表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第1部:守られる才能 第2章 つむじ風のような日々

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/101

第16話 守られた命と、気づいてしまった差

 学校がお休みの日。

 私とアミーカは、愛犬のリオを連れてヴェルダの街外れの広場で思い切り走り回っていた。


 リオも嬉しそうに、シルフドッグ特有の風の魔力で脚を強化し、私たち二人の間をクルクルと楽しそうに駆け回る。


「ずるい、リオばっかり速いじゃん!」


「ほんとだねー。リオも小さい頃はすぐ息切れして勝てたけど、もうダメかな」


 私たちが互いの顔を見て笑い合っていた、その時だった。


 前方不注意。

 私たちは、街の入口で手続きのために停車していた行商人の馬車に、勢いよくぶつかってしまったのだ。


「うわっ!」


 馬車がガタンと揺れ、荷台からガラスの瓶が一つ、道の上に落ちて――


 ガシャーン!!


 大きな音を立てて砕け散った。

 中には、油のような液体に浸かった薬草が入っている。


「ご、ごめんなさい!」


 私たちが慌てて謝ると、馬車から降りてきた若い行商人の男性は、破片を見て顔を真っ青にした。


「ああ、これはまずい。お客様の、急ぎの注文だったのに……」


 聞けば、その薬草は珍しいもので、お金で弁償して済む問題ではないらしい。


 でも彼は、「子どもは元気に遊ばなきゃな」と無理に笑って許してくれた。

 そんなの、私の良心が痛すぎる!


 私たちは散らばった薬草の片付けを引き受け、行商人さんと別れた後顔を見合わせた。


「ねぇ、アミーカ」


「うん、そうだね」


 言葉にしなくても分かる。代わりの薬草を探しに行くのだ。

 頼みの綱はリオだけだ。


「ねえ、リオ。この薬草の匂い覚えて森に探しに行きたいんだけど、出来るかな?」


 リオは「クゥン?」と心配そうに鳴いた。

 私の無茶振りを察しているのだろう。でも私が引き下がらないのも知っている彼女は、諦めたように匂いを嗅ぎ、「ワンッ!」と応えてくれた。


 ◇◆◇


 パパに連れられて行ったことのある場所よりも、さらに森の奥深く。

 ここより奥は、本来なら大人でも一人では入らないとパパに聞いてた場所だ。


 昼間でも薄暗い獣道を、リオの嗅覚だけを頼りに進んでいく。


「怖いけど……あの行商人さんのためだもんね」


「うん、頑張ろう……」


 お互いを励まし合いながら進むこと数十分。

 ついにリオが足を止め、ある草の前で「ワンッ!」と吠えた。


「これだ! 葉っぱのギザギザも一緒!」


「やったー!!」


 見つけた! 私たちが歓声を上げてハイタッチした瞬間、リオが低く唸り声を上げた。


「グルルルルッ……!」


 茂みがガサガサと揺れ、現れたのは――巨大な猪、ロックボアだった。

 私たちの5倍はある巨体に、鋭い牙。

 魔物図鑑で見た「見かけたら即逃げろ」レベルの危険生物だ。


「フゴォッ……!」


 ロックボアが鼻を鳴らし、前足を蹴る。

 足がすくんで動けない。死ぬ。まだパパやママやアミーカと一緒にいたいのに!


 ロックボアが突進してきた、その時だった。


「アオォーン!!」


 リオが今まで聞いたこともないような鋭い遠吠えを上げた。

 瞬間、リオの小さな体を中心に、風の魔力が爆発的に渦巻いた。


 ドォーン!!


 突っ込んできたロックボアが、見えない風の壁に弾かれて軌道を逸らす。

 さらにリオの周りの風が、無数の刃となってロックボアに襲いかかった!


 プギッ!!


 固い毛皮が切り裂かれ、ロックボアが悲鳴を上げる。

 恐れをなしたのか、巨大な猪はきびすを返して森の奥へと逃げ去っていった。


「……え?」


 私たちが呆然としていると、リオは何事もなかったように「クゥン?」と尻尾を振って戻ってきた。

 シルフドッグって、足が速いだけじゃなかったの!?


 ◇◆◇


 命からがら街へ戻り、私たちは採ってきた薬草を行商人さんに渡した。


 何もなかったと説明しようとしたら、アミーカがロックボアのことを口を滑らせてしまい、行商人さんはあまりに驚き、私の両肩を強く掴んだ。


「ど、どこも怪我はないのか!?子どもたちだけで、なんて無茶をするんだ!」


 そう怒られてしまった。目にはうっすら涙まで浮かべ、本気で私たちを心配してくれてるようだ。悪いことしちゃったな……。


 一通り私とアミーカの身体を見回し、服なども破れておらず怪我もないことを確認し、ようやく安心してくれたようだ。


「いや本当にありがとう。君たちの気持ち、しかと受け取ったよ。ただ、二度とこんなことはしないと約束してくれ」


 その真剣な目に私とアミーカも「はい!」としっかりと返事をした。

 すると、こんな最悪のタイミングでパパが現れた。


「おー、ゼノビアさん、入ったかい? ……あれ? セレナにアミーカちゃん!? 何でこんなとこに?」


 行商人さんの名前はゼノビアさんと言うらしい。ゼノビアさんはパパに今日あったことをすべて伝える。

 あぁっ!伝えてほしくないのに。

 目を手で覆い、私は天を仰いだ……



 結局、その薬草の注文主は「パパ」で、用途は「ママが料理に使いたいと言ったから」という、なんとも締まらないオチだった。


 パパは私とアミーカに向けて


「まあ、行動は褒められたもんじゃないが、気持ちは百点満点だ。……だが、お説教はママからたっぷりと、な?」


 と、爽やかに死刑宣告をしてくれた。


 その後、家に連行された私とアミーカは、ママから二時間に及ぶ説教コースを食らった。


「子供だけで森に入るなんて何考えてるの!」

「死んだらどうするの!」


 愛ある雷は骨身に沁みた、沁みすぎた。

 リオが守ってくれた命、これからはもっと大事にします……。


 ちなみにアミーカは、説教の前にゼノビアさんに「あの薬草、どんな料理に使うんですか?」と熱心に聞いていた。


 アミーカ料理への情熱の一端が感じられて、私は少し羨ましく感じてしまった。

 これがしばらく後に大きな差として私を襲うとは、この時は夢にも思わなかった。

リオの覚醒、痺れました! アミーカの料理への執着など、伏線も気になります。


次回、第17話「はじめての王都と、届いた指名依頼」

ママへの指名依頼で、アミーカも一緒に王都へ! そこで知るママの意外な過去とは?


今回とても頑張ったリオ。

もしあなたが飼い主だったら、ご褒美に何をあげますか?


セレナ、アミーカ、リオ。

この三人(?)の旅を「もう少し一緒に歩いてもいいかな」と感じた方は、★で合図をもらえたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