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stars  作者: 二皿くも
19/62

第三話 ベガ 6

「なんか、すっかり、仲良しになっちゃったねえ」


 ちゃぶ台の前に座る僕のそば、いちごちゃんは身体を伸ばし目を閉じている。


「何で、オスなのに、いちごちゃんなんですか」


「いちごちゃんはメスだよ。男嫌いの美人さんで、美人じゃないけど私も一緒だよ」


 「ねー」となでしこさんが言い、いちごちゃんはあくびをして目を閉じた。


「……じゃあ、僕と、暮らして大丈夫なんですか?」


「輝君は、輝君だもん」


 ……僕は、男扱いされていないのか。


 そう思うと、ちりっと胸が痛み、思ったままを口にした。


「……じゃあ、金剛寺は。……男ですよね」


「せいちゃんも、せいちゃん。衣笠さんや田畑さんにご近所に住んでる人たちは、その人たち。私が嫌いな男はね、私を盗んでいこうとする人のことだよ」


 先ほど聞いた話を思い返す。


 ……詳しくは分からないが、未遂だったとしても、彼女は被害に合っているのだ。


「私を、力づくで盗んでいこうとする人、女の子もいたけど男の人が多かったなあ。私は思わなかったんだけど、妹がいつも怒ってたから、そういう人たちを大嫌いになっちゃった」


 なでしこさんの話は難しくて、何度か頭でくり返してから、聞いた。


「……妹さんは、……なでしこさんを盗もうとする人たちを、怒っていたんですか?」


「うん、怒らない私にも怒ってた、ヘラヘラせずにもっと自分を大事にしろって」


 彼女はえへへっと笑い、僕は混乱する。


 ・なでしこさんの妹は、なでしこさんにとてもひどいことを言う。

 ・なでしこさんの妹は、誘拐犯からなでしこさんを救い、自分を大事にしろと怒っていた。


「……妹さんて、ふたり居るんですか」


「ふたつ年下で、すっごくかわいくて優しい、華希はずきちゃんしか居ないよ」


 発言にますます混乱していると、「すみませーん」と玄関から聞こえてきた。


 もう一度聞こえた、聞き覚えがある「すみませーん」に、彼女より先に玄関に走る。


 扉を開くと、のそりとでかい姿。170cmに2cm届かない僕より10cm以上身長が高く、がっしりした下半身の長距離走者。いつも真っ黒で、小学生の頃からいつも丸刈り。


「おー、テル元気そうだな、良かった良かった」


 産まれた病院から住んでいた公団、今通う高校も同じ。僕を『テル』のあだ名で呼ぶたったひとり、幼なじみの井口がにかりと白い歯を見せた。


「……何で、ここに来られたんだ」


「いやー、この辺りさ、同じ様な景色続くから、迷ったのよ。それで、親切なおばあさんに話かけられて、担任から聞いた住所をたずねたら、輝ならここだって案内してもらって。来られた」


 どやあっと、上から顔を向けられたとき、


「輝君、お友達? 上がってもらったら?」


 聞こえた後ろにふり返る前、両目を開いた井口が、僕も初日に思ったおばけの名前を大きく言った。


    *


「なんだよ、ここ! いいな! 俺も一緒に、ここに住みたい!」


 二階の洗濯部屋に連れて行くと、井口はきゃあきゃあ浮かれた。


「なんだ、このベッド! あ、通販で見たことある! エアーベッドってやつか!」


 井口はベッドにダイブし、仰向けになって「あー!」と大きく叫ぶ。


「夜さ、天井のカーテン開けば、星みえんじゃね! めっちゃ、ロマンチックじゃね!」


 そろそろ注意する前に、


「見えるよ、もうすぐ、ペルセウス座流星群の見頃だよ」


 現れた、長い髪の毛で顔を隠したなでしこさんに言われ、井口は固まった。


「これ、ふたりでどうぞ、ジュースのおかわりあるからね」


 僕にお盆を渡して、「じゃあ」と彼女は一階に降りて行った。


「……テル、あの人、本当におばけじゃないよな」


「違うって言ってるだろ」


「じゃあ、何で、あんな風に顔隠してんだよ」


「……何でって、……えっと…」


「もしかして、極度の恥ずかしがりか。突然来て悪かったな、俺、謝ってきたほうがいいか」


 テンションが一気に下がり、心配そうな顔をする井口。僕は吹き出す。


「何だよ、そうやっていつも、俺のこと笑うのやめろよなあ」


 「ごめん」と、いつもまっすぐな井口に言った。


「お前、なんで、ここに来たんだ。……もしかして、僕の母さんに頼まれたのか」


「ちげーよ。今日、部活中にテルの担任に呼び出されて、色々知ったから」


 井口はベッドに座り、僕は床で、お盆のストローが刺さったグラスを渡してやった。


「うわー、濃いの最高! それ、食べていいの」


 氷の入った白い乳酸菌飲料は、言うとおり。井口に、懐かしいお菓子がたくさん入った木のお皿を伸ばしてやる。


「ばあちゃんの家来たみたいだな。お、これなつい、ヨーグルトの味するやつ」


 楽しそうにお菓子を漁る井口に、「何を聞いた」と聞く。


「アパートがダメになって、超優秀な担任の同級生がテルを助けて、夏休みはお世話になるって。教科書と参考書、学校に売り物にならないタダのやつがあるから、体調がよくなったら取りにこいって」


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