186、居場所
地球の環境と似た星だが違った文明を持つ世界の物語
戦いの翌朝、昨日の疲労を考慮してか今日は朝の目覚ましボディープレスがない
クロコの治癒所もいつもより遅い時間に開店させた
本音を言えば今日は臨時休業でも良いかと思っていた
まだ戦いは続いているが日本では大きな区切りが出来たと、昨夜から呑み明かす一般人が多く今朝はその反動で日本中静まり返っているとテレビのニュースで言っている
テレビ、新聞、ネット、SNS等全て昨日の件が1番の話題だ、軍附属病院で多くの者を救った俺達が今度は戦闘で活躍してと言う話題になると思っていたが、その内容は、、、、
「あぁ〜あ、可哀想に、、、、」
今日はちょうどいい程度に暇だ、午前中に患者が2人、午後はまだ誰も来ない現在13時30分
「黒須〜助けてくれ、、、」(鈴木)
「きたなぁ〜全裸軍人、チン撃の巨人、ヌード大佐、どれで呼ばれたい?他にも、、、メディア毎に色々と呼び方が違ってどれが良いか、、、」
「やめてくれ!それで職場から逃げてきたんだ」(鈴木)
話を聞くと、国防軍に各メディアから取材依頼が殺到して仕事にならない状態だと言う
冷やかしだと思うが『犯罪にならないのか?』と言う意見も警察に問い合わせがあり電話が鳴り止まない状況で、警察からも連絡があり大変な状況だと言う
「日本は面倒くさいなぁ〜、俺が行ってた異世界なら問題なく、英雄として扱われただろうに」
「2、3日此処にいて良いか?家にも記者が来ている」(鈴木)
「軍人さんは大変ですね」(ソフィア)
お茶を入れてくれたソフィアも会話に入る
「しかし黒須があんなに戦えるとは思わなかった」(鈴木)
「あれはコハルの魔力供給があっての事、魔力が無ければ戦えない、今回のカマキリは斬れなかった、勿論トカゲも無理だ」
「それでも相当な強さだ」(鈴木)
「日本は五神がいる限り安泰だ、俺が戦う必要がない、特に鬼丸、剛力の2人の破壊力は確実に俺より上だ、どんなに褒めても軍人にはならないよ」
「それなら今後も治癒所を続けると言う事だな」(鈴木)
「そうだなぁ、、、ソフィア、日本の生活はどうだ?」
「どうしたのいきなり?家電と言う魔道具の使い方も覚えたし快適よ」(ソフィア)
「そうか、、、それならいい」
「どうしたんだ?何か待遇に不満があるのか?」(鈴木)
「そう言う訳ではないが故郷である日本がなんかしっくりこなくてな、、、、」
グミラス星にいた時、急に日本の事が気になって戻ってきたが、、、大きく変わった状況が馴染めない?自分でもよくわからない感情がある、浮かない顔をする俺を心配そうに見るソフィアと契約獣
「鈴木お前の故郷は?」
「俺は東京出身だから故郷は此処だ、特に思い入れとか無いなぁ〜、異世界から帰ってきたと言うのは他の者には分からない感情があるんだろうなぁ」(鈴木)
「俺は異世界に行く前は1980年代後半あたりが一番良い時代だったと思いながら暮らしてた、でも異世界は、特に嫁さんが生きていた時はそれ以上に楽しかった、それでも地球に戻る事を考えた時は何か期待と言うか心踊るものがあったんだが、、、俺が五神を治療するように神が導いた、それだけの事なら俺の役目は終わりだと思ってな、、、苦労して戻って期待外れというか、、、」
「それならゆっくり考えればいい、黒須には時間がたっぷりあるんだろう」(鈴木)
俺はその日から仕事の空き時間、裏庭で訓練するようにした、ひたすらマリーの形見の剣を振る
訓練を続けていると、いつの間にか契約獣達も俺の横で訓練するようになった
考え事をする時は身体を動かしていた方が俺には合っている
2ヶ月訓練を続けてようやく地球の大気に慣れ魔法が7〜8割程度の力で使えるようになった
頭の中もスッキリとした
俺は今、国防軍の訓練場にいる
「今日は鬼丸殿がいるって聞いて来たんだが」
俺の強い殺気に誰も動けずに俺を見ている
「凄い殺気を放って何をしに?」(鬼丸)
軍人の間から現れる鬼丸
「ビジターとの戦いで貴殿が一番強いと分かった、俺がどのくらい戦えるか試したくなった」
「出稽古か道場破りみたいなものか、俺も強者と戦うのは好きだぜ」(鬼丸)
2人が同時に剣を抜くが、構えたまま共に動かないまま時間が過ぎる
風が吹いて埃が舞い上がると2人が動き2人の場所が入れ替わり互いに頬が斬れ血が流れ出す
「参った俺の負けだ」
「いや負けたのは此方、貴方は自分で傷を治せる、俺は不合格ですか?」(鬼丸)
「合格だ、心配なく行ける」
「いつ立たれるのですか?」(鬼丸)
ソフィアと契約獣が俺の周りに集まる
「今からだ、世話になった、鈴木〜俺からの贈り物だ受け取れ」
俺は鈴木に剣、マント、カバンを渡す
「何だこれは?」(鈴木)
「俺達がいなくなってから中を見ろ、縁があったらまた会おう楽しかったぜ[ムーブ]」
「全員、黒須殿一行に敬礼!」(鬼丸)
俺達は沢山の軍人の敬礼で送ってもらいながら光に包まれ転移した
「クロコよかったの?」(ソフィア)
「何がだ?」
「稼いだお金、全部置いてきて」(ソフィア)
「こっちじゃ使えないだろう」
「また戻らないの?」(ソフィア)
「その時は何とかするさ」
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俺達が転移した後の訓練場では、カバンの中の手紙を鈴木が見ている
《俺の居場所は向こうみたいだから帰る事にする、剣とマントは世話になった礼だ異世界産の貴重品だから大事に使ってくれ、カバンの金はビジター戦で破壊された街の復興にでも使ってくれ 黒須》
「あの馬鹿、、、ところで鬼丸、合格とか不合格とか聞こえたが何の話をしてたんだ?」(鈴木)
「あれは俺の強さで日本を守れるか試されたんだ、、、あの人は本気じゃなかった、それでも俺は相打ちだったから不合格かと思ってたんだがなぁ、、、もっと強くならないといかんな」(鬼丸)
「あの強さで元々は守ってもらうヒーラーだったらしい、それが戦うヒーラーに、、、凄い人だったなぁ」(鈴木)
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「これからどうするの?」(ソフィア)
「グミラス星の旅が途中だっただろ再開するだけさ」
「私と結婚して王になるって選択肢もあるのよ」(ソフィア)
「1人で国に帰りたいのか?」
「ごめんなさい、お供させてください」(ソフィア)
「やっぱり異世界は空気がいいなぁ、、、」
異世界じゃない此処が俺の世界(居場所)だ
居場所ってのは自分で見つけるもの
生まれがどうだとか関係無い
地球の地方都市で生まれ都会で過ごしていたが
俺はこの世界がしっくりくる
俺達は旅を再開させた
 




