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70話 ダンジョンへ

こんにちこんばんは。

タイトルを考えるのが面倒くさくなった仁科紫です。


それでは、良き暇つぶしを。

 あの不思議な空間でアイテールさんを解放した後。私たちはそこでようやく1時間が経過しようとしていることに気づき、慌てて展望台から降りた。尚、門番達は未だにじたばたともがいていたとだけ言っておく。

 そのうち解けると思いますよ。……多分。きっと。


 そうして地上まで降り、アイテールさんが封印されていたであろう展望台の上空を見上げる。

 そこには何も無いが、灰色の空が少し明るくなったように思えた。



「これでダンジョンにも行けますね。」


「えっ。まだダンジョンに行く気だったの?」


「元々の予定でしたから。どうせなら行ってみたいです。」


「うん。そうだね。……あ。そうだ。どうせ行くなら最下層を目指さない?ボクらなら最下層まで行けるはずだよ。」



 背中に抱きついて離れない空は今にも鼻歌を歌い出しそうな程に機嫌がいい。よっぽど私にくっついたままでいいと言われたのが嬉しかったようだ。

 あの後、結局神様のお願いに関しては一部だけ了承することにしたんですよね。そうしたら、当然のように空も自分のお願いを一つ聞いて欲しいと言われたので了承してしまったんですよ。

 え?理由?可愛い妹の、空のお願いですよ?聞かないわけが無いですよね?そのお願い自体も可愛いものでしたし、やはり空は神様とは違っていい子なのです。


 お願いしてきた時の空の様子を思い出し、ホワホワとした気持ちで和んでいると前を歩いていたガイアさんが振り向いて頷いた。



「私もその意見に賛成。あれは忌々しき結界。一度は破らないと気が済まない。」


「分かるぞ!姉殿の気持ちもな!あれは快いものでは無い故に!」


「鳥になってもうるさいなんてなんて傍迷惑。置いて行きたい。」


「お、置いて行くのだけはやめてくれ……!」



 それだけは勘弁と騒ぐ鷲の姿をしたアイテールさんにガイアさんはそっぽを向く。やはり2人の相性は良いわけではなさそうだ。

 とはいえ、ガイアさんとアイテールさんも乗り気ということでこれで決まりかと神様を見る。神様はイマイチ乗り気ではないようでどうしようかと悩んでいる様子だった。



「うーん。でも、僕らってほら、アレだしさ?大人気ないと思わない?」


「思わない。後、何を言いたいのかも分からない。」


「ガハハッ!姉殿!分かっていて責めるような事を言うでない!

 父殿もであるぞ!ワシらは既に旧神ではない故に、この世界のことなど気にすることもなかろう!」



 ガハハと能天気そうに笑いながらもその実、瞳の奥に暗いものが見え隠れしているアイテールさんに背筋がひやりとした。

 アイテールさんも、流石に怒っているようですね。……というか、神様だった人にそれだけの感情を覚えさせるって何をしたんですかね?そこが凄く気になるんですが。恐らく、封印だけじゃないと思うんですよ。とはいえ、聞くのも悪いですし、そのうち明かしてくれるのを待つしかありませんね。


 考察している間にアイテールさんの言うことに感化されたのかは分からないが、やがて神様はため息をついて頷いた。



「仕方がないね。ここで僕が頷かなくても勝手に行ってしまいそうな雰囲気が君らにはあるし、今回は皆で最下層まで行くことにしよう。」


「了解です!」


「そう来ないとね。」


「腕がなる。」


「うむうむ!楽しみだな!」



 ガイアさんの頭に止まったその場でバサバサと翼を羽ばたかせたアイテールさんを嫌そうに見た後、すぐさまガイアさんはアイテールさんを叩き落とした。

 流石にやりすぎではないかと見ていると、ケロリとした表情のアイテールさんがすぐさま宙を飛び、今度は神様の肩に乗る。神様は苦笑した後、その行動を黙認したようだ。これ以上は流石のアイテールさんも落ち込むと判断したのかもしれない。実際によく見るとアイテールさんの目が若干濡れて光っているように見えなくもなかった。

 神様が何も言わないのでしたら……まあ、今回は私も見逃しましょう。



 ・

 ・

 ・



 ようやく辿り着いた冒険者ギルドでは天空の街のときよりも混雑していた。まだダンジョンは開いていないようだが、開くのを待っている人がいるようだ。



「もう間もなくご入場頂けます!大変長らくお待たせ致しましたが、並んでその場で待機して下さい!」


「やっとかよ。」


「ようやく入れるのか。メンテナンスにしてはいつもより長かったな。」


「理由は何だったのかしら?結局よく分からなかったわね。」



 奥から出てきた受付嬢の言葉にもうすぐだと楽しみにしている者もいれば、何故待たされることになったのかと疑問に思う者もいる。

 そこへ優香さんがギルドの奥から姿を現した途端、何故こんなところにと困惑の声が上がった。……って、本当にどうしてこんな所に居るんでしょう?



