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75話 願いは自分で叶えるもの

こんにちこんばんは。

新しいものが出てくると楽しい仁科紫です。


それでは、良き暇つぶしを。

 遂に到達した100階層。そこは到着して直ぐにだだっ広い地面が広がっているのが見えた。

 私達が降りた場所は円状になっている広場の端の方だ。そして、真ん中には見覚えのある巨体が存在していた。もっとも、その時に見たものよりもかなり巨大であったが。

 それはいつか砂漠に向かう前に見た鷲の頭に翼、獅子の胴体を持つ空の覇者。グリフォンだった。



「グリュオオオオオオッ!」



 咆哮というよりも衝撃波のような大声を放つグリフォンにハッとして構える。既にアイテールさんとガイアさんは上空からグリフォンを観察しており、神様は剣を空は今にも蹴りを入れようと構えていた。

 グリフォンもあの時の個体とは異なり、やる気満々といった様子である。

 流石にあの時のグリフォンには驚きましたからね。誰でも彼では無いというのは少しばかりホッとしました。


 やはり特殊過ぎただけだろうと頭を振り、前を向く。グリフォンは翼を大きく広げ、宙を駆けていた。そして、風を周囲に集めたかと思うと姿が綺麗さっぱり消える。今までの相手よりも熟練した姿の消え方に驚きながらも構えは解かない。



「〈清浄の風〉!」


「グルゥ……!」



 既に自分の役割を心得ているアイテールさんがすぐさまグリフォンの周りの風を消す。

 その事に気づいたグリフォンはアイテールさんを強敵と定めたのだろう。アイテールさんへと向けて旋回し、翼に魔力を纏いながら突進する。



「グルァアアッ!」


「フンッ!」



 一方のアイテールさんはそれを同じく魔力を纏った翼で迎え撃つ。すれ違うように交差した翼はアイテールさんは無傷。グリフォンも傍目から見て傷ついていないように見えた。それも当然だろう。グリフォンの体躯は全長2mあるアイテールさんの4倍はあるのだ。例え傷つけられていたとしても、視認することはまず不可能のように思えた。

 そして、何を思ったのかグリフォンはそのまま宙を駆け、こちらへと向かってくる。

 どうやら今度は私達に狙いを定めたようだ。それが先程の打ち合いの結果のようにも思えた。

 恐らく、流石にアイテールさんには勝てないと考えたのでしょうね。


 負け犬には負けないと早速魔力糸を練り上げ、向かってくるグリフォン目掛けて幾本もの粘着質な魔力糸を投げ付ける。



「〈繭〉になーれ!です!」


「グルッ!」



 すると、大したことは無いと言わんばかりに鼻で笑ったグリフォンは嘴の先に風の玉を作り出し、飛んでくる魔力糸にぶつけた。

 途端に弾け飛ぶ魔力糸にちっと舌打ちをし、すぐさま神様の方へと避ける。それが一番安全な回避場所だと知っていたからだ。



「神様!」


「了解!」



 すぐさま意図を悟った神様が剣を構え、向かってくるグリフォンの巨大な鉤爪目掛けて走りながら右下から振り上げる。

 斬れ味の良いその剣はまるでバターでも斬るかのようにグリフォンの鉤爪を切り落とした。



「グルァッ……!?」



 グリフォンは目を開き、体を怯ませる。そこへ空が上空から頭を揺らすようにかかと落としをくらわせた。

 大きな体を持っていたとしても、脳を揺らされればたまったものではない。また、通常の攻撃よりも少しは足止めができるというものだ。そこへ追い討ちをかけるようにアイテールさんが翼に魔力を纏わせ、首元へと飛来する。クラクラと揺れる頭でも流石に命の危機は分かったのか、タイミングよく頭を下げて躱した。

 それを見てアイテールさんは垂直に空を登る。その様は鳥というよりも戦闘機のようであり、鳥に不可能な動きのように思えた。どうやら翼に魔力を纏い、地面へと垂直に放出することで可能としているようだ。

 一定の高さまで上がりきるとすぐさま方向転換し、今度は頭を下に向ける。真っ直ぐに落下するように降りたアイテールさんはグリフォンの頭へと翼を叩きつけた。魔力ののった一撃は確実にグリフォンにダメージを与える。



