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私、神様推しです!〜信者(自称)の恋模様〜  作者: 仁科紫
序章 記憶喪失な私と神様
7/212

7話 目覚めの朝は刺激的に

こんにちこんばんは。

やっぱり趣味で書くくらいが丁度いいなと思う仁科紫です。


それでは、良き暇つぶしを。

 パチリと目を開けた神様の方をじっと見つめる。身体を起こし、伸びをした神様は目の前でふわふわと浮かぶ私を見て目を見開いた。



「う」


『う?』



「うわぁああああっ!?」



 驚き、慌てすぎたらしい神様は後ろにずささっとベッドの端まで下がると、勢いがつきすぎた神様は頭を打ちつけ、「痛い…」と涙目になっていた。


 くふふ。『寝起きドッキリ!神様を驚かせよう大作戦Part1』だいせいこーですね!

 いやぁ。練習し続けていれば案外何とかなるものです。今となっては自由自在にふわふわっと飛び回り、魔力の糸で出来た翼さえもパタパタと動かすことの出来るこのクオリティの高さ!

 神様も驚いてくれること間違いなしだと思ってはいましたが、ここまで上手くいくと私も嬉しくなるというものですよ!


 そうして私が心の中でホクホク顔になりながら神様の方を見ていると、神様はようやく現実が目に入ったのか、目を擦っては私を見て…を繰り返していた。

 おや?どうやら、先程驚いたのは別案件だったようですね?



「あれ?君、飛べたっけ…?」


『おはようございます!神様!

 神様がお休みの間に練習しまして。ここまで飛べるようになったのですよ。』



 私が挨拶をした事で朝の挨拶もしていない事に気づいたのか、神様は少し気まずげに『おはよう』と言うと私をじっと見つめ始めた。

 えっと、そんなに見つめられると流石の私もちょっと…。

 ……はっ。こういう時こそ、からかうチャンス!



『か、神様?そんなに見られたら…エンプティ、恥ずかしくなっちゃう…。』



 神様から見て斜めに身体を動かし、羽で顔を覆うように移動させる。

 そして、ここで目を伏せ気味にすることで恥じらい度をアップ!

 さぁ、神様!純粋な乙女を見つめたことに対する感想を…



「…魔力を可視化?いや、そんな能力は……」



 ……何やら別のことに集中している様子の神様は残念なことに私を見ているようで見ていませんでした…。

 私の!恥じらい姿!無駄になった…!!…うぅ。ちっくしょーっ!なのです!!


 ……はぁ。こう言っていても仕方がありませんね。どうやら、神様が見ているのは私の翼のようですし、背中を見せてあげますか。こうなっているんですよーっていうのが分かれば、神様も満足してくれることでしょう。



「ここがこうなって…あそこが…へぇ?面白いな。」



 尚も背中を…というか、羽を凝視し続ける神様に振り向きたくなる衝動を抑えて耐える。


 み、見た…いえ、ダメなのです。神様の邪魔をするなんて、そんなこと私には出来ないのです…。

 したら嫌われるしたら嫌われるしたら嫌われるしたら嫌われるしたら嫌われるしたら……



「……ーぃ…」



 嫌われるしたら嫌…



「おーい?大丈夫?」


『ハッ!?われるしたら…!?』


「いや、どうしたの?本当に。もういいよ?」



 そう言って心配そうに私の顔を覗き込んだ神様は私を持ってくるりと回転させ、向かい合う形にした。


 あ。反射的に唱えていた言葉が出てしまいました。自分を誤魔化すというのも難儀なことですね。全く。

 ……え?私だけ?…す、素直ハ良イコトッテ何処カデ聞イタ気ガシマスッ!……多分。きっと。


 それはともかく、と神様に向き直る。今は言うべき言葉があると思うのだ。

 悪いことをしたら謝る。これは常識ですよね?



『改めて、おはようございます。起きた瞬間から私の背中を眺めるなんて神様は素敵ですね。

 よっぽど私の背中を気に入りましたか?今日は一日背中を向いていましょうか?ふふふ。』



 気分は死刑宣告を述べる氷の女王様ですね♪

 さぁ、常に一緒に行動する人形から背を向けられるという珍事に変な人だというレッテルを貼られるか、素直に謝るか選びたまえ!です!



「お、おはよう...もしかして、怒ってる...?」



 はいっ!アウトーっ!一言目で謝らないなんて乙女心が分かっていません!

 故に、本日は常に神様に背を向けることが確定致しました!!幾ら何でも許可なく乙女の背中をじっと眺め続けるなど言語道断!イケメンさんとして恥を知れっ!なのです!


 クルリと神様に対して背を向けてあくまでも冷静に口を開いた。



『ふふふ。今日は一日、背を向けてますね?神様♪』


「なっ!?なんで!?」


『不躾にジロジロと眺めたことに対する嫌がらせです♪我慢なさってくださいね?』


「あっ…」



 どうやら、今更ながら気づいてくれたご様子。ふふふ。だがしかーしっ!ゆ・る・し・ま・せんっ♪



「ごめん。ほんっとーに、ごめん。」


『嫌です♪さぁ。今日は何して過ごしましょうかねぇ?』



 真剣な様子で謝る神様を放置し、うきうきと翼をはばたかせて1階へと降りるために部屋の出口へと向かう。


 そう簡単に許してあげられるほど私の器は広くないのです。あと、私の背中もそんなに安くありません。幾ら神様が創った体だと言われようともこればかりは勘違いされては困るのです。