「こんにちは。ヘパイストスファミリアのサブマスター、優香です。この度は我がギルドの都合によりダンジョンを閉鎖する事態となり、大変申し訳ございませんでした。」



 流麗にお辞儀をする優香さんにあちこちでほうっとため息をつく音が聞こえたが、当然そういった者だけではない。苛立たしげに舌を打つものもおり、一部からは刺々しい視線を集めていた。



「都合だァ?また素材の独り占めでもしてたんじゃねぇの?」


「そうよそうよ!ダンジョンは皆のものじゃない!予告もなく急に閉鎖なんてしてお詫びも無しなんて有り得ないわ!」


「はぁ?黙って聞いてたらお前らこそ有り得ねぇよ!優香さんはそんな人じゃねぇ!」



 優香さんの悪口を言うもの、庇うもの、傍観するものと見事に分かれたその場に咳払いの音が聞こえた。音の元は優香さんだ。

 一斉に言い争っていた人々も含めて優香さんを見る。優香さんはそれに気を良くしたのかニコリと綺麗な笑みを浮かべた。



「庇って頂くのも嬉しく思いますが、勿論そうお思いになるのも無理はありません。

 ですので、今回はこの場にいる皆様にお詫びとして金貨5枚をお支払い致します。」



 その金額にどれほどの価値があるのかは分からないが、一瞬静まり返ったその場がすぐさまざわざわとした雰囲気にのまれた事からしてかなりの大金なのだろう。

 一部では話し合う姿も見られ、何処か探るような目付きで優香さんを見る者もいた。

 でも、その気持ちも分かりますね。まるで、探られたら痛いものがあるかのような振る舞いをあえてしているようにも見えますし。……何かを炙り出すための罠のようにも見えます。もう少し観察してみましょう。


 ジッと優香さんを見る。それはこの場のどの人も同じような行動をとっていただろう。

 目を弧にして笑う優香さんの姿は見ているものを嘲笑うかのような薄気味悪さも感じた。



「その代わりと言ってはなんですが、これ以上この件について騒がないで頂きたいのです。」


「なんでだ?ヘパイストスファミリアなら別にこの程度噂になったところで問題はねぇだろ。」



 ある意味当然とも言える質問に優香さんは途端に頬を染め、先程までの態度はなんだったのかと言いたくなるほどに言い難そうに口を開いた。



「じ、実は、ダンジョンの奥深くで今までに見た事のないほど巨大な魔石を我がファミリアの一員が見つけまして、それをマスターのプレゼントにと……。誰にも先を越されたくありませんでした。

 見つけられない可能性を知ってはいたものの、可能性があるならば0ではございませんから……私事で申し訳ございません。マスターに知られたくもございませんでしたので、無理を承知でお願い申し上げております……。勿論、今回お支払いする料金も私財からですので、深く勘ぐらないで頂けますと……。」



 自信なさげな言葉にその場に居たものたちは、毒気が抜かれたかのように口々にもうこんな事はしないようにとだけ言って開かれたダンジョンへと進んでいく。

 ……まあ、あれが真実であれ、嘘であれ、女性が恥ずかしそうに赤裸々に語るというのは人の心に響くものですからね。


 彼女は人心掌握に秀でているのだろうと心の中で思った。



 ・

 ・

 ・



「これでラスト!なのです!」



 魔力糸を首に巻き付け、引っ張ることで首を落とす。最後の一体だったワシの頭の皮を被った鳩は地面へと落ちていった。

 ここはダンジョンの30階層。このダンジョンは空をテーマにしているらしく、空を飛ぶ敵が多い。翼を持つ猫が出てきた時は可愛すぎたのは言うまでもないだろう。

 あれは、倒すのがなかなかに拷問でしたねぇ……。


 ミーミーと鳴く可愛すぎる子猫が全く可愛くない変貌を遂げたのを思い出しながら後ろに居る神様へと振り向く。

 そこには何故か頬を引き攣らせた神様がいた。



「あれ?どうしました?」


「どうしました?じゃないよね!?なんでわざわざ鷲の頭との境目を狙って攻撃するのかなっ!?」



 あたかも私がおかしいのだと言いたげな神様にえーっと頬を膨らます。神様にツッコミをされるようなことをした覚えはない。なんなら普通のことですらあると私は思うのだが、神様はそう思わなかったらしい。

 ……まあ、意外と楽しかったからーなんて理由だったりするわけですが、そこは黙っている方が良いでしょうし。


 うんうんと内心で頷いていると、その考えを読むかのように神様はジト目で私を見た。



「……まさか、面白かったからなんて言わないよね?」


「え。そんな訳ないじゃないですかー。考えてもみてくださいよ。面白がってそんな変な事をする人、います?」



 実際にここにいるとかは考えてはいけない。むしろ、これは私にとって意味のある行動だったのだと主張する必要があるのだ。そうでもなければ神様は騙せ……コホン。信じてくれそうにありませんからね!


 ニコリと自然ないつもの笑みを作って神様を見る。神様は尚も訝しげに私を見ていた。



「本当かな?君の場合、到底そうとは思えないんだけど。」


「本当ですよ?ほら、皮の付け根ってことは即ち、急所でもある訳です。ならば、狙うのは当然でしょう?」


「そう?……まあ、君が言うなら信じようかな。」



 それにしてはどんどん綺麗に鷲の頭だけを切れるようになっていたけどという神様の独り言は無視し、少し離れたところで周りを警戒していた空に声をかけ、先へと進む。

 全部で100層あるらしいですからね。頑張りますよー!

次回、ダンジョン攻略なるか!?


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。


〜2024/03/03 00:08 人心把握→人心掌握に訂正する誤字脱字報告を適用しました〜


誤字脱字報告をして頂き、ありがとうございます!

人心把握ってなんでしょうね?(すっとぼけ)

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― 新着の感想 ―
[一言] 2人の旧神の母親は一体・・・・・・・・・・?
[良い点] ダンジョン突入!さあ、(首を)狩りまくるぞ~!! 空ちゃん、カワイイですね♪それに引き換え神様は… [気になる点] 女性の涙は、武器にもなるのです。そして、全てを曖昧にしてしまう…ホント…
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