「グァッ……!?」



 目が飛び出るどころか、白目を向いたグリフォンは頭を不規則に揺らすと、体を横に倒した。

 ドッシーンッ!と土煙をあげながら倒れ込んだグリフォンに皆で近寄る。



「まだ死んでませんよね?神様、トドメをお願いします。」


「え。いや、ここはプティにお願いしたいかな。」


「そうだよ。姉さんがトドメを刺して。そうすれば、また進化出来るんじゃないかな。そろそろレベルがMAXになりそうだと思うんだよね。」



 美味しいところだけを奪うようで心苦しくて空を見る。空は安心させるような笑みを浮かべて頷いていた。

 それでも尚、渋っていると今度はガイアさんとアイテールさんが降りてきて口々に話し出す。



「早くしないと起きる。」


「うむ!こういったものはそれ相応の相手がすべきだ!

 そして、今回はワシらではなくヌシだ!我らが父が言うのであれば間違いあるまい!」



 ガハハッと笑うアイテールさんに深く考えるのも馬鹿らしくなり、頷く。白目を向いた目に向けて鋭くとがらせた魔力糸を突き刺す。



「グァ……。」



 目に突き刺さり、呻くグリフォンにより奥まで突き刺した。それでもグリフォンから抵抗を感じ、何かないかと考える。一先ず、闇属性を魔力糸に纏わせると、魔力糸は闇の糸ではなく、闇属性を持つ糸に変化したようだ。それは触れたものから消滅させる破壊の糸。



「グァアアアアアッ……!?」



 急所を抉られる感覚に耐えられなかったのだろう。目を覚ましたグリフォンはのたうち回ったが、やがて動かなくなった。倒せなかったらどうしようかと思っていただけにホッとする。

 そこへ神様がうかがうように話しかけてきた。



「プ、プティ……?なんでそんな方法で倒したのかな……?」


「……?これが一番確実だと思ったので。」


「そっか……。僕は君の常識が心配だよ……。」



 どうしてそんな事を言うのだろうかとぼんやりと思いつつ、倒れたグリフォンが消え、代わりに現れたキラキラと輝く宝箱に目を向けた。そこで、そう言えばとふと気になったことを思い出し、ガイアさんに話しかける。



「あの、ガイアさん。ちょっと気になることがあるんですが。」


「何?」


「さっきのグリフォンのお顔って本物なんですか?」



 もし剥がせたなら剥がしたかったという気持ちを込めて尋ねると、ガイアさんは頷いた。



「ええ。あれは本物。ここでは珍しいことに。」


「そうですか。ありがとうございます。」



 スッキリしたとニコリと笑って感謝を伝えると、珍しくガイアさんは照れくさそうに頷いた。感謝を言われ慣れていないのかもしれない。

 なんとなく微笑ましくなっていると、神様が不思議そうに首を傾げた。



「うーん。何なんだろう。そのプティの妙なこだわりは。」


「いいじゃないですかー。気になったんですよ。少しだけ。」


「そうだよ。そんな事を気にするなんて神様は器が小さいね。」


「今のってそこまで言われることだったかな!?」



 空からの評価に神様がツッコミを入れると、空は真顔でうんと頷いた。それを見た神様が頬をひきつらせたのは言うまでもないだろう。

 神様の様子を見てニヤリと笑った空は神様の反応が分かっていてあえて口にしたようだった。

 まあ、神様をからかうのは楽しいですからね。分からなくもないですが。


 ほんの少しばかり空に神様をとられたようななんとも言えない寂しさを覚えたが、気のせいだと言う事にして今度こそ宝箱に向き直る。アイテールさんはその上にとまってジーッとこちらを見ていた。



「アイテールさんが開けますか?」


「否。ワシではなくヌシが開けるべきだろう。

 ヌシは自分の弱さを理解し、他者の力を自分の強さだと驕ることも無い。少々自己肯定感が低いのが欠点だが、それは若さ故。伸び代があるという事だ。

 これからの未来あるヌシにこそこれは相応しい。故に、かつての番人たるワシはヌシを認めよう。我らが父の愛し子であるだけでなく、将来のパートナーたりえる事を。」



 アイテールさんは言いたいことは全て言ったとばかりにそこから離れ、小さくなって私の肩に乗る。早く開けろと言わんばかりに肩をつつくアイテールさんに従い、宝箱を開けた。

