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どういう、おつもりですか

 大学の図書館というものに初めて足を踏み入れたのだが、一言で表すと、壮観だ。


 遠くまで左右に書架が高く続き、四つの階層になった通路をらせん階段で上がれるようになっている。天井近くには、本を痛めないためにステンドグラスがはまったおそらく北向きの窓。日中だというのに外光が最小限なので、壁かけランプのオレンジ色が主な光源だ。


 焦げ茶の書架にさまざまな色の背表紙、ところどころにかけられたはしご、厚みのある空気の匂い、靴音を吸いこむボルドーのじゅうたん、行き交う紳士たちの姿。


「すてきなところですわね」


 隣でエスコートしてくれているヴィンセントを仰いで、素直に出てきた言葉を伝えた。


「そうだね。遊びほうけていて課題の締め切り前に四日間こもりっぱなしだった思い出もあるけどね」


 ヴィンセントが本当なのか冗談なのか分からない話に乗せて軽快に笑う。


 図書館とはいいつつも、大学の関係者しか入れないようで、ヴィンセントの知り合いということで今回入れてもらった。わたくしは支度の一環として生成のドレスから白に着替え、同色のボンネットをかぶってきた。


「それでヘレナは苦手な豆を食べられるようになったんだ」


「さすがヘレナ・ロビンソン伯爵令嬢ですね」


「そうだろう? 次はヘレナが犬の言葉を理解した話なんだけれど」


 振り返ると、わたくしの小話を嬉々として話すアルバートに、ヴィンセントの従者ルイが無表情で合いの手を入れている。


 馬車の中でヴィンセントがうまく誘導して、アルバートの妹自慢大会の相手にルイをつけたのだ。聞き役が無表情で大丈夫なのだろうかと思ったが、アルバートは目を輝かせて話し続けている。好きなだけ妹の話ができて聞いてもらえるので、表情など関係ないらしい。わたくしのことを赤裸々に話すのは正直やめてほしいが、アルバートがはつらつとしているので止めるのは諦めた。


 手をかけていたヴィンセントの腕が軽く動いて、見ると、ヴィンセントが口の前に人差し指を立てていた。ゆっくりと歩き出される。


 まさか? と思ったときには、走り始めたヴィンセントに手を引かれていた。振り返るフロックコートの紳士たちの脇をすり抜け、書架のあいだを曲がり、らせん階段を駆け上がる。三階まで引っ張られて息が切れ、ヴィンセントの手を引っ張り返した。


「ああ、ごめん。こっちへ」


 書架のあいだまで歩かされる。


「このあたりならもういいかな」


 ヴィンセントが軽く息を弾ませながら、ようやく手を離した。


「ロード、どういう、おつもりですか」


 図書館へ連れてきた真意を聞かなければと思っていたので抵抗はしなかったのだが、これは誘拐ではないだろうか? あととにかく息が苦しい。こんなことなら本気でローンテニスをやっておくのだった。



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