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第一章 ギャノンズ① 上野小百合④

「で、その子がこの子、ってこと?」

「…はい」

 場所は変わってタケシ自宅。キッチンのテーブルに、タケシと小百合が並び、その対面にルミが座る。腕を組み呆れ顔だ。

 タケシが言っていた『困ったこと』――――それは一般人にタケシの正体が知られている、ということだ。いつもならブチのめした後は相手は警察に連れていかれるので問題はないのだが。それでどうしたものか、これはやはりルミにお伺いを立てないと…色々と後々()()()()()になる気がしたタケシは、小百合を連れてバイクを引き取った後、後ろに乗せて彼女を自宅へ連れて来た。おあつらえ向きに先日使ったピンクのヘルメットがバイクに下げたままだった。

「オレの正体、知っちゃってるみたいなんで、その、ルミさんにどうしたものか伺った方が宜しいかな、と思いまして」

 さすがのタケシも女子高生を自宅に連れ込んだ、という後ろめたさは感じている。座る配置からしてもなんだか説教でもされそうな、イヤーな状況。自然と言葉遣いは丁寧に。

「いやさ、知られたからと言ってその子消すとか、そういうわけにはいかないよね? 私たち、非合法とはいえ正義の側にいるつもりだしさ」

「はい…」

「そうかと言って記憶を消すとか、そういう都合のいい何かってないのよ、実際のトコロ」

「はい…」

「あの、何か私、悪いことしちゃったみたいで…」

「いやいや、誰が悪いって話でもなくってさ。小百合ちゃん、だっけ? お礼が言いたかっただけなんだし。タケシくんも小百合ちゃんを助けただけだしね。そうなんだけどねぇ…」

 ルミは顰めっ面で考え込む。考えてどうにかなるものなのかは分からないが…

「とりあえず…うっすい可能性にでも賭けてみるのかなぁ…悪いんだけど小百合ちゃん、ちょっと調べさせてもらうわね?」

「あ、はい。別に…なんでも構いません…」

 予期せぬ状況に小百合は困惑しっぱなしだ。

「フェイザー。バイタルチェック」

 ルミは右腕のブレスレットから空間に浮かぶモニターを呼び出し、小百合に翳す。

「 …う… …そ…」

 モニターに示されるデータを見て、ルミの表情が豹変した。目を見開き、驚愕の顔。

「何か都合の悪いことでも…」

 心配そうにタケシが声を掛ける。

「え? え?」

 ただならぬ空気にルミとタケシの顔を代わる代わる見る小百合。

 ルミは居住まいを正し、小百合へ向き直った。

「私、星間警察機構、いわゆるワステロフィの先攻捜査隊一査、ルミエール=シューレンと申します。現在この星で任務行動中なのですが、いかんせん捜査範囲が広く、人手が足りておりませんでした。それで。いま調べてみたところ、小百合さん、あなたにギャノンスーツの適性がある、と出ました。つきましては私たちと仲間になって、デギール捜索にご協力いただけないでしょうか?」

 と小百合に頭を下げた。

「エエエエエエエエエエエエエエッ?!」

 驚きの声を上げる小百合。それはそうだろう。

「マジですか…ルミさん…」

「マジもマジ、大マジよ。苦肉の策でタケシくんと同じようにこっちに引き込んじゃえばって思ったんだけど…それ以上だった。こんなにいともあっさり適性のある人が見つかるなんて…まるで出来の悪いラノベよ。それで、小百合さん。どうかしら? 私たちと一緒に」

「あ…はい。やります」

「え? そんな簡単に了承しちゃっていいの?」

 あまりの簡潔さに今度はタケシが驚く番だった。

「ええと…私、タケシさんに助けられてから、ずっと思ってたことがあって。助けてもらったこの身ですから、何か誰かを助けてあげられるような、そんな職に就こうかなって思ってたんです。姉が警察官をやってまして、そういうのが身近でしたし。だから、誰かのためになれることなら、ぜひやってみたいです」

「ふふ、そっか」

 小百合の、迷い無き清々しい笑顔。それを見たルミは、まるでワステロフィで新人教育を担当した時のように嬉しそうだ。

「それで、あの、私、さん付けとかしなくていいですよ?」

「じゃ、小百合ちゃん、でいいのかな?」

「はい! よろしくお願いします、ルミさん!」

 小百合はスッと立ち上がり、頭を下げた。



(あっ!? 痛っ!)

(あ、痛かった? ごめんね?)

