158、ただいま
異世界でチート能力を授かった男のありふれた物語
俺と乱丸は新たな旅を始めた、東向きにぼちぼち歩いて行く
「乱丸、暇だなぁ」
[主人は何かトラブルを期待されているのですか?](乱丸)
「俺の経験から言うと盗賊や獣が襲って来たり、迷子に会ったりと何かあるものだ」
[平和で良い事じゃないですか](乱丸)
「楽しくない、此方から獣を探すかぁ森へ入るぞ」
[了解です](乱丸)
「いたぞ!今日の夕食だ」
森の奥に数頭のレッドボア、狩りをして乱丸と食べる
腹が減れば狩りをして、疲れたらテント代わりの馬車を出し寝る、自由気ままな旅を楽しむそんな旅をするつもりだ
夜の野営、焚き火を眺めて酒を呑む、空には沢山の星が輝いている
「乱丸、俺はこの輝く星のどれかから来たんだと思う、実は俺の転移魔法には行き先が頭の中に現れる、最近気が付いたんだが薄っすらと昔居た場所の地名が表示されているんだ、魔力不足か何かで魔法は発動出来ないがいつかは遠い場所に帰れるかもと思っている」
[主人の魔法の事はよく分かりませんが、乱丸は主人に何処までも付いて行きます](乱丸)
「そうか、ありがとう乱丸」
俺は夜空の星を眺めロベリア星での出来事を思い出す
どうすれば帰れるのかわからない
次の日から俺は旅の途中の訓練を魔力量を増加させる事と転移魔法の熟練度を上げる事に趣きを変えた
旅をしていれば何か新しい発見があるかも知れない、それがロベリア星へ帰る方法に繋がるかも知れないと思いながら旅を続ける
クエフを出てからかなりの距離を歩いたが特に変わった事は無い、今自分が迷子になっている事を除けば
「乱丸途中から道が細くなって無くなるなんてあるのか?おかしいだろ」
[確かにそうですが、今は周りで私達を観察している者が気になります](乱丸)
「お前も気付いていたか、襲って来る訳でもなく長い間此方について来るなぁ〜何がしたいんだろ?」
[そうですね何がしたいか分かりませんが、数が増えています](乱丸)
俺達は周囲を警戒しながら森を進んで行く
突然『ビュー』と音を立て矢が飛んで俺の前方へ刺さった、乱丸が戦闘態勢になる
[俺がいいと言うまで動くな乱丸]
[分かりましたが何故?](乱丸)
[殺意が感じられない]
[いつの間にか囲まれていますが、、、](乱丸)
「此処に何しに来た?」(ヒョウ獣人)
ヒョウ柄の獣人が森から姿を現して俺達に話しかけて来る、他にも数人が姿を見せているが隠れている者もいる、武器は構えたままだ
「俺達は旅をしていて迷っただけだ」
「此処は獣人の国すぐに出て行ってもらう、断るなら」(ヒョウ獣人)
「待ちなさい!」(森の奥からの声)
奥から別の声がして勢いよく俺達の前に1人の獣人が現れ俺の前で跪く
「申し訳ございません、クロコ様」(謎の獣人)
「お前、サーシャか?」
「はい、お久しぶりでございます」(サーシャ)
サーシャの態度を見て戦闘態勢を解く獣人たち、俺達はサーシャに案内され森の奥へ入って行き居住地区へ来た
「私がこの獣人の国の長でサーシャの父シーマだ、過去の話は聞いている娘が世話になった」(シーマ)
その日俺達とサーシャ親子は過去の経緯について話をした、サーシャの祖父は最近亡くなれたのだが、サーシャが奴隷店にいる時に別の獣人から祖父は長く無いと話を聞いたらしい、逃げてこの地に戻る事に必死だったと言う事だったが許される事でも無い
「娘のした事にお詫びがしたい、何か望むものはないか?娘がサーシャの他に3人いる好きなのを連れて行ってもいい」(シーマ)
「俺は今、元の星に戻る方法を探している、魔力量が増える方法とか、ヒントになる事だけでもいい何か知らないか?」
俺はシーマに此処に来るまでの経緯と俺の考えを話した
俺の魔法ムーブは過去に行った事のある場所に行く事が出来るが、魔力不足の場合はバックライトの切れた表示のように薄く文字が見える、今ロベリア星の地名は全て薄く文字が表示されているので、自分の魔力量が増えれば転移出来る可能性がある事を説明した
「ならば魔力の集まる場所がある、そこに案内しよう」(シーマ)
居住地区の外れにある洞窟に案内され中に入っていくと魔鉱石だらけの場所がある、俺の身体が多くの魔力を感じている、魔法を確認すると転移の行き先にロベリア星の地名がある
「これはお詫びだ」(シーマ)
手ぶらで帰らせる事に抵抗があるのか?俺に一振りの剣が渡された
「遠慮なくもらっておく、シーマ此処からなら帰れそうだ、ありがとう[ムーブ]」
俺の足元に魔法陣が現れ転移した
転移した先には少し前に見ていた景色がある、俺はロベリア星に戻って来た
此処は【クロスの森平和公園】この公園の傍らにマリーの墓がある、『マリー帰って来たよ』と俺は心で呟く
そしてマリーの墓の横を見ると俺の墓があった
俺の横には乱丸がいる、そして何故か後方にサーシャがいる




