1、異世界へ転移
異世界でチート能力を授かった男のありふれた物語
此処は日本のとある町、夕方ポツポツと雨が降り出し降り始めから5分とかからないうちにザーザーと豪雨となった、その中を人々は足早に家路へと向かう。その中で中年男性の一人が歩道橋の下で雨宿りをしている。同じ時一人の二十歳前後の女性が歩道橋の上を傘をさして歩いている、スマホで時間を確認し家路へと向かうその女性に突然奇妙な音が聞こえる。
「何この音?」ギーギーと機械音が彼女の頭の中で鳴り響くそして次の瞬間黄金色に輝く光が彼女を包み彼女は光りが消えるのと同時に消えた、そして偶然真下にいた中年男性も同時に消えた。
二人は気を失い、気が付いた時は見たこともない中世を思わせる装飾がされた部屋の中だった
「此処は、、、、?」女性が目を覚まし不思議そうな顔で辺りを見回す、少し薄暗い部屋で直ぐ後ろに気を失った男性、部屋の壁沿いに白っぽい何処かの民族衣装を着た人が並んでいる、少しすると男性も目を覚ます「うぅ〜」頭を押さえながら男が顔を上げる。
「目が覚めたようだな」壁沿いに立つ人とは違い少し派手な服を着た初老の男性が女性に近づき跪く
「貴方は誰で、此処は何処ですか?」と凍えた声で女性は尋ねる
「此処はニルゲラ王国で私は王のガゼール・ニルゲラだ。後ろの男性は君の執事か?」
「しつじ?ひつじ?」ただ首を傾げる女性、それを執事を知らないのか?と不思議そうに見る王様[日本の一般家庭で執事なんて聞かないぞ!私の執事ではありませんなんて答えをされた方が怖いわ!]、数秒の沈黙のあと王は
「遠い所から来ていただきありがとうございます聖女様、我が国に其方のお力添えをお願いします」と言い深々と頭下げる、壁沿いの人達も同時に頭を下げる。
此処で若い女性と中年男性は異世界に来たかも?と思い始める。
異世界から来た男女は別の応接間に通され中年の男性から色々な話しを聞く、この国はロベリア星カルシア大陸にある国で、近年中に発生する魔獣の氾濫に対抗するために聖女召喚を行ったと言う説明だが、まだ信じられない感じだ。女性の名前は白石聖23歳のOL、男性の名前は黒須巧55歳の早期退職した無職、女性はスタイル良く美しい人、一方男性は痩せているがお腹はぽっこりの何処にでも居そうな感じだ、転移時、女性は聖女の能力を授かり今後聖女としてこの国で活躍するのは間違いない。男性は歩道橋の下で巻き込まれ転移した、この国で[ハズレ召喚]と呼ばれる存在だ。ただこの男性は転移時とても大きな能力を授かった特殊な存在だ、それは後から皆が知る事になるとても大きな能力だった。
この物語は黒須巧が異世界で特殊な能力を得て生きていく、俺が主役の物語
「ふぁ〜ぁ朝か」朝目覚めると見慣れない部屋、[本当に異世界に来たんだな]と実感する「コウ様お食事をお持ちしました」給仕係が食事を運んでくれる「ハズレ召喚だな」と言われた時は何処かに放り出されるか、最悪殺されるかと思っていたから実に良い待遇だ。
昨日の事を思い出してみる、歩道橋の下で雨宿りをしていて光りに包まれ真っ白な空間で誰かに話しかけられて「不運な者よ、其方に力を与える、、、、異世界で、、、大きな力、、、ステータス、、、望む、、、全て、、、生きて、、、」って言われて目が覚めたら周りに沢山の人が、、、思い出せない
「コウ様お身体の調子はどうですか?」給仕係の女性が話しかけてくれる
「はい、とても調子が良いです」と答えるその後、俺がどのようになるのか等質問したが給仕係に聞いても正しい答えが返ってくる事はなかった[当然だよな]。
食事が終わると謁見の間に案内された
「改めて私が国王ガゼール・ニルゲラだ、この世界に招いた理由は聞いていると思うが」王様が壇上から降り、聖さんの前に跪く「我々に力をお貸しください」すると「私は争いごとの少ない国で生まれ育ち魔獣と戦うなんてとても無理です」と答える聖さん、部屋はどよめく[そりゃそうだよな〜魔獣と戦うなんて考えられない環境で育ったんだから]「時間はある、この国で生活して考えて欲しい」
「コウ・クロス、貴殿には多大なる迷惑をかけたこの通り謝罪する」
「謝罪はわかりましたが、俺はこれからどうなるのですか?」
「申し訳ないが元の世界には戻れない、この世界で働き生きていってもらうしかない、もちろん最大限に協力する、申し訳ない」[無職だった俺に職業斡旋してもらえるのか〜家族もいない独り身の俺にはラッキーかもしれないな]
話しが終わると部屋に大きな布で覆われた物が台車で運ばれてきた、布を取ると大きな透明な球体の水晶のようなものが現れる[これってアニメの能力測定ってやつか〜]
「聖女様これは能力を測る装置です、貴方の力がどれだけ大きなものか確認させて下さい、此処に手を」聖さんが手をかざすと神々しく光り出す、「おー」と皆んなの歓声が凄い「これ程の輝き見たことがない、過去の文献にもない輝きだ」[よく分からないけど凄いんだろうな]
「コウ殿も今後のため能力を」[転移時のあの声が本当ならばここで凄い事になり、、、俺の時代が来る]測定器に手をかざすと、、、、光らない、、、すると測定器の横にいた女性が「よく見ると薄く無数の線が現れています、ただとても薄く産まれたての子供の光りに近い、、、、」[もういいです悲しくなるから、、、]
「コウ殿、魔力はいつ開花するか分からないものだ、生活には多少の苦労があるかもしれないが」
異世界での二日間が終わった