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stars  作者: 二皿くも
47/62

第六話 レグルス 4

「じゃあ、知ってること教えろ。連れ去った人間に、心辺りがあるだろう」


 女の子に対して、してはいけない行為をしている。注意すべきだろうが、今の金剛寺の顔と雰囲気から、僕は口を開くことが出来ない。


「……ないし! ……お姉ちゃん探しに行くから、どけてよ!」


 さすがに彼女の妹は動揺している様で、顔と声色が大人しくなっている。


「じゃあ、何で、車内の人間はお前の名前を出してる?」


 金剛寺の言葉に、彼女の妹が固まった。


「あいつのスマホはな、この付近を離れたら、追跡機能と通話状態になる機能をつけてるんだ。さっきから、お前の事務所の人間と名乗る男が、お前の素行の悪さからの違約金の話をしてるぞ」


 金剛寺は、片耳のワイヤレスイヤホンを指さして言い。


「輝、お前は俺の部屋に戻っておけ。俺から連絡があるまで部屋から出るな」


 僕は、言う通りにしなかった。「輝」と金剛寺に言われ、重く感じる口を開いた。


「……僕も、……取り戻しにいく」


「輝、子供みたいなこと言うな。早く出て行け」


 「嫌だ」と言い、金剛寺が口を開く前に言った。


「お願いします。連れていって下さい」


 僕が頭を下げると、少しして、金剛寺が言った。


「田畑さんのところに行って、あいつが連れ去られたことを説明して、呼んだ警察の対応を頼んでこい。一緒に戻ってきてから、連れ戻しに行くぞ」


 僕は首をもたげ、すぐに家を出た。走って田畑さんの家に着き、説明し、一緒に戻る。

玄関に入ると、彼女の妹が式台に座っていた。


「初めまして。何だ、話に聞いてのよりずいぶんかわいらしい子悪党だな」


 田畑さんに言われ、彼女の妹はじろりと僕らをにらむ。


「お前さんは、私と一緒にここで留守番だ」


「はあ? こんな失礼なじいさんと、何で」


「お前さんのせいで、お姉さんが連れ去られたからだ。もうすぐ着く警察に、詳しく話しをしてもらわなきゃな」


 「話が違う!」と彼女の妹が立ち上がり、田畑さんが肩をとんと軽く叩いて座らされる。


「せいに、警察に話をしないでいいから居ろとでも言われたか」


 「その通りですね」と、なぜか、布団を抱えトートバッグを肩からさげた金剛寺が現れる。


「そんな訳にはいかんだろ。表仕事をしてるからとかは理由にならんぞ。お姉さんに金の無心をし続けて、散々迷惑をかけて、言葉の呪いまでかけておいて、今の状況になんも思わないのか」


 布団を渡され、僕はふたりの会話を聞いた。


「うるさい! 私とお姉ちゃんのこと、知らないじじいが言うな! そこ、どいてよ! 私が行けば、お姉ちゃんは大丈夫なんだから!」


「ほう。その言い方だと、どこに連れ去られて行くか知ってるのかな」


「うるさい! じいさんと話してる暇ないから!」


「声が大きくてうるさいのは、どちらかな。お姉さんたちはどこに行くのかな」


「教えない! そこ、どけよ!」


 前に立つ田畑さんを、彼女の妹が両腕で押す。びくともしない。もう一度。やっぱり、びくともしない田畑さんは、いつもより低い声で言った。


「じいさんな、刑事四十年やってたから、それぐらいじゃなんともないぞ」


 彼女の妹が固まる。僕からは田畑さんの顔は見えないが、雰囲気から、とても怖いのだろう。


「田畑さん、GPSがついてるから吐かせなくて大丈夫ですよ。昔の血騒ぎ過ぎですよ」


「そうだった。最初に配属されたのが地域安全課でな、こういう悪ガキ相手だったもんでつい」


「もう、とっくに成人してるんで悪ガキじゃないです。だから、警察に詳細に話すのを見守ってあげて下さいね」


「まかせとけ。警察が到着する前に、なでしこちゃんを心配するみんなが言いたかったことを、この子悪党に言ってやろう」


 「お手柔らかに」と言い、金剛寺は「行くぞ」と玄関を出る。


「田畑さん、昔、この辺りの暴走族を一掃したことがあるらしいぞ」


 後ろの席に荷物を乗せ、すぐに車は出発した。


「ああ、輝の年代だと暴走族が分らないか」


 淀川通りの大きな道に出て、僕は運転席に向かずに返す。


「……あのひとは、無事なのか」


「暴走族っていうのはな、スピードが出るようバイクや車を改造して、住人の迷惑も考えずに道路交通法をバンバン破って集団で走る輩のことだ」


 「無事なのか!」と大きな声を上げてしまったあと、車は学校のほうへ曲がる。


「潜伏先がプラザ淀川とか、近すぎて笑えると思わないか?」


 十三駅からすぐ、高校からも徒歩十分もかからない。泊まったことはないが馴染みのあるホテルの名前に、少しだけ、身体の力が抜けた。


「……無事なのか」


「井口君は足が早いみたいだな、輝はどうなんだ」


 大きな声を上げそうになり、窓の外を見て「ふつう」と返す。


「そうか。じゃあ力はあるのか、あいつを背負って走れるぐらいには」

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