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公衆の面前で!

「もちろん擬似で。って言おうと思ってたんだ。恋は人を美しくするっていうだろう? だから肉体改造にも少しは効果があるんじゃないかなって。もうその必要はなさそうだけど」


 噂のほうじゃなかった! 変態なのはわたくしだったわ!


「そういう紛らわしい手伝いは不要よ!」


『あなた何なの? 意図的な女たらしなの? 天然女たらしなの? はっきりしなさいよ!』と叫びそうになってしまったが、それこそヴィンセントの思わくだったら嫌なのでこらえた。噂のほうを思い浮かべてしまったのは反省するが、まさか恋が来るとは思わないではないか。


 本当は意外と純粋なのかしら? いえ、これが魔王の口車なんでしょう。こうやって評判との差を演出して婦人を魅了しているのね。わたくしもどぎまぎしてしまっているけど! これはあくまでも噂のほうかと疑ってしまった気まずさで!


「あら? レディ・ヘレナ・ロビンソン」


 声のほうへ振り向くと、どぎまぎしていた気持ちが一気に吹っ飛んだ。


 水色のドレスに、黄金色の巻き毛を結い上げてボンネットをかぶった令嬢。そして隣には黒のフロックコート、黄金色の髪にトップハットの令息。


 ドロシーとサイラスだ。


「ごきげんよう。お散歩ですの? あら、ロード・ブラッドローとご一緒に?」


 ドロシーはサイラスの腕にかけていた手を動かして、思いきり体をくっつけた。サイラスは気まずいと思っているのか何なのか、わたくしともドロシーとも目を合わせず顔をそらしている。別に婚約に未練はまったくないが、嫌な気分になるので会いたくなかった。


「ごきげんよう。ミス・ドロシー・アスター。わたくしが散歩していたら勝手に着いてこられただけだから誤解なさらないで」


「あらそうでしたの? ひとりが寂しくて悪名高い赤き浮き名の魔王でも誰でもよくなったのかと思いましたわ」


 こいつ、何て言い返してやろうか?


 ドロシーは可愛らしい笑顔だが、天然の嫌みなのか意図的なのか。多分後者だろう。


『あなたこそそんな頼りないど貧乏貴族で満足しているの? わたくしが言うのも何ですけど』


 そう言おうとした瞬間、かたわらにいたヴィンセントに手を取られて引き寄せられた。ほぼ抱きしめられるのに近い形で、半身がヴィンセントの胸に密着している。動いた冷たい空気に、あのバラの香りがした。


 一拍遅れて、頬に熱が上ってくる。


 ちょっと! 昼間から! 外で! 公衆の面前で!


 叫びたかったが、陸にあげられた魚のように口をわななかせることしかできない。



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