(いえ、ちょっとチクンとしてびっくりしただけですから)

 今日日(きょうび)ピアスもしてないの?と、飾りっ気の無い小百合にフェイザーをピアスの形で身に付けることを提案したルミ。現在ピアッサーでその処理をしているところなのだが…タケシは自室へと追いやられた。二人のやり取りが戸を挟んだ向こうからくぐもった音で聞こえてくる。

「なんだっけ、こういうの…何か…記憶が…ああ、アレだ、小学…5年生のとき? 女子だけ体育館に集められて男子は校庭でドッヂボールしてたっけな…なんか…そんな感じだ…」



「ただいまー。あ、お姉ちゃん起きてたんだ」

「そりゃ起きてるよっ! もう夕方じゃないの」

「だって私が学校行く時はまだ寝てたから。まだお仕事ないの?」

「うーん、隊が実質営業停止状態の自宅待機だからねぇ…特秘事項だからあまり詳しくは言えないけどさ」

「そっかー。無職は大変だねー」

「イヤイヤイヤ。クビになったんじゃないよ?」

 上野家。小百合が帰宅したところにリビングのソファーで姉の裕美(ひろみ)がコーヒーを飲みながらくつろいでいた。部屋着兼寝巻きのスウェットのまま。これでは妹にとやかく言われるのも無理はないが…それにしてもこの妹、ずいぶんズケズケとモノを言う。何しろ小百合は内弁慶。普段は人見知りの大人しい印象だが、慣れた相手ならこの通り。

 ところでお気付きだろうか? 苗字をよく見ていただきたい。


【上野】


 つまり裕美はガーディアンの上野。小百合の姉でもあったわけで、先ほど小百合が「姉が警察官を」と言っていたのは裕美のことを指していたのだ。

 「ガーディアン」の前には「元」と付けた方がいいかもしれない。というのもアンジェラスとの一件以降、隊員は上野を除く全員が負傷。部隊としての活動が不可能な上、ガーディアンは隊長たる本城に活動にまつわる全てが委任されていたため、本城抜きでは何もできない。よってガーディアンの活動も存在も現時点で全て凍結されていたのだ。当時バルコニーにいた裕美だけが無傷でピンピンしていて、自宅待機のままこの様子である。

「それでねお姉ちゃん、ギャノンさんのことなんだけど」

 小百合はずいぶんと上機嫌で裕美の隣に座った。

「あーもー、さゆちゃんごめんねぇ。前から言われてたのに、ギャノンさんが来た時、お姉ちゃん現場ではちょっと遠くにいて話しかけられてなくってさぁ。オレンジのギャノンさんも忙しそうだったから」

「あー、うん。それは仕方ないって分かってるから。そうじゃなくて。私、ギャノンさんに会えたの」

「えッ?! ホントに?! ちゃんとお礼言えた?」

「当然だよー、コドモじゃないんだから。っていうか、私、ギャノンになったから」

「へぇ、そうなんだぁ。 …って、エエエエエエエエエエエエエエッ?!」

「ホントだよ? ホラ!」

 と、小百合はルミにやってもらったピアスを見せる。

「…何? それ」

「これで変身できるんだって!」

「へぇ…って、それ、お姉ちゃんに言っちゃっても良かったことなの?」

「うん。ルミさんにはお姉ちゃんには話したいからって、お願いしてオッケーもらったよ。会ったことある人だし、いいよ、って言ってくれた」

「へぇぇ…あ、でもさゆちゃん、お父さんお母さんには相談したの?」

「してないよ。言えば反対されるの分かってるから」

「まぁそうだけどさぁ…」

「私、将来はお姉ちゃんみたいに警察官になるって、もう決めてるから。だからこれはその予行練習?みたいな」

「ううん…」

 裕美は困っている。先日の現場、ガーディアンとアンジェラスの戦闘は壮絶を極めた。本城はもちろん、全員一歩間違えば命が無かったほどの負傷をしたのだ。あの中にこのおっとりした妹が行くかもしれないと思うと…だが小百合が一度言ったら聞かないタイプだ。両親も手を焼いていて、自分が両者の間に入るのもしばしば。とはいえ、かつての自分がそうであったように、小百合にもやりたいことはやらせてあげたいとも思う。それに裕美には思うところがある。小百合が『ルミさん』と呼んでいる彼女。話が通じる相手だと感じていた。アンジェラス確保の場面でも的確な指示を臆せず出して、その冷静さがピンチを救っている。人見知りの妹がこんなにあっさりと懐くというのもプラス材料だ。彼女に預けておけば小百合の成長にもなるかもしれない。

「…お姉ちゃんは何も聞かなかったことにするよ」

「ホント?」

「まぁでもね、お姉ちゃんが言っても説得力ないかもしれないけど、警察が入る現場って大変なところだからさ、無理はしないように、ってことだけは約束してくれるかな?」

「うん。分かった」

 いつになく真顔の姉の言う言葉に、小百合は素直に頷いた。内弁慶で生意気な口は利くものの、10歳離れた姉のことを心底誇りに思っている。裕美が警察官になった時も「私のお姉ちゃん、お巡りさんになったんだ!」と周囲に自慢して見せたほど。何より、その姉の背中を追って警察官を目指すことが、その敬意の表れなのだから。



なぜ?なに?ギャノン!


Q36 上野小百合(うえのさゆり)について


A36

身長163

B83

W61

H86

姉裕美よりも多少凹凸感がある


好きな食べ物:干し芋

嫌いな食べ物:らっきょ


ガーディアン上野の妹

県立浜沼高校1年

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