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笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第1部:守られる才能 第2章 つむじ風のような日々

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第13話 心の料理人(コル・コクス)

 そして迎えた、アミーカの誕生日当日。

 会場はもちろん、食堂『月のしずく』だ。


 今日はお店の定休日を利用して、アミーカの誕生日パーティーが開かれている。

 いつも大人が多い『月のしずく』だけど、今日は子どもが多め。

 なんか変な感じだ。


 テーブルにはアミーカのお父さん、バルドさんが腕を振るった豪華な料理が並び、店内はとても賑やかだ。


「アミーカ、お誕生日おめでとう!」

「ありがとー! みんな来てくれて嬉しい!」


 主役のアミーカは、みんなにお祝いの言葉をかけられて、ひまわりみたいな満開の笑顔を振りまいている。

 やっぱりアミーカには笑顔が一番だ。


 私は大きな包みを抱えて、ドキドキしながらその時を待っていた。

 タイミングを見計らっていると、アミーカのお母さん、フローラさんが大きなケーキを運んできた。


「さあ、ケーキよ! みんなで食べましょう」


「わーい! ママありがとう!」


 盛り上がりが最高潮に達した今しかない。

 私は深呼吸をして、アミーカの前に進み出た。


「アミーカ、おめでとう! これ、私からのプレゼント」


 私が差し出したのは、私の体が隠れてしまいそうなほど大きな箱だ。

 周りのみんなが「おぉーっ」とどよめく。


「えっ、すごい大きい! 何が入ってるの?」


「開けてみて?」


 アミーカは目を輝かせて、包装紙を丁寧に開き、箱の蓋を開けた。


「……え?」


 アミーカの動きが止まる。

 箱の中に収まっているのは、眩しいほどの純白の生地と、鮮やかな黄色のチェック柄。

 アミーカは震える手で、それをそっと取り出した。


「これって……コックコート……?」


「うん、『コル・コクス』っていうの。『心の料理人』って意味だよ」


 広げられたのは、アミーカのサイズにぴったり仕立てられた、本格的なコックコートとエプロンだ。

 その白さは、お店の照明を反射してキラキラと輝いているように見える。


「すごい、本物みたい……」

「本物だよ。ほら、着てみて!」


 私が促すと、アミーカは慌てて今の服の上からコートを羽織り、エプロンを腰に巻いた。

 サイズは完璧。ママの採寸と型紙のおかげだ。そして最後に、私は帽子を被せる。


「うん! 似合う! 世界一可愛いコックさんの誕生だね!」


 私が拍手すると、周りの大人たちからも「おおっ、似合ってるぞ!」「アミーカちゃん、カワイイッ!」と歓声が上がった。

 アミーカは顔を真っ赤にしながら、でも嬉しそうに自分の姿を見下ろしている。


 まだ驚くのは早いよ?


「アミーカ、その服ね、ママのエプロンと同じ付与がしてあるの」


「えっ……!?」


 その言葉に、一番驚いたのは奥にいたフローラさんとお父さんだった。

 二人が慌てて駆け寄ってくる。


「付与って……マリエッタさんがやってくれたのかい?」


「ううん、私がやったの。ママとパパに教えてもらって」


 フローラさんの質問に私が胸を張って答えると、バルドさんは信じられないという顔で布地を触った。


「火にも強いし、水も弾くよ。それにね……ここを押してみて」


 私はアミーカに、帽子のつばの裏にある小さな突起を教えた。

 アミーカがおっかなびっくりそのスイッチを押す。


 ――スゥゥ……。


 微かな音と共に、帽子の中から涼しい風が吹き下ろした。


「わっ! なんか壊しちゃった!?」


「あははっ、違うよ。厨房は暑いでしょ? だから、風が出るように改造したの」


 アミーカは目を丸くして、帽子と私を交互に見た。

 そして、みるみるうちに大きな瞳に涙が溜まっていく。


「……セレナ……」


「えっ、ど、どうしたの?」


「うわぁぁぁん!!」


 アミーカがいきなり私に抱きついてきて、大声で泣き出した。

 私はびっくりして受け止める。


「ありがとう……ありがとう、セレナ……! わたしね、ずっと憧れてたの……お母さんやお父さんみたいに、かっこいい服着て、お店に立ちたくて……!」


 やっぱり、そうだったんだ。

 アミーカの涙で私の服が濡れていくけれど、全然嫌じゃなかった。

 私の想いが、ちゃんと届いたんだ。


 挿絵(By みてみん)


「ありがとうね、セレナちゃん。アミーカにはいつもあまり構ってやれなくて寂しい思いをさせてたから……あなたみたいな友達がいてくれて本当に良かったわ」


 そう言ってフローラさんは私を抱きしめ、次に涙ぐみながらアミーカの肩に手を置いた。


「よかったね、アミーカ。そんな立派な仕事着をもらったんだもの。これからは『お手伝い』じゃなくて、『見習いコック』として頑張らなきゃね」


「……うん! わたし、頑張る! 世界一のコックになる!」


 アミーカは涙を拭いて、私に向けて今日一番の、太陽みたいな笑顔を見せてくれた。


「ありがとう、セレナ! 大好き!!」


 その笑顔を見たら、苦労して作った甲斐があったなぁと、心から思えた。

 私の手を取るアミーカの温かい手。


 パパやママが言っていたことの意味が、少しだけ分かった気がした。



この時の私はまだ知らなかった。

この“仕事着”が、私とアミーカを王都へ繋ぐ、最初のきっかけになるなんて。

アミーカの涙と笑顔に感動!

『心の料理人』は最高のプレゼントになってくれたようです。


次回、第14話「いたずらの理由、授業の答え」

クラス全員が突然「完璧な模範生」に?

先生を翻弄する、いたずらの真意とは!


今回の話どのシーンが一番刺さりましたか?

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