表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
stars  作者: 二皿くも
5/62

第一話 アルタイル 5

「はい、せいちゃん2対1。ルミ子さんも入れたら3対1、この家では多数決が絶対だよね」


 「お前なあ」となでしこさんに言ったあと、イケメンは僕をにらんで言った。


「ガキ、家に帰れない理由を簡潔に言え」


 考えていると、イケメンがとても低い声で言う。


「弟が産まれて、両親が構ってくれなくなったなんてのは、当たり前で理由にならないからな」


 どうして知っているんだと思い。僕は「違う」と返し、言った。


「……僕は、いらないから」


 「両親に言われたのか」と聞かれ、「違う」と返して、続けた。


「……そう思ってしまう、自分がいらないと思うから。……帰れない」


「確かに、お母さんは弟の世話だけでも大変なのに、高校生で子供返りしてるガキの面倒見きれないわな」


 イケメンの言葉に腹は立たない。その通りだから。新しい家で、いい子供とお兄ちゃんになろうとした。出来なかった。逃げた。


 ……言う通り、子供返りしたガキだからだろう。


「おい、反論がないってことは、俺が言ったお前とは違うってことだからな」


 いつの間にか、普通の切れ長の目に戻っているイケメンが続ける。


「ガキじゃねえから、家出て、ボロのアパート追いだされても帰らないんだろうが」


 言葉の意味が分からない僕を、イケメンがじっと見つめ。大きく息を吐いてから、なでしこさんに向いた。


「ったく、面倒くせえ。なでしこ、今日の夕飯は」


「ハンバーグにするね。せいちゃん、ありがとう」


 また大きく息を吐いたあと、イケメンは僕をにらんで言った。


「輝、この家に居たかったら俺の言うことを聞け、逆らえば追い出す」


「もー、何で、これから一緒に楽しく暮らそうねって言えないの」


 イケメンの声色とは正反対、のんびりした声を上げ。なでしこさんは、サングラスとマスクをゆっくり外した。


「おい! 何で外した!」


「だってー、熱いし、しゃべりにくいし。輝君に失礼でしょ」


 なでしこさんは髪の毛をほどき、顔に下ろさず。驚き、固まっている僕のそばに座る。


「改めて、輝君、私の名前はなでしこです。これから、よろしくね」


 白い小さな顔の中、丸い額と細めの形のいい眉と筋の通った小さな鼻、一番目を奪われた赤く艶のある薄い唇がきちんと並ぶ。

 顔の中一番目立つ、まつげがふさふさした大きな猫目は薄い茶色でキラキラ光り。お化けに見せていた黒く長い髪の毛は、つやつやと輝き。

 

 僕が声が出ないほど驚いた、彼女の美しい顔をより際立たせている。


「せいちゃんはね、ここにご飯食べに来るだけだから。ふたり暮らしだよ」


 そう言って白い歯を見せる彼女は、全然、おばけなんかじゃない。


「昨日、いびきかいてたらごめんね、大丈夫だったかな? うるさかったら言ってね、今日からは、一緒の布団で寝ないようにするからね」


 化粧気はないけれど、僕より歳が上だと分かる彼女。とても綺麗な女の人、なでしこさん。

 こちらに向いている、彼女のめちゃくちゃかわいい笑顔に、僕はくらりとした。


第一話『アルタイル』了


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