カルフ 舞台裏で奮闘する
ときにコメディ、ときにブラックコメディそして風刺、お笑いバカ話などのごちゃ混ぜの、一話読み切りの連載短編集です。
元となった「カルフ」のシリアスなストーリーと、登場人物や彼らの関係は似ていますが、内容的には関係はありません。
「カルフ」を読んでいない方のために、
時代背景は磁気軸反転のためにほとんどの科学的知識を失った近未来、カルフは超レアもののカメムシ型擬似生命体です。
ドーム都市にはロボットやアンドロイドが存在しますが、この話の登場人物は機械など殆どない村に住み、食いっぱぐれた子どもたちは、関守となって痩せたは土地を耕したり、荒れ地を走り回って獲物を追っかけてます。
「今月も儲かったな」
シオンは机の上に置いた、銭や商品の山を見ながら言った。
「キャラバン隊の通行が頻繁になったおかげだわ」
とミオは答えた。
「もう少し貯まればヤギが買えるわ。ヤギの乳は栄養価が高いから、子供たちの成長にとてもいいと思うの」
「どのくらいこの景気が続くんだろうか。皆、通行料の取り立てに奔走しているから、何かのご褒美は必要だ。お金を貯めているから使えません、では不満が高まる」
「通行が頻繁になったのは、噂では山猫隊の縄張りだった場所に物の怪が出没するようになったからだと言うわ。キャラバン隊だけでなく、普通の旅人も迂回して、ここを通るようになったと聞いたの。この景気がずっと続けばご褒美を出すのは簡単だけど、今後の予想はつかないのよね」
シオンとミオは不安げに互いを見交わした。
「、、、あのおかしな武器のせいで、山猫隊は全滅。浮かばれない魂が物の怪になったのかしら?魂、千里をゆくと言う。ここまで来ないと言う保証はないね。」
「お祓いしたほうがいいかしら?」
その時、カルフが入ってきて、
「その必要はない」と言った。
「カルフはなにか知っているのね?」
ミオの問に、カルフはエヘンと咳払いして答えた。
「元山猫隊の縄張りに出没しているのは物の怪ではないのだ。そういう噂を流させたのはカルフ一同である」
「え?」
と驚くシオンとミオ。
「白狐隊の懐が潤うように、このカルフが皆に頼んだのである」
「そ、それはありがとう、、、」
「礼は良い。アタシはセリカ姫のお役に立ちたいのだ」
それはますます有り難いことだとシオンは思ったが、
「でもそんな噂が立てられるのは、なにかいけないことがあそこにあるからじゃないの?」
「元山猫隊の縄張りで通行人に無茶な取り立てをしているのは、バクだ」
すべてを知っているようにカルフが答えた。
「え?」
「サイキガンを振り回して、盗賊のような真似をしておる。サイキガンは生命エネルギーを消費するのだ。彼の命は長くない。すでにボーボーの髪も、モジャモジャの髭も灰色に変わり、痩せこけた身体の物の怪のような風貌である。そうであるから、噂も効果があったのだ」
「え?」
バクに撃たれて大怪我をしたシオンだが、それは彼が意図してしたことではないというのは彼女にもわかっていた。
撃ってしまってから、あっと恐怖に引きつった彼の顔をはっきり覚えている。彼とは同じ村で育ったのだ。自分が村長のもとで美味しいものを食べて玉の輿教育を受けている間、母親のいない彼は、父親に殴られて泣いていたのも知っている。
シオンの兄のイッセイが「少しトロイくて、それを隠そうと強がっているが、根はいいやつだ」と言って面倒見ていた事もあって、シオンの彼に対する感情は「イラつくが、それでも面倒見なくちゃならない親戚の子」と言ったようなものだった。
すぐ死んでしまうとわかっては、ほっておけない。
「そんな、、彼は知らないの?教えてあげなくちゃ」
「それはセリカ様とテンマがすでに試みておる。暗号メッセージを彼の立ち寄りそうなところに置いてあるのだ。ここのところバクは、ドームの兵士たちに追われて、あちこち逃げ回っておる」
そんなことも初耳のシオンとミオであった。
「セリカはバクのこと怖がっていたのに、、、本当に心根の優しい仲間思いの子なんだね」
「大抵の人間は優しさを弱さと勘違いして、利用することばかり考えておる。だが、シオンやミオはセリカ姫に公平だ。姫様はお二人が好きだ。だからこのカルフも、陰ながら白狐隊の役に立とうと奮闘しておる」
「ありがとう、カルフ」とシオン。
「皆がお腹いっぱい食べられるのも、とても大切なことだけど、知識は一生の宝だわ。これからも子どもたちの教育を頼みます。いいえ、お願いします!」
シオンは深々と頭を下げ、ミオもそれに習った。
カルフは、それは食べ物の調達より困難なことなのではないかとも思ったが、知識が一生の宝であると言うシオンの言う意味はわかったので、
「全力を尽くす」と答えたのであった。
来月は久しぶり、ドラゴンスレイヤーの物語、龍の血族 外伝を発表する予定です。
お楽しみに!




