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トキノマ  作者: 木島別弥
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 二人は飛行機で、滝の大陸から森の大陸へ移動した。

 数時間で、森の大陸にたどりついた。

 その数時間で飛行機の窓から見た六大陸の景色がクシナタの印象に深く残った。

 今まで、どこか別世界のようにこの景色を眺めていたけど、そうではなかった。

 六つの平らな大地が宇宙に浮かぶ景色は、自分のよく知る地球の千年後の姿なのだ。

 よく見て、心に刻んでおかなければならない。

 思えば、それぞれの大陸でいろんなことがあった。

 二人は、ずっと政府に追われていた。

 おそらく、今でも二人は政府に追われているのだろう。

 二人は、六つの大陸を一周して戻ってきたことになる。

 森の大陸に着いた二人が目指すのは、時空実験保存館だった。

 朝、訪れてきた女が教えてくれた場所だ。

 千年前の書類が保管してあるのだという。

 二人は時空実験保存館の警備線をこっそりと乗り越えた。

 警備は甘かった。

 誰にも見つからなかったんじゃないだろか。

 二人はさして苦労することもなく、時空実験保存館の奥の部屋へ行くことができた。

 時空実験保存館がどんな建物なのかは、奥の部屋に入って初めてわかった。

 この時空実験保存館は、千年前の研究施設をありのままに姿を変えることなく保存しているのだ。

 そこにあったのは、千年前の研究室そのままの姿だった。

 何の研究室なのかは、二人ともなんとなくわかった。

 千年前に行われた時空実験の研究をしていた研究室なのだろう。

 その研究室を、千年間、ほとんど姿を変えることなく、そのままで保存しているのだ。

 なんて大切な場所なんだろう。

 クシナタは思った。

 ここが、クシナタが住んでいた惑星を砕いた研究者たちの研究室なのだ。

 いわば、悪の中枢である。

「この書類どおりに実験器具を組み立てれば、トキノマへの道が開けるはずなんだ」

 そして、その悪の中枢にやってきて、悪を解き放とうとするのは、大好きなムラクモである。

 ムラクモは、何があってもトキノマへ行くつもりでいる。

 旅に出る最初、もう決心してしまったのだ。

 トキノマ伝説の真相がどんなものであろうとも、トキノマへ行くと。

 ムラクモは千年前の書類を手にとって読み始めた。

 どこかに、実験器具の設計図があるはずなのだ。

 それを発見しなければならない。

 数時間かけて書類をあさってみたところ、探していた実験器具の設計図が見つかった。

 時空実験の実験器具の設計図だ。

 他にも、時空実験をしていた人たちの業務日誌が見つかった。

 時空実験の行われた数日間にわたっての、毎日の業務内容が書いてあった。


 7月3日。

 いよいよ、明日が実験の日だ。結果がどうなるかわからない。

 所長の期待は大きい。必ず成功すると信じているようだ。


 7月4日。

 今日、時空実験が行われた。

 実験は予想外の結果に終わった。

 実験により、事故が発生したようだ。

 大きな地震が起こって、建物がいくつか倒れたようだ。

 実験室も半分が消えてなくなってしまった。

 いったい何が起こったのだろうか。

 情報が混乱して、真相がつかめない。

 気象庁が、地球が砕けたと悲鳴をあげながら緊急放送を報道している。

 実験室も、事故の後始末で忙しい。


 7月5日。

 本当に地球が砕けたようだ。

 世界は滅亡の危機を迎えていた。

 みんな、地球が砕けたことに気づいた者から順に、復旧作業に参加していった。

 砕けた地球をもとに戻せそうにはない。


 7月6日。

 我々はこの宇宙に残された地球の欠片に人が住めるように、急速作業で、地球環境の保全を行った。

 人によっては、我々のことを世界を救う英雄のようにもてはやしてくれる。

 違うのだ。

 地球は我々の手によって砕かれてしまったのだ。

 彼らがそのことを知ったら、我々をどうするだろうか。


 7月7日。

 我々が地球を砕いたことを隠し通すことに成功した。

 我々は人類史上、最悪の罪人だ。

 我々は、地球を砕いたことを秘密にしたまま、新しい六つの大地を生存可能な環境に作り変えようとしている。

 うまくいけば、人類や地球生物の生存は可能になるだろう。


 7月8日。

 我々は人類史上最高の英雄として、みんなに称えられた。

 ゲロが出た。

 わたしはあくまでも秘密を守り通した。

 地球を壊したのは我々だ。

 我々の時空実験によって、地球を壊してしまった。

 ごめんなさい。

 これを読む者は、新しく作られた六つの平らな大地の世界がなぜ誕生したのかを知るだろう。

 これを読むものに対して、わたしは深く謝罪するものである。

 地球を砕いたものは我々だ。

 被害の大きさは、大きすぎて、数えることもできない。

 地球の何割かは、消し飛んで消えてしまった。

 我々は黙秘したまま、贖罪のために六つの平らな大地を成立させた。

 人類が同じあやまちを再びくり返さないことを祈り、この業務日誌を封印することにした。


 日誌はそこで終わっていた。

 千年前に誰かが書いたメモだ。

 ムラクモはその設計図をコピー機でコピーした。

 そして、ムラクモは設計図のコピーを手にして、クシナタと一緒に時空実験保存館の外へ出て行った。

 これから時空実験の実景器具を製造して組み立てなければならない。

 大仕事になる。

 ムラクモは適当な広さを持った広場を探し出して、そこに実験器具を組み立てることにした。

 クシナタの故郷が、千年前の時空実験で別次元閉鎖空間に切り離されたままになっている。その別次元閉鎖空間をこの宇宙に呼び戻すことが、この時空実験の目的だ。

 失敗は許されない。

 六大陸世界を傷つけないように、慎重に調整して、時空実験を行わなければならない。

 ムラクモとクシナタの二人で、時空実験の実験器具をつくっていった。

 必要な部品は工場に発注してつくってもらった。

 工場は、トキノマへ行くための部品だと知ると、秘かにムラクモたちを支援するために、格安で部品をつくってくれた。

 こうして、ムラクモたちの手によって、トキノマへ行くための時空実験装置が少しづつ完成していったのだった。

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