65話 閉会式は和やかに
こんにちこんばんは。
見直しができていないので誤字脱字がある予感のする仁科紫です。(ココ最近ずっと)
それでは、良き暇つぶしを。
あれからもう少しで30分が経つ。
私たちは観客席であれこれと話しながら閉会式が始まるのを待っていた。
「でも、結局のところ、最後の騎馬戦は私たちの勝利という事でいいんですよね?」
ふと思い至った結論を口に出すと、神様が相槌を打つ前に空が口を開いた。
「うん。そうだね。こっちはヘラファミリアが残っていたから。」
「あの手つき、なかなかに鮮やかだった。」
「軽く一万点分の差はついているだろうね。後は他の競技の点数差次第かな。」
なるほどと頷いていると、そこへアナウンスが入る。ようやく準備が整ったらしい。
会場が暗くなり、フィールドの中央に2人の影が現れた。何かのコンサート会場のように真ん中にある舞台の上に立っている。
『皆さん、お待たせ致しましたー!これより!閉会式を行いますよ!司会進行は勿論!ヘスティアファミリアのマスター、ラパン・アルビーナと!』
『サブマスター、サルーラ・サラサーティ・フルフラリーとでお送りするわ。これで最後なんだから、しっかり目に焼き付けておく事ね。』
元気いっぱいのラパンさんと不敵に笑うサルーラさんが映るスクリーンに歓声が上がる。
人気者であることは分かっていたが、やはりこの2人組になった時が一番歓声が響いている。
『では、早速参りましょう!まずは賞状授与式から!』
『ユニーク、コスプレ、努力、最優秀選手、最優秀ファミリアの5つの部門があるわよ。』
『まずはユニーク賞ですね。ユニーク賞は独自の能力を活かした活躍をした人へと贈られます!』
『その人物とは……』
ダダダダ……と小太鼓を叩くような音がなり、会場中をスポットライトが照らし出す。
そして、ジャンッとシンバルが鳴らされた瞬間、ある一角にライトは当てられた。それと同時に真ん中のスクリーンには顔が映し出される。
『黒闇天ファミリアのオーダ選手です!』
『おめでとう。これで二回目かしら。なんだか毎回の事のように思えるけれど、相変わらずの活躍だったわ。』
何処か照れるように頭を搔くオーダ選手にあちこちから拍手が聞こえる。やはり、あの戦い方を見て文句を言うものもそう居ないということだろう。
「あれ?でも、騎馬戦ではあまり顔を見ていないような……。」
「惜しいところまでは残っていたよ。ただ、流石に上位ファミリアには勝てなかったみたいだ。」
「なるほどです。」
ふむふむと頷き、次々と発表される受賞者に拍手を贈る。コスプレ賞、努力賞はそれぞれ2人ずつ発表されていた。
中には見覚えのない人も居たが、コスプレ賞ではヘパイストスファミリアのマスターのアレクセイさんが受賞しており、周りは嬉しそうなのに本人は非常に不服そうなのが見ていて興味深かった。
『さて。最優秀選手賞に参りましょうか。』
『最優秀選手賞は……初出場のカオスファミリア、エンプティ選手よ。』
バンッと照らし出され、えっと首を傾げる私がスクリーンに映る。今私ってこんな顔してるんだなとぼんやりと思ったが、次の瞬間、戸惑いから思わず声が漏れた。
「そんなに私って何かしましたっけ……?」
「姉さん……?まさか、自覚なかったの……?」
横からため息をつくような声が聞こえ、あれ?とますます首を傾げると、どうやらこの声は会場中に聞こえていたらしい。あちこちからどよめく声が聞こえる。
『あはは……。流石にこの展開は珍しいですねぇ。』
『そうね。ここまで鈍感な子は滅多に見ないわ。』
その言葉にそう言われるまでのことを何かしただろうかと反対側に首を傾げる。
それに対してサルーラさんがギッと目に力を込めた。
『もうこんな流れだから言うけれど、貴方、色々とおかしいのよ!まず、玉入れ!貴方、何をしたかしら!』
何故かキレ気味のサルーラさんに取り敢えず、答えるだけ答えようと玉入れでしたことを言ってみる。
「えっと、玉入れをしましたよ?後、皆さんの攻撃を移動させましたね?」
『それだけだと思ってる……?』
何やらサルーラさんの後ろに般若が見える気がするが、きっと気の所為だろう。深く考えることなく頷くと、周りからも何やらブーイングのような声が聞こえる。
『あのねぇ。貴方、籠を止めていたし、壊しもしたでしょう?』
『あれは凄かったですよねぇ。
それに、巨大玉転がしでも活躍も凄かったです!一人でコロコロ転がしていましたからね!』
『障害物競走も良くあれだけ赤裸々に語れたわよね。
あの優香さんに一回目で止められることなくゴールできる人なんてそう居ないわよ。』
『優香さん、初めての人には厳しいですからねぇ。
そして、最後の騎馬戦。貴方、馬役だったからーとか特に活躍は無かったとか思っていそうですよねぇ。』
ほわほわと言うラパンさんに思わず頷く。それ以外に何かあるんでしょうか?
