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コイバナ・シリーズ

コイバナ: 「指の話」

作者: 成田チカ

 「男の人のどこに魅力を感じますか?」なんて訊かれることがたまにあるけど、私はそういう時は必ず「手の指」と答えてしまう。

 そう言うと、必ず次の質問が続く。


 「どうして?」


 だって、胸板とか上腕筋とか、そんなものは服着りゃ隠れるのよ。

 でも、指は隠れない。

(まぁ、そりゃぁ冬に手袋はめたら隠れるけど。)


 両手を組んだ指、グラスを持つ手、コンピューターのキーボードを叩く指。

 ギターとか楽器を弾く時の指なんて最高に色っぽいと思う。

 

 別に私は昔から指フェチだったわけじゃない。

 何年か前に付き合ったことのある男が、実に色っぽい指の持ち主だったのがいけない。


 彼とは友達主催の飲み会で知り合った。

 友達の彼氏の友達。

 よくあるパターン。


 少し人見知りで口数の少なかった彼の指が動く様を、テーブルの反対側から私はずっと見ていた。

 今思い返すと、かなり変な態度だったかもしれない。

 大体、隣に座っていた男が鬱陶しかったのもいけないと思う。


 しばらく見ていたら、私の視線にようやく気が付いた彼が、ボソッと言った。


 「何?」


 私は確か、何か楽器でもやってるのかって訊いたんだと思う。

 ギターが好きだって彼が言って、それから少し音楽の話で2人で盛り上がった記憶がある。

 あいまいなのは、この時点でかなりアルコールが頭に回っていたからだ。


 その時は別に「お持ち帰り」されるほどには盛り上がらなかったから、飲み会がお開きになって、そのまま別れた。


 まさかその1週間後に街の本屋でばったり再会するとは、その時は全く思っていなかった。


 私たちは今度は本の話で盛り上がり、携帯番号とメールのアドレスを交換して別れた。

 その帰り道に彼と携帯でチャット状態になったのはすごく意外な展開だった。

 人見知りで無口な彼は、文字の上では、結構おしゃべりだった。


 私たちはそれから、ちょくちょく2人で会うようになった。

 それから数週間後、2人で歩いている時に彼が手を繋いできて初めて、「あれ?私たちって、付き合ってるんだっけ?」と思った。

 彼の長い指が私の指に絡まるのがとても気持ちよかった。


 ある日、彼の部屋に遊びに行くと、彼がギターを弾いて見せてくれた。演奏中、私は彼の指から目が離せなかった。終わった後に、彼が私に尋ねた。


 「ギター、弾いてみたいの?」


 どうして?と尋ねた私に、彼はだってずっと指しか見てなかったじゃないと言って笑った。

 そのまま彼の指が私の顔や髪に触れて、その時初めて知った。

 私は、この指に触れて欲しかったんだって。


 その後、色々あって結局その彼とは別れてしまったけれど、今でも男の人を見るときは指を見てしまう。

 その指に触れられたいかどうか―それが私の基準だから。

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