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stars  作者: 二皿くも
58/62

第七話 アステリズム 11


   ***


【輝君へ

 初めてのお手紙、何か、緊張しながら書いてます。まずは、謝らせて下さい。

 今回のこと、巻き込んでごめんなさい。

 私の妹が、失礼なことを言ってごめんなさい。


 私を助けてくれたとき、私の一番汚い姿を見せてしまってごめんなさい。


 あのとき、暑いなか重い私を背負って、とても熱かったよね。大丈夫とは聞いてますが、身体はその後大丈夫でしょうか。私のせいだけれど、心配しています。

 勝手に心配をしてごめんなさい。そもそも、一緒に暮らそうと言ってごめんなさい。

巻き込んでしまって、ごめんなさい。私のせいで、嫌な思い、怖い思いをさせてしまって、ごめんなさい。


 輝君の優しさを、気持ちを、利用してしまって、ごめんなさい。


 私と居るとみんなおかしくなると分かってたのに、一緒に居たいと思ってしまった。

いつも、ずっとそうで、分かってたのに、輝君と一緒に居たいと思ってしまった。

 輝君のことを想うより自分の気持ちを優先した、大人として、ひととして、最低です。

それは、私が大嫌いだったヤツらと一緒で、私は君に同じことをしました。

 衣笠さんに、条例違反で警察に自首すれば、君を困らせるだけと言われました。君が困らなければ、すぐに警察に行って罰を受けたいです。


 色々本当に、ごめんなさい。こうして手紙で謝ることも、私の気持ちだけだと分かっています。

 本当は、電話や、直接会って謝りたいのだけれど、衣笠さんはそれこそ自己満足だと言っていました。

その通りで、私は、ただ君と話したくて、会いたいんです。

 入院をして退院をして、衣笠さんのご親戚のお家にお世話になるようになって、輝君と会えなくなって二週間経ちました。


 その間、気持ち悪いと思いますが、私は君のことをずっと考えていました。


 体調を悪くしてないかな、ご飯をちゃんと食べているかな、ご両親と仲良くしてるかな、掛け布団を蹴って寝てないかな、つらい思いをしたり泣いていないかな。

 そんな風に、君のことをたくさん考えていました。


 掛け布団のこと知っていて、ごめんなさい。

 とても気持ち悪いと思いますが、深夜、私は目を覚ますことが多くて、そんな時はこっそり輝君を見ていたんです。

 洗濯室の中、ガラス越しの寝ている君は、月明かりに照らされてとてもきれいだった。

 深夜の水族館でひとり、水槽のなかのきれいな魚を見てる様で。すごくぜいたくだなと思いながら見ていました。そうすると、私がまだきれいが分かるって安心出来て、だんだん眠くなって、一階に降りていました。私は本当に気持ち悪いよね、ごめんなさい。


 話が飛ぶのだけれど、退院した日、衣笠さんが今お世話になっているお家まで車で送ってくれました。

 そのとき何時間もあったけれど、答えが出なかったことがあります。


 衣笠さんが聞いてきた、君への気持ち。君のことと一緒に、ずっと考え続けています。


 輝君と一緒に居たい、心配をいつもしてしまう、きれいな君を見ていたい。

 自分と一緒に居てはいけない、心配なんかしてはいけない、きれいな君を汚い私は見てはいけない。

 考えていると、ふたつの正反対の気持ちがごちゃごちゃになって、君への気持ちを拾うことがまだ出来ません。


 私は、自分の気持ちがよく分からないのです。


 どうしてか、これから書いていきますが、長く退屈だと思うので読み飛ばして下さい。


 私は、もの心ついたときから私が悪いと責められることが多くて、どうして責められるか分からなくて、どうしてを探してばかりで、自分の気持ちを後回しにしてきたらしいです。


 今回の入院中、お医者さんがそう教えてくれて、自分でも納得しました。

 退院してからも、お医者さんに教えてもらった方法で、自分の感情を拾う練習をしています。


 まず、目を閉じて、自分の内側に海や夜空、大きく広がる空間のイメージを浮かべます。

 すると、空間のなかに、海なら魚、夜空なら星が現れてきます。

 現れてくるものは、私の気持ち達です。現れてすぐに消えたり、ずっといたり、色んな色や形をしています。


 お腹が空くと何を食べようと思うのと同じで、ひとと関わると何かを思う。

 そのとき、空間に現れた感情を、私はひとつひとつ丁寧に確認するようにしています。

 確認作業は、とても難しいです。感情はとても遠い所にあることが多くて、近づくだけでも時間がかかります。


 近づこうとすると、邪魔が入ったり逃げたり。やっと近づけたと思ったら、消えてしまったり。

 そんな確認作業が出来るようになれば、これから、私はひとの社会で生きられるそうです。

 普通のひとは思春期のときに「自我」が一度壊れて、大人になるまでに「自我を自己修復」するそうです。

 

 私はもの心ついたときから「自我」が壊れていて、今に至っているそうです。

 「自我」を持つことは「自分の意思をもつこと」。世界の中心に自分があると、ひとに合わせ、自分を調整をすることが出来るそうです。

 ひとの社会の中で生きる為に、私は「自我を自己修復」をしている途中です。

 この歳まで逃げ続けてきたしっぺ返しを、今、とても受けています。


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