『大ありよ!ただ騎手だけが実力があっても騎馬戦では勝てないのよ!……はぁ。もういいわ。取り敢えず、貴方は喜んでおきなさい。後で!みっちり!授業してあげるから!』
『あはは……。では、続きまして最優秀ファミリア賞に行きますよ!最優秀ファミリア賞は……。』
再びダダダダ……となり始め、ジャンッとなる。照らし出されたのは神様だった。
『最優秀ファミリア賞はカオスファミリアよ。
流石、今日のダークホースね。到底800位だとは思えないくらいの活躍っぷりだったわ。』
何処か呆れるようなサルーラさんの声を聞きつつ、神様に抱きつく。勿論、顔に。
「わぁ!神様!おめでとうございます!」
「へぷっ!?」
「って、違うよ?姉さんもだからね!?」
はい?と不思議に思いながらも神様の顔から離れないでいると、いつもの如くベリッと剥がされた。
そして、不満そうな神様が私を見てくる。
「そうだよ。プティもカオスファミリアの一員なんだろう?勿論、ガイアもね。」
神様の声にハッとしてガイアさんを見る。そういえば、カオスファミリアが受賞したんですもんね!確かにそれは皆で喜びを分かち会うべきですよ!
「はっ!そうでした!ガイアさん!空!おめでとうございます!」
「ふふふ。貴方もおめでとう。
……記念にする。プティ、ナイスファイトだった。」
「姉さんこそ、おめでとう。ボクは姉さんと一心同体だからね。」
ワイワイと皆で喜び合い、周りからの拍手も収まってきた頃、咳払いの音が聞こえた。
『はーい。では、続きまして、いよいよ点数発表兼結果発表を行いますよ!』
『ええ。勝利の女神はどちらに微笑んだのか。
スクリーンを見なさい!』
アナウンスの通りにスクリーンを見る。そこにはこれまでの経過が表示されていた。
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赤組 白組
午前
玉入れ 40256-49903
200m走 11660-10280
陣取り合戦 49900-48100
巨大玉転がし 0-500
計 101816-108783
午後
棒倒し 50475-33245
障害物競走 49000-46000
応援合戦 29600-36050
騎馬戦 39580-47100
計 168655-162395
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『午後の部は赤組に微笑んだようね。』
『そして、午前の部、午後の部を通しての接戦の末、優勝は……!』
パパラパッパパッパパーッ!とトランペットの高らかな音が鳴り響き、遂に結果が発表される。
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赤組 白組
総計 270471-271178
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『白組に決定です……!』
途端にパーンッと火薬が破裂するような音ともに辺りに紙吹雪や紙紐が舞った。
周囲の人々からは歓声が上がり、白組の人達は抱きしめ合ったり、飛び上がったりと嬉しそうだ。一方の赤組はというと、案外和やかな雰囲気で拍手をしている。
……まあ、遠くの方で見えたトアさんは悔しそうでしたが。
『これにて今回の体育祭イベントは終了とします!』
『今回の進行はサルーラ・サラサーティ・フルフラリーと。』
『ラパン・アルビーナでした!
次回のイベントは5月下旬の魔物狩り祭です!お楽しみに!
あと、今回の報酬は一週間後に各ファミリアのマスターに届けられます!確認を忘れないように!』
こうしてファミリアとしたは初めてのイベントは終了したのだった。
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「「カンパーイっ!」」
今、私たちは打ち上げと称して神様のお店で料理を囲んでいた。やはり、大会の後と言えば祝勝会ですよね!
果実水の入ったグラスを輪っかに傾け、肉汁溢れる鶏肉を楽しんでいると、ふと笑いが込み上げた。
「ふふふ。それにしても、よく勝てたものです。これで順位とか上がるんですかね?」
「そうだね。とはいえ、4月の結果を含めての結果だから、そこまで上がらないとは思うけど。」
「なら、今見る。」
「うん。見よう?どうせ、もう出てるんだろうし。」
ガイアさんと空の言うことも確かだと早速ファミリアのページを確認してみる。そこには319位という文字が踊っていた。
「か、神様……!319位になってますよ!……上がりすぎでは!?」
驚きのあまりに声が上ずり、おかしいと何度も確認してしまう。いえ、だって800位から319位ですよ!?流石にないですよね!?
しかし、驚く私とは違い、空とガイアさんは不満そうに顔を顰める。2人にとって納得のいかないものだったようだ。
「えー。もっと上まで行けると思ったんだけど。100位くらい?」
「いえ。それこそ20位くらい行っても良かったはず。何せ、今回の祭りで一番。おかしい。」
「いや、だから、これが4月のイベントだったらまだ分かるけど、もう5月なんだよ。既に2つのイベントが終わってるんだから、これくらいが妥当だよ。」
神様の正論に更に眉を寄せる2人にとってはやはり納得しづらい事のようだった。私としては十分だと思うんですけどね。……次を頑張れば良いだけですし?
その後も2人は眉を寄せたままだった。
「まあまあ!そんなもんだって!ファミリアってのはな!」
……と、聞き覚えのある声が響くまでは。
ギョッと一斉に入口へと視線を向けると、そこにはやはりアキトさんが居た。
「な、なんでここに居るのかな……?」
口元を引き攣らせる神様にアキトさんは二ッと笑ってイタズラが成功した子供のように嬉しそうに言った。
「秘密だ!まあ、我らは魂が惹かれ合うんだろうさ!」
「そんなわけあるかー!」
「部外者却下。即座に去るべし。」
「はぁっ!?なんか、おチビちゃんの当たりが強くね!?前はそうでも無かったよな!?」
「今日は貸切なのです!出てけですよー!」
「嬢ちゃんまでもか!」
助けてくれとばかりに神様に視線を向けるが、神様は苦笑いを浮かべるだけで助け舟を出す気はないようだ。
こうして祝勝会は何故かアキトさんを追い出す会に変わり、それはアキトさんを連れ戻しにデュランさんが来るまで続いたのだった。
次回、掲示板回
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。
〜2022/03/10 07:49 順位の表記がおかしかったので訂正しました。〜




