき、まずは作戦会議だ。
するとセレスティンさんが口火を切ってきた。
「お二人とも、私のこの話し方だと緊張しませんか?もっと砕けた口調の方がよろしければ変えますが、いかがいたしましょうか」
変えられるの!!
じゃあそっちの方が全然いいよ。
私たちは迷う間もなくお互い頷き合い、
「お願いします!」
とセレスティンさんンにお願いをする。
するとセレスティンさんはとても行儀よく椅子に座っていたのを一気に姿勢を崩し、
「あー、良かったぁ。このままでって言われたら疲れちゃうから、ホント助かったわー。」
……え?
さっきまでの人どこいったの?
もはや別人?というレベルで砕けた.....というか砕け散った。
「あ、セレスティンも長ったらしいでしょ?セレスでいいわよ、セレスで」
まるで私のまがい物のような名前を提案してきたが、まあ呼びやすくなるのはこっちもありがたい。
ぜひともそれで呼ばせてもらおう。
「じ、じゃあセレスさん、早速なんですけど、貴族の食べる料理って教えてくれません?私もアミーカも庶民なので貴族の方がどういうもの食べてるか想像もつかなくて。」
「任せて!」
そういうとセレスさんは持ってきたかばんの中から3冊ほど本を取り出して、色々と説明してくれる。どうやらこの状況になることを事前に想定して持ってきたみたいだ。
口調と態度の変貌に騙されそうになったが、そういう抜け目のなさはさすが伯爵家のメイドさんだなぁと思わせてくれた。
「うーん、基本は焼くか煮るなんだね」
アミーカがそう分析する。生食系はサラダ的なもののみ、肉や魚の生食はもちろんダメだし、「揚げる」なんて油が貴重品過ぎて、そもそも貴族でも滅多にないらしい。
「ならアプローチは焼くか煮る以外の調理方法になるかな?あとは何の食材で勝負するかだけど、アミーカ考えある?」
「うん、実はね......ロックボア使いたいんだ」
ロックボアですと!?
「な、なんでロックボアなの?」
「グレッダさん、『金の太陽』のロックボアが一番旨いって言ってたじゃない?だったら同じ素材で『金の太陽』以上の味を作れれば、それはきっと「食べたことのない」感動する味だと思ったんだけど、どうかな?」
アミーカすごい。
あの状況下でもきちんとヒントに気付いて素材まで決めてるなんて。
これはもしかしたら料理頑張ってるだけの女の子じゃなくて、本当に料理のセンスがあるのかもしれないぞ。
「すごいね、アミーカ。よく思いついたよ」
「えへへ。でも『金の太陽』はタレに漬けて焼くだけであの美味しさだからね。たぶん焼くのであれ以上の味は難しいかも?って思って、それで悩んでるんだよね」
「というかその前にロックボアってお肉固くて食べられたもんじゃないっていうよね?」
それまで沈黙を決め込んでいたセレスさんが突然そうつぶやいた。
「たしかに......それ忘れてたかも」
「ううん、忘れてないよ、セレナ」
おいおい、急にアミーカが頼もしいぞ。
何がどうなってるの??
「あ、もちろん解決済みなんて言わないよ?ただね、私たち固いしか知らないじゃない?だからまずはお肉体験してみようよ。対策考えるのはそれからね」
「そ、そうだね。そしたらまずはロックボアのお肉買ってきて、焼いたりしてみよう」
「オー!」
私たち三人は早速王都の市場を目指して出かけることに。
アミーカの急激な頼もしさ。いつもは隠してたのかな?
いや、二年付き合ってきた私がそんなの気付かないわけがない。
とすると......成長したんだな。
『つむじ風コンビ』として、親友として、私だって負けてなんかいられない。
この勝負を通して、私も今より一段階、成長してやる!
衝撃の猫かぶりメイド登場(笑)。 硬い肉への挑戦、アミーカの成長も頼もしいです!
次回、第22話「動き出す蒸気の革命、ロックボア攻略開始」
試作は難航、肉が硬すぎる! そこでセレナが提案した未知の調理法『蒸す』とは!?
初見で「これは食べられるの?」と思ったものはありますか?
私はスターフルーツ初めてみた時、「何食べるの、これ?」と思いました(笑)




