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笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第2部:才能の値段 第1章 輪を広げる 高等学校二年生〜黎明祭 導入編〜

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第100話 舞台に立つということ

 王都最終日前日、私達はまたしても王国最高峰の料理に舌鼓を打つことになる。

 なお、低温蒸しの作り方は半分くらいしか理解できなかったことだけ報告しておく。

 専門的な調味料とかたくさん出て来て、私にはついて行けなかったんだよぉ……。


「王城料理長の料理を食べることが出来るなんて……セレナ、俺は今初めてお前に深く感謝している」


 カリウスのだいぶ引っかかる言葉は横に置いとくとして、みんなもとても感動しているようだ。


 こんなに感動を与える料理人相手に、私とアミーカは真正面から勝負を仕掛けたのだから、今思えばかなりの無茶だったなぁと分かる。

 まああれは直前でオーギュスト様を呼んだ、グレッダさんが悪いんだけど。


 黎明祭(プリマルクス)のスケジュールもバチッと決まった。

 審査員候補も決まり、各大都市への開催依頼とともに通知が送られることになる。

 オーギュスト様とカイル様の連名でだ。

 それってほぼ命令みたいなものじゃ……とは思ったけど、私は何も言わずにロックボアのお肉を口へと運ぶ。

 うーん、美味しすぎる!


 ――おっと、味わってばかりもいられない。

 私は椅子から立ち上がった。


「みなさん、ちょっといいですか?」


 その言葉にみんなは手を止める。


「これでようやく動かせるところまで決められました。たった三日間という短い時間の中で、ここまで組み上げてくれて、本当にありがとうございます」


 私は深々と頭を下げる。

 実はこれ、ママから注意されたのだ。



「セレナ、最終日きちんとみんなに御礼言っときなさいよ?」

「え、なんで??」

「はぁ、これだから……。形の上でとは言えあんたが主催者よ。協力してくれた人の好意に甘えるだけじゃ人は離れていくわ。きちんと感謝が出来る、いざとなったら自分が前に出て責任を取る、それがトップに立つ者の最低限の資質よ」


 と、人の稼ぎを隠してたとは思えないくらい、真っ当なことを言ってきたのだ。

 まあ正直、学費の足しにしてくれて構わないんだけどね。



 そんな背景も知らず、私の感謝の言葉に、みんなは一様に驚いた顔を見せる。

 失礼なっ! といいたいところだけど、確かに振り返るとあまり御礼を言ってない気がするので、もうこれは自業自得だろう。


「セレナがちゃんと御礼言うとか、珍しいね」

「ちょっ、アミーカ、この中で一番付き合い長いあなたが言うとシャレにならないからっ!」


 私たちのやり取りに、みんなが声を上げて笑う。

 ここにいるのは国でも高位の貴族とただの庶民。

 普段なら混じることのないこの二者が、同じ卓を囲んで同じように笑い合ってる。

 もし、カイル様が目指すのがこの場面なら、少しは手を貸してあげてもいいのかもしれない。

 すこしだけそんなことを感じたひとときだった。


 ◇◆◇


「それでは私からも」


 カイル様が立ち上がる。


黎明祭(プリマルクス)の企画責任者は私とオーギュスト様の名で公式にお披露目させてもらうよ。これは各所への連絡をスムーズに伝達させるための手段として納得してもらいたい」


 これには全く異存はない。

 私の目的は開催して色々な魔導具を見て自分の見識を広めること、そして出来れば参加するみんなの就職に少し役立てられればということだ。

 名前を売るなんて怖いことは考えてない。

 みんなも同様に頷いている。


「そして現場責任としてグレッダ殿とセレナ嬢の名を付随しておく。これなら私たちの名代(みょうだい)として分かりやすいからね。動きやすくなるだろう」

「なっ! なんで!?」


 私が異議の声を上げるが、カイル様は静かに横に振るだけで却下してきた。


「君の発案を大いに評価して私たちが後押しした。このストーリーの方が各所から協力を得やすいからさ。力づくで推し進めることも出来るが、それでは長続きしない。それに……」


「君も責任者だ。皆に動いてもらう代わりに、こういうところで役割を果たしなさい」


 そう言われてしまうと何も言い返せない。

 ――あれっ、もしかして?

 私はマリーナを見る。

 すると軽く手を合わせて舌を出してウインクしていた。


 は、ハメたな、マリーナァっ!

 誰かが責任者になればこういう事態になるだろうと見越して、私をさっさと責任者につけたのだ。

 たぶん私が頑張りすぎというのも確かに思ってたのだろうけど。

 うん、これはもう三十秒はくすぐらないと許せないな。

 覚悟してもらうからね?


「それでは最後はセレナ嬢に締めてもらおうかな。期待してるよ」


 ……はいはい、責任者ですからね。

 仕方なく私は気合を入れ直して立ち上がる。


「正直まだ入口が固まっただけで、これから約半年、私たちは黎明祭(プリマルクス)を成功させるまでは気を抜けないです」


「それでも立場を超えて一つのものを作り上げようと、ここに集まってくれた皆さんは、私の宝物です。私も含め、みんなの力を合わせれば成功しないわけがない、そう信じてます。どうか引き続き私を助けてください、よろしくお願いします!」


 そう頭を下げた瞬間、誰からともなく拍手があがり、あっという間に広がっていく。

 その一つ一つが、静かに胸へ染みていく。



 頭を上げ、見渡すみんなの姿は誰もが滲んで見えた。


 シリーズ見返すと、セレナがきちんと感謝してるシーンってあまりなかったんですよね。なのできちんと感謝と弱みを見せてみました。


次回、第101話「寄り道の先で」


 目が覚めるとそこはいつもと違う場所。起き抜けのセレナを取り囲む2人の影はいったい?



 あなたは素直に誰かに「助けて」と言えますか?私は言えなくて我慢して、結果大変な目に合うことになります(^_^;)

 セレナを見習って少しは素直になれるといいなぁ。

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