 中からは光が溢れ、一対の翼が現れる。



「これは……翼、ですか?」



 純白のそれは私がいつか作り出した翼よりも天使様の物のようで。ほぉ……と感嘆のため息が思わず溢れるほどには気づけば虜にされているのが自分でも分かった。

 触れられるほど近くにまで寄り、触れる一歩手前で躊躇する。

 これは、本当に私が触れてもいいものなのでしょうか……?


 何度も手を前へ出しては戻しを繰り返していると、隣から肩を掴まれた。パッと振り向くと、そこには空がいた。



「姉さん。良いんだよ。あれは姉さんのだ。」


「空……。でも、」


「でももへちまも無いでしょ。あのアイテールが良いって言ったんだ。それ以上の躊躇は彼の信頼を裏切ることになる。」



 空に言われてアイテールさんを見る。いつの間にか移動していたアイテールさんは珍しくガイアさんの頭の上に乗ることに成功しており、そこから私の方を見て頷いていた。


 そこでようやく決心がつき、前を見据えて翼に触れる。

 ゆっくりと伸ばされた手。それが翼に触れた時、頭の中に聞こえてきたのは機械的な女性の声だった。



《貴女は何を望む?》


(望み、ですか?)



 淡々とした声に咄嗟に返せたのは戸惑いの声。しかし、それは向こう側にとっても想定内のものだったようだ。



《はい。私は勝利をもたらすもの。多少分野が違えど、成功に導く事など難しくはない。》


(……では、貴方に叶えてもらう望みはありません。)



 淡々と返ってきた答えに私は否と返す。それは私の願いに反することだからだ。

 しかし、当然と言うべきかそれでは相手も困るのだろう。



《いいえ。我が主となるのであれば答えて頂く。》



 困惑しながらも有無を言わせない声にどうしたものかと考える。

 ただ、この人も自分の役目に忠実であろうとしているのは何となく分かった。だからこそ、自然と言葉が漏れた。



(では、言い換えましょう。確かに私には願いがあります。それは望みとも言えるものでしょう。)


《では、それを》


(いいえ。これは私が叶えねば意味の無い願いなのです。)



 何故なら、私の願いは海を目覚めさせる事だからだ。

 今は色々と転がって神様を皆の神様にするという方向に行動しているが、実際はただ神様のいい所を知ってもらいたいだけ。別に願いなどではなく、私は神様を自慢したいだけのただの子どもなのだ。

 うーん。分かっていたとはいえ、やはり字面にするとなかなかにイタイ子ですね。私。



(私の願いはですね。私にしか叶えられないものなんですよ。なので、貴方の問いには答えられません。)


《何故?私に触れるものは皆、力を求めた。貴女もそうではない?》


(それは大変に不服ですね。私は借り物の力なんて要りません。いつか消え去るような力なんて自分の力では無いんですよ。)


《それはおかしい。貴女は借り物の力を使っている。それでも私の力は要らないのか?》



 そこまで言われてそれもそうかと納得する。確かにこの体は借り物だ。神様から与えられた偽物の体……。

 ふとようやくこの人の事を理解する。単純にこの人は力が欲しいと言われたいだけだったのだ。自分を使って欲しい。道具ならそういった願いもあるのだろうから。

 ……うーん。あまり、その手の願望は急ぎではないんですよねぇ。


 考え込みながらも何とか答えを出す。それは……



(では、私を神様の隣に立てるような女性にして下さい。)


《はい。……は、い……?》



 ……なんとも欲まみれな答えだったとだけ言っておこう。

次回、久しぶりのステータス


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アイテールさんに再度の活躍が?! 止めはプティちゃんでしたが…エグい(・・;) 確実な方法がこれしかないとはいえ… [気になる点] この宝物は…もしかして「ニケ」(アテネの手に乗っている…
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