表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/14

シュン

 ときにコメディ、ときにブラックコメディそして風刺、お笑いバカ話などのごちゃ混ぜの、一話読み切りの短編連載集です。

 元となった「カルフ」のシリアスなストーリーと、登場人物や彼らの関係は似ていますが、内容的には関係はありません。


シュン



「シュン、お前にはワープ能力があるのか?」

 やっとシュンに追いついて、カルフは言った。

「ワープ能力って何?」とシュン。

「テレポーテーション。一瞬にして空間移動する超能力だ。それともお前の素早さは忍者か?声をかける間もなかった。散々追いかけて、息が切れてしまった」

「カルフは、息なんてするの?」

「そう言われると返事に詰まる。アタシは息などしない。体全体から必要な酸素を取り入れるのだ。息が切れるという表現は、会話をスムーズにするために、人間の表現に合わせているだけである」

 ふ~ん、とシュン。

「何か僕に用があるの?」

「いつも真っ先にクラスにいるお前が、授業に出てこなかったから、心配して探していたのだ」

「一晩中、宿題の準備をして寝過ごしたから、授業に出られなかったんだ」

「一晩中?なんの準備をしたんだ?」

「僕を囮に吸血鬼を捕まえて、カルフに見せようってゴローが言ったんだ」

「お前が囮?」

「ゴローは、僕だってバージンだとも言ったよ」

 あいつめ~、とカルフ。

「ゴローは、宿題を忘れたとかぬかしておった。お前のような小さな子供を囮にして、宿題をしようとしたのか? アテが外れての、逃げ口上であったか。とんでもないやつだ」

「僕、テンマの作ったHALでゴローを宙吊りにしたから、その穴埋めしないとならないんだ。それに僕、小さくて、みんなみたいに色々なことできないから、できることしないと仲間はずれにされちゃう」

 と言って、シュンはうつむいた。

「チョコレートのタコになって、自分の手足を食いながら海の底でのんびり暮らすとか、吸血鬼になって骨董品店を開くより、もう少し現実的な夢を、お前は持っていないのか?」

 シュンは、暫く考えてから言った。

「カルフはスパイ業もするんだよね。楽しい?」

「カッコイイと思ったのだ。アタシは自由意志を持った。それをセリカ様に知っていただきたかった。

だが、セリカ様に心配をかけるのは、心苦しいともわかった。スパイをしているときの興奮が、吹き飛んでしまうほど後ろめたいのだ」

「自由だということは、逆に沢山の責任を自分で背負うことになるんだよね」

「シュン!! お前は、なんと奥深いのだろうか?大抵の人間は、大人も子供も、自由を無責任の言い訳にしているというのに、お前のように小さな者がそこまで考えるとは関心なことだ」

 シュンは、恥ずかしそうに微笑んだ。

「スパイって、カッコイイと僕も思う。カルフは、僕が忍者のように素早いとも言ったね。ね、キャラバン隊長さんに取り次いでよ。僕も小さいから、どこにいても目立たないよ」

「ふ~む。ライリは、アンダーカバー エージェントになれる人材が欲しいと言っておった」

「アンダーカバーって何?」

「身分を隠して敵地に侵入し、そこで情報を集めたり破壊工作を行う仕事のことを言うのだ」

「カッコイイ!」

 シュンは勢いよく顔を上げた。

「だが、危険もかなりある。確固たる信念を持ってないと、逆に寝返って二重スパイになる可能性もある」

「二重スパイ?それもカッコイイかも」

「そういうものは普通、裏切り者というのじゃ」

「裏切り者はカッコよくないよね。大抵、バカにされた挙げ句、殺されちゃう」

 シュンは、うつむいた。

「全てに白黒つけて考えるな。灰色というものもあるのだ。カッコイイ、カッコよくないの他に、なんでもないものもあるのだ」

「僕、すでになんでもないものだよ」

 ポツリと、シュンは言った。

「シュン、お前は悲観的世界にスッポリ、ハマっておるな。なんでもないものは、何にでももなれる可能性を秘めていると思え」

 そうか、とシュン。

「敵地に侵入すると言っても、なにか特技がないと難しいよね。僕、考えてみる」

 そう言ってスックリ立ち上がったシュンを、また一歩、大人に近づいたと思い、満足げに見つめるカルフであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