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77話 旧神達はやる気の模様

こんにちこんばんは。

ストックが1つ出来て上機嫌な仁科紫です。


それでは、良き暇つぶしを。

 思い立ったが吉日と簡単に準備を整え、2人に声をかけた後、神様のお店を出た。

 もちろん、2人は何故か私の案に賛成し、一緒にいるに違いないと言い張ってそれ以上の議論は出来ていない。

 もしも2人が別に封印されていたらどうするのかと問うと、2人が引き離されることはありえないと返され、では先程までの言い争いは何だったのかと聞くと推し黙られと答えが返ってくることは無かった。

 どうしても万全であるとは思えなかったが、とにかく想定外のことは起きてから考えるということにしたらしい。


 そうして現在、3つ目の街にあたる昼光の街の冒険者ギルドへと訪れていた。



「それにしても、何時でも夜だなんて不思議な街ですね。」


「この街限定っていうところも面白いよね。この街に入った途端に真っ暗になったし。」



 街に入ったときの事を思い出す。この昼光の街は常に暗闇に包まれ、夜と昼の違いは星が浮かんでいるか居ないかくらいでしかないという不思議な街だった。

 ネオン街といった様子のこの街は蛍光色のライトが煌びやかに輝いており、それでも何故か夜のお店ではなくメイド喫茶や猫カフェ、コスプレ喫茶といった数多の喫茶店が繁盛しているのがまた不思議だった。

 爬虫類カフェなんてものもあったんですよねぇ。今度行ってみようかと思うくらいです。


 楽しそうな街並みを思い出し、ニヤけそうになる頬を引きしめて神様を見る。今はそれどころではありませんからね。



「またダンジョンに入るんですよね?」


「そうだよ。結局、ダンジョンに入るのが手っ取り早いからね。」



 頷く神様にそれもそうかと納得し、ガイアさんとアイテールさんに視線を向ける。

 2人は先程までどこか気難しそうな顔をしながら上空を見ていたと言うのに、今度は地面を見ている。やはりこのダンジョンにいるかもしれないへメラとニュクスという旧神のことを気にしているのだろう。



「それでは行きましょうか。」


「うん。行こう。姉さん。」



 機嫌よく頷いた空の後ろに続き、ダンジョンへと入る。このダンジョンもまた100階層まで攻略が進んでいないとの事だった。

 どうしてだろうかと思いながら入ると、そこは太陽がさんさんと照らす砂漠の地。暑さによって消耗していくHPと不安定な足場がもたらす気疲れはこのダンジョンの攻略においてネックとなるようだ。

 もっとも、私の場合は状態異常耐性のお陰であまり関係がないようですが。


 柔らかい砂の感触に足をとられつつ進んでいると、そうも言っていられない人がぐったりと叫び出した。



「暑い!暑いな!ワシには耐えられないぞ!」


「うるさい。この程度で暑いなんて貧弱。」


「なんと!流石は姉殿。ワシなんぞよりも暑さに耐性があると見える!」



 グワグワと喧しく鳴く鷲は暑さに弱いらしい。耐えられないと叫ぶ姿はなんとも鷲らしかった。

 そう言えば、海の記憶では鷲は限られた地域で生息する鳥なんだとか。暑いところではあまり見られないようですね。


 そうして1人が暑さに喚く中、進むこと10分ほど。少し離れた土の中から何かが出てくるのが見えた。



「あ。何か居ますよ。」


「あれは兵隊蟻だね。近くに巣があるのかもしれない。」


「兜をつけているから間違いないよ。」



 兜を付けている……?不思議に思い、よく見てみると確かに蟻は頭に兜をつけていた。

 何故兜をつけているのだろうと不思議に思いつつ、こちらへと近づいてくる兵隊蟻に身構える。

 しかし、それを空にとめられる。何故だろうと空を見ると、シーッと口元に指をあてた。



((彼らは音に敏感なんだ。敵意さえ見せなければ気付かれることもまず無いし、少し迂回しよう。))


((了解です!))



 変わった生態だが、空の言うことならまず間違いないだろうと頷く。蟻から離れるように歩き出すと、蟻はこちら側へと向かってくることなく真っ直ぐに私たちが入ってきた側へと歩いて行った。

