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私、神様推しです!〜信者(自称)の恋模様〜  作者: 仁科紫
序章 記憶喪失な私と神様
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6話 夜更かしは人形の特権

こんにちこんばんは。

メモで消してしまった文をその時なら戻せると後日知って悲しくなった仁科紫です。

あはは。知ってたら消してしまったステータス欄を戻せた...( = =) トオイメ


それでは、良き暇つぶしを。

 神様に言われた通りに脳の辺りを意