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二度目の狙撃の後、ムラクモとクシナタは無事に空港に入ることができた。
空港にも、政府の手下である職員が大勢いる。
いつ空港の職員に襲われるかもしれない。
ムラクモは緊張する。
空港で検問でもはられていれば、危険だ。
捕まるかもしれない。
しかし、その心配は考えすぎだったようで、二人は無事、何の妨害もなく飛行機に乗ることができた。
ムラクモとクシナタの抹殺計画は極秘裏に行われているのだ。
空港職員を動員しての検閲のような大々的な捜査は行わないでいた。
抹殺計画は、あくまでも、狙撃手であるフヅキとタケルの二人組みに一任されているのだ。
それで、ムラクモたちは無事に砂漠の大陸を出て、三番目の大陸であるビル群の大陸に移動することができた。
再び、飛行機に乗ると、窓から六つの平らな大陸が宇宙に浮かんでいるのが見える。
クシナタはその景色を見るのが好きになっていた。
「六大陸世界はきれいでいい」
クシナタはいった。
しかし、それがトキノマ探しを行っているムラクモには面白くないのだった。
伝説の楽園トキノマから来た女なのだから、六大陸世界なんて不細工なところね。トキノマはもっと遥かにきれいなところだったんだから。とかいって欲しいのだ。
ビル群の大陸は三十階建て以上の高層ビルが所狭しと建ち並ぶ高層ビルばかりの大陸だった。
粘土板はどこにあるのかというと、やはり地図に載っていた。
粘土板はビル群の大陸の最深部である地下二百階の部屋に保管されているとのことだった。
二人は歩いてビル群の大陸の最深部である地下二百階を目指したのだった。
エレベーターというエレベーターを下り、エスカレーターというエスカレーターを下り、階段という階段を下り、時には梯子も使って下の階に降りた。
しかし、遠い。
地下二百階は、想像していたのより遥かに遠い。
歩いても歩いても、なかなか地下二百階にはたどりつけなかった。
ビルの中なので、明るいか暗いかは電灯がついているかついていないかで決まる。
だから、夜になっても暗くなることがない。
いつが夜かはビル群のところどころに飾ってある時計で確認することができた。
ビル群では、水と食料を全自動で生産しているらしく、飲むのも食べるのもタダだった。
ビル群の住人は飾り物をつくってばかりいて、自分でつくった飾り物を売って生活していた。
水と食料がタダの大陸なので、働かなくても生きてはいけるのだが、暇な時間を飾り作りでつぶしているらしかった。
クシナタにはそれが不思議でならなかった。
クシナタのいた場所を人々は楽園と呼ぶけれども、クシナタには六大陸世界の方がよっぽどか楽園に思えるのだった。
トキノマ探しで命を狙われることさえなければ、ずっと住んでいたくなるような快適な暮らしをビル群の人々はしているのだった。
二人は、使われないまま放置された区画にやってきて、今は誰も立ち寄らない寝具売り場のベッドを見つけて、一日目は眠ることにした。
「ビル群の大陸に住みたい」
クシナタがそんなことをいい出した。
「何いい」
その発言にムラクモが驚く。
「なんで、トキノマから来たお前がビル群なんかに住みたがるんだ」
「だって、水も食料もタダなのよ。働かなくても暮らせるなんて、夢みたい。しかも、普段やってることが飾り物作りなんて、格好いい」
クシナタは嬉しそうにはしゃいだ。
六大陸世界はなんていいところなんだろうと、クシナタは最近思い始めていたのだ。
「そうか。そういうものなのか」
ムラクモはそのことばを聞き流すことしかできない。
ムラクモの想像していたところでは、トキノマはビル群の大陸より遥かに住みたくなる場所だったのだが。
クシナタの喜びようが、ムラクモの夢をがたがたと崩していった。
たしかに、森の大陸では食料は自分たちで農業を行って生産していた。
ビル群の大陸では、その食料が全自動生産されている。
森の大陸よりは、ビル群の大陸の方が住みやすいところだというのも納得するのだが。
しかし、トキノマと比べたら。
クシナタによって、トキノマ楽園伝説が音を立てて崩壊していく。
ムラクモは今まで想像していたことを訂正しなければならないので、頭の中がとても疲れてくるのだった。
眠ろう。
ムラクモはそう思った。
どのみち、クシナタは政府に命を狙われる凶悪犯なのだ。
トキノマの謎を解かない限り、安定した暮らしは送れない。
クシナタはトキノマへ帰るしか、生きのびる道はないのだ。
クシナタをビル群の大陸に安住させようとかは、考えるだけ無駄だ。
どうせ、しばらくすれば、政府の追っ手がやってくるのだ。
眠っている間に政府に襲われたら、命はない。
助かっても、終身刑だ。一生、閉じこめられたまま生活することになる。
クシナタはトキノマへ帰すしかないのだ。
ムラクモはそう再び心の中で決心して、その日は眠りについた。