 疑っていた訳では無いが、空の言うことは本当だったらしい。



「兵隊蟻って皆ああなんですか?」


「そうだよ。でも、それは兵士の兵隊蟻の特性で、他の兵隊蟻だとまた違った性質を持つんだ。」



 なんでも神様が言うには兵隊蟻には兵士、騎士、僧侶、戦車、女王、王が居るらしく、その性質はチェスの駒の動きに近いものがあるとのことだ。

 つまり、一番移動範囲の広い女王が一番強いという訳ですね。


 納得しつつ先へと進む。時折見えるのはほぼ兵隊蟻のみであり、時々現れる鋭い歯を持つ兵隊蟻は遠くから見ているだけならば特に害を与えてくることは無さそうだった。

 更に10分ほど歩いた頃、遠くで地面に穴があいているのが見えた。



「あれが大空洞でしょうか?」


「うーん。どうだろう?蟻地獄かもしれないよ。」



 ニヤリと笑って怖がらせるように言う神様に白い目を向ける。そんな事で怖がると思われているのはなんとも不服だった。とはいえ、その線もあったかと考える。

 確か、蟻地獄という名は蟻を引きずり込むことから名付けられ、実際はウスバカゲロウの幼虫だというのを図鑑で見た記憶があります。

 ……遭遇したくないですね。


 あまり可愛いと思えなかったアリジゴクの姿を思い浮かべつつ穴の縁へと近づいていく。

 徐々に見えてきた穴の底は暗くてよくは見えなかったが、サラサラと落ちる砂がなんとも風情があるように思えた。

 蟻地獄ではなさそうですね。



「ここから降りてみましょうか。」


「そうだね。とりあえず降りてみよう。

 どうもこのダンジョンは階段や大空洞の位置が毎回変わるみたいだし。行ってみるしかないよね。」


「うん。ボクも異議はないよ。」


「構わない。それより急ぐ。」


「うむ!早く向かうとしよう!」



 そう言って旧神の2人組はさっさと先へと向かおうとする。どうやら他の2人の旧神を解放できるかもしれないという期待から気が急いているようだ。

 心做しガイアさんの目がキラキラと輝いて見えるだけに2人に会えるのが楽しみなのかもしれない。

 ガイアさんのこんな反応も珍しいですね。どんな方たちなのか楽しみになってきました。



 ・

 ・

 ・



 ワクワクしながら降りると、そこには蟻地獄があった。……騙された!?



「大丈夫だよ。姉さん。あれはちゃんと下に通じているから。」


「な、何故にバレたです!?」


「いや、ちゃんと口に出してたよ?」



 呆れたように話す神様にあれー?と首を傾げると、やれやれと肩を竦められた。その行動に苛立ちながらも神様だしと思うことで致し方ないということにする。

 まあ、何はともあれ、あれを倒せば下に行けるんですし、問題はありませんね。


 空の言う通りだと内心で頷きながら下を見る。渦の中心にいるアリジゴクは鋭い2本の歯をキチチと擦れ合わせ、こちらを警戒しているようだ。

 私も戦いの準備をと、構えたところでそれが無駄であることを悟った。



「〈母の怒り〉」


「〈清浄なる矛〉!」


「キチィ……。」



 私が構えるよりも前に2人によってあっさりと倒されてしまったからだ。これには流石に呆然としたものの、実力を知っているだけに復帰は早かった。

 今までとスタンスが違いすぎたのが驚きの原因ですからね。


 これは今までよりも慌ただしくなりそうだと思いながら新たに開いた穴から下へと降りた。



 ・

 ・

 ・



「この辺り。」



 そう言ってガイアさんが立ち止まったのは40階層に到達した時だった。

 東からは月がのぼり、西では太陽が沈みかけている夕暮れ時のような空が特徴的なこのエリアは、何処までも続くような平坦な砂漠ではなく、起伏の激しい地形をしている。

 ガイアさんを助け出した場所から考えるに、どうやら旧神が封印されている場所というのは基本的に起伏が出来るようになっているらしい。

 その事を不思議に思いながらもガイアさんが指さす方向へと進む。


 そこは砂漠の丘の下だった。今度は何処へ行くのだろうかと考えていると、ガイアさんが近くに生えていたつる状の植物に触れる。



「〈大地の寵愛〉」



 唱えると同時に植物がニョキニョキと成長し始め、空高くへと育っていく。それは正におとぎ話に出てくる豆の木のようだった。どこまで育ったのか、一定の高さまで伸びきると植物の成長は止まり、ガイアさんがこちらを見て頷く。どうやら登っていいという事らしい。

 しかし、飛べばいいのではないかと疑問に思うと、ガイアさんは説明をしてくれた。



「この空の一部から上が結界。そこに入るには道標が必要。飛ぶのではなく登っていかないと惑わされる。」



 ここにこれがあったと言ってガイアさんが見せてくれたのは濃紺と蒲公英色のカードキーに似た何かだった。それは結界内に入る時に必要とした今までの鍵と同じもののように見える。



「なるほど。これを持って上まで行けば良いんですね。」


「プティに木登りが出来るかな?」


「で、出来ますよ!……多分。」



 挑発的な神様の言葉に咄嗟に反論するが、実際にした事は無いだけに曖昧に言葉を濁してしまう。

 うーん。魔力糸と翼でどうにかなりそうな気もするんですけどね。とはいえ、やった事はありませんし……。


 どうしたものかと考えていると、トントンと肩を叩かれてそちらを振り向く。そこには安心させるような笑みを浮かべる空がいた。



「大丈夫。その時はボクの背中に乗って。」


「空……!」



 心強い言葉に感動し、空に抱きつく。よしよしと頭を撫でられる感覚は慣れないが悪いものではなかった。

 なんでしょう。こそばゆい感じがしますね。



「……なんで僕が悪者みたいになるんだろう……。」


「ガハハッ!空の方が一枚上手のようだな!」


「我らが父は空には勝てない。そういうもの。」


「うー……余計なことは言わずに、早く行くよ。」


「拗ねた。」


「うむ!拗ねたな!」


「ほら!急ぐんだろう!プティたちもー!置いていくよー!」


「あっ!神様待ってくださいー!」



 何故か怒った様子の神様を慌てて追いかけ、魔力糸で幹全体を包み込みながら進む。意外と登れることにホッとしながら神様の元へと急いだ。



「ほんと、神様ったら大人気ないんだから。

 これじゃあ姉さんを任せられないんだけどねぇ……。」


 どうしたものかと呟いたその声は風にさらわれて消えていった。



「空ー!置いていきますよー!?」


「今行くー!」

次回、空の上の結界


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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