 なので、今日は一日…譲歩しても半日は背中を向き続けるのですよ。



「ちょっ…本っ当にごめんってば…!!」



 何やら神様が言っていますが…そうですねぇ。外に行こうにもよく分からないので、店の方でどうにか手足も動かせないか魔力の特訓でもしましょうか。


 こうして2日目の朝は始まったのでした。


 ・

 ・

 ・


 1階に下りると、そこはまだ暗かった。思ったよりもこの店には光が差し込まないらしい。

 何気に暗い中に置いてある人形って怖くないですか?私は怖いです。(注 自分も人形です。)


 さて、気を取り直して、昨日座っていたカウンターに座り、改めて今日何するかを考える。


 …ふむ。そういえば、前から表情を動かしたくて動かしたくて仕方がないんですよね。そう考えると、動く為に糸を一本胴体にまわして、もう一本は表情を動かす為に糸を顔に巻かないといけませんね。


 背中の翼を名残惜しく思いつつも解除し、より合わせた糸を胴体と顔にそれぞれ結びつけて浸透させる。

 この動作もかなり早くなったものですね。


 自画自賛しつつ、顔の方の糸に笑顔を作れと念じる。

 途端にぐにゃっと持ち上がる口角。だが、肝心なことを忘れていた。

 ここ、鏡がないからさっぱり分かりませんね。

 むぅ…。うっかりしていました。仕方がありません。鏡を探してきましょう。


 店のスペースから出て可能性がありそうな、まだ入ったことのない扉を探す。

 今の状態なら、表情に回している方の糸で扉を開けることが出来るので問題ありませんね。傍から見たら見事なポルターガイストって訳です。ふふふ。犯人はお人形だなんて誰も思いつかないでしょう。実に愉快です。


 そう心の中で楽しく笑っていると、何処からかちゃぷんッという水の音が聞こえた。

 …ん?水の音ですか?候補はお風呂、キッチン、洗面所、お手洗いの4箇所と言った所でしょうか。

 その4箇所のうち、音の出処が風呂場、洗面台、お手洗いの3箇所ならば鏡がある場所ですし、ワンチャン鏡があってもおかしくないですね。音のする方へと向かうこととしましょう。


 持ち上げた体でふわふわと宙を漂いながら進む私は徐々に大きくなる水音に疑問を持っていた。

 ちゃぷん…まるで、水溜まりに水滴が落ちるような音ですよね?更に、家主である神様が目に入るところには居ないのです。これはもしや…なんて思いませんか?


 そう思った私は頭を振って邪な思いを振り切る。

 いえいえ。有り得ませんよね。そもそも、さっきの今で反省することなくお風呂なんて…


 考えながらも順調に進んでいき、水音が聞こえる扉の前に到着した。そして、そぉっと中を覗き見る。


 そこにいたのは…残念なことにただの人魚さんだった。上半身は少女のように可愛らしい見た目でありながら、下半身は魚のような尾を持ち、窓から差し込む光に反射してキラキラと輝いている。耳の辺りには鰭のようなものが生えており、私と同じようなサイズのちょっとした人外さんだ。


 何処か神秘的でありながらも愛らしい雰囲気を持つその人魚さんはバスタブのふちに座っていた。

 そこで何をしているのかと見れば、バスタブから空中に水球を浮かせてはバスタブに沈め…と繰り返しており、先程の音の正体はこれだったようだとあたりをつける。


 はぁ。なんともファンタジックで素敵な光景ですねぇ。

 …ん?いや、ただの人魚ってなんです?私。幾ら何でも困惑しすぎでは?


 そう脳内で一人ツッコミごっこをしていると、ふと、人魚さんがこちらを見ていることに気づく。

 ん…?まあ、手でも振っておきますか。その場しのぎにはなるでしょう。


 ドアに伸ばしていた魔力の糸を右腕に巻き付け、浸透させるというもう慣れた動作を行い、手を振る。

 すると、人魚さんは何を思ったのか、私に向けてまるでこっちに来いとでも言うかのように尾を振った。


 うーん。どうしましょうか。君子危うきに近寄らず、という言葉があることですし、近寄らないのが一番なのでしょうけど…興味深いですね。

 よし。近づいてみましょう。そう悪いことは起こらないでしょうし。


 軽く考えてそう結論づけ、ふわふわと人魚さんの傍へと向かう。そうしてバスタブの近くまで寄っていくと、次の瞬間。気づけば何故かビシャっという音ともに自身の身体が濡れていることに気づいた。



「くすくす…。バカ!マヌケー!」



 人魚さんはよっぽど機嫌がいいのか頬に笑窪を作ると、私を指さして無邪気な子どもの…否。訂正。悪ガキの如くケラケラと笑った。

 あらら。やはりイタズラ目的でしたか。残念な方ですね。今どきの子どもでもやらないのではないでしょうか。

 これでは神様がこの場面を目撃してしまえばその時点でアウト。怒られるのはあちらなのです。やるならせめて、私に手を出させるような事を…


「?えいっ!」


 そう考えていると、私になんの反応もないことが不思議だったのか首を傾げ、宙を移動するとバスタブの方へ私を突き落とした。


 えっ。ちょっ…!?それは幾ら何でも不味くないですかねっ!?

次回、お友達


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 寝起きのイタズラ、大成功♪ 神様の落ち度…鈍いですね~(笑) 人魚さん、過激に登場!って過激すぎません?! [気になる点] 2回目は何をするのかな♪ あの笑顔、何か企む笑顔で見つめた…
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