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小さな箱と冷たい鎖

作者: 言紬 現

時効の物語。

手を伸ばした先にいる彼女の手は、

とても冷たくて、寂しくて

僕には理解が追いつかない。

そうか

アレは夢だったのかもしれない。

いつしか、そう思うようになっていた。

そう思うようにしていたんだ。


だけど現実は、

そう上手くはいかなくて

僕を苦しめる。

時間と共に、思い知らさられ、

知ったのだ。

僕には何もできないのだと。

手を伸ばしても、届かないことに。

彼女の手を取ることはもう、できないのだと。

だって彼女は


いないのだから。


時間は進む。止まることなく。どこまでも。

果てしない時が。めまぐるしい毎日が。

そんな中で記憶という物は、

自分の手ほどの小さな箱。

そんな小さな箱の中で、

溢れて、零れて、掬っても、

箱の中はもういっぱい。

溢れて零れた記憶は

もう2度と、掬うことができないのだ。


箱の中の記憶。

あの日、あの時、最期の日。

彼女は、何もかもを諦めて

小さな僕に言ったのだ。

「ありがとう」「また明日」

それが最期になるなんて、

誰も、知らないはずなのに。

誰かを恨まないといられない。

誰かを呪わないといられない。

たちまち僕は、一人きり。

寂しくて、冷たい。

世界はこんなに冷たい。

そのくせ僕を、縛り付けては離さない。

僕を…僕を、置いていかないで。

手を伸ばしても、叫んでも、

鎖が僕を離さない。

それが無駄だとわかっていても

手を伸ばす事を諦めない。

いつか冷たい鎖が溶け、解けたとき。

僕は彼女にまた、会えるのかな?

彼女に会えたらその時は、

またあの時のように、

笑顔で過ごせる日々が、来るのかな?

冷たい鎖。記憶の時効。

いつか溶けて、解ける日は、来るのだろうか。

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