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笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第2部:才能の値段 第1章 輪を広げる 高等学校二年生〜黎明祭 導入編〜

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107/110

第107話 私のやり方

「それでは来週から公募開始。この街の該当年代は、高等学校を含めて約三千人ほどだ」

「さすがに全員集められる会場ないもんね。一次に書類選考はいい手だと思う。さすがだね」


 今日は校長、あ、元校長との黎明祭(プリマルクス)、ウルヴィス予選の打ち合わせだ。


「褒めてもらえるのはありがたいが、セレナくんはもう少し口の聞き方を整えた方がいいぞ。付き合いもだいぶ広いのだろう?」


 領主付きの現場責任者になってから、どこか吹っ切れたように見える。


「んー、でも私、カイル様にもこんなだしな」


 その一言に信じられないものを見るような表情をされたけど、すぐに顔を戻し、


「いや、変えなくてもいいが、覚えておいた方がいいと思うぞ。その口調のせいで、いらん遠回りをすることも出てくるだろうからな。まあ元教育者のうるさい小言とでも思っておいてくれ」


 と言って紅茶を口にした。

 確かに、言ってることは間違っちゃいない。

 カップの縁を指でなぞりながら、小さく頷いた。


「うん、ありがとう! ――じゃなくて、ありがとうございます」

「ハハッ、早速取り入れようとする切り替えの速さはさすがだな。それじゃあ私はこれでお暇するよ。次はまた1週間後に」


 そう言って元校長は領主邸宅へと戻っていった。


「なんか……人って変われるんだねー」


 マリーナがとても驚いた顔で話しかけてきた。


「ねー、私もちょっとビックリしちゃったよ」

「それほど驚くには値しない。お前らだって多少は経験があるだろう。校長はたまたまそれが強く出ただけだ」


 今日はレオニス先生(がくねんしゅにん)がいる。

 最近少しずつ玉突き出世の影響も少なくなり、顔を出せる比率も上がってきたそうだ。


 でも確かにそうだ。私も初等学校の頃、王都での経験で変わったし、合宿以降は前より上を目指そうと思うようになった。


「それで? お前たちはセレナ以外全員参加するのか?」

「はい、みんなやる気いっぱいで頑張ってますよ!」

「あーあ、私も出たいなぁ」


 私は頭の後ろで手を組んでふてくされる。


「お前は変なところで生真面目だな。出たければ出られるようにルールを作ればいい。そういう立場だろう?」

「だって、主催者側から出たら何か疑われても仕方ないじゃない。それを嫌って貴族にまで助力を求めた私が、真っ先に破るわけにはいかないの」


 レオニス先生の誘いには乗りたかったが、こればかりは譲れない。


「お前は公衆の面前で自分こそが最も優秀だと示したいのか? それともお祭りの参加者になりたいだけなのか?」

「えっ? えーと、それで言うと後者かな。別に私は名誉とかいらないし」

「お前、それはこの前言ってたことと矛盾すると気づいてないだろ?」


 この前ってなんだ?

 私、名誉欲しいなんて言ったっけ?


「おいおい、まさか忘れてるのか!? 偉くなりたいと言ってたろう?」

「あー、あれか! 忘れてないですよ。確かに言葉足りなかったですね。私は私を曲げてまで名誉を欲しいなんて思ってません」


 レオニス先生は視線を鋭くして私を見返してくる。

 私は手に持っていたコーヒーカップをソーサーへ置いて、真っ直ぐ見つめ返した。


「あのね、だいたい名誉なんて笑って蹴っ飛ばすママに、誰もが望むだろう王城スカウトを、自分の道と違うと袖にするパパに教師、こんなのに囲まれて、どうやったら名誉が一番なんて子どもが育つと思ってんのよ!」


 キョトンとするレオニス先生。

 今日は表情忙しいな、この人は。


「私は私のやり方で結果を出す。後ろ指をさされない形でね。……でも、みんなと何かに向かうのは、単純に楽しそうなんだ」

「お前は……よく分からんやつだな。反面教師がいるんだ。それを活かせばいいじゃないか」

「それはしょうがないですよね。私自身がそっちの方が正しいと感じちゃったんですから」


 私がコーヒーを口にすると、レオニス先生がやけに優しげな目になり、


「そうか。ならばやってみろ。応援くらいはしてやる」


 そう言って椅子を戻し、机へ視線を落とす。

 さて、どうするかな。

 そんなことを考えていると、マリーナが


「セレナはみんなと同じ条件で参加したいんだよね?」


 と聞いてきた。


「うん、まあそうだね。じゃないと楽しくなさそうじゃん。それに地方予選で落ちる程度の腕なら、それはそれでちゃんと知っておきたいし」

「それならさ、ある意味セレナしか使えない裏ルートで、かつ変な色眼鏡で見られない手あるんだけど……」


 と、続きをコソコソと囁いてくる。

 ……うん、うん、なるほど。

 それを聞き終えると思わず、


「それいいね! やろう!!」


 と大きな声を上げてしまった。

 その声に振り返るみんなに謝りつつ、


「それじゃあどうしたらいい?」

「まずは今日帰ったら方向性決めよう。で、明後日はお買い物。その後は特訓ね」

「分かった、よろしくね!」


 うー、ワクワクしてきた。

 これならきっと大丈夫!

 あ、一応グレッダさんとカイル様には話し通しておかなきゃだ。

 手紙も書いておこう。


 夜が待ち遠しい。

 気づけば作業の手が、いつもより速く動いていた。


 まるでアミーカとのイタズラを考えてる時のようなセレナでしたが、マリーナの策とはいったいなんでしょうね?


次回、第108話「分ける意味」


 出るからにはと自分への縛りを設けるセレナは考えに行き詰まり、少し気分転換へ。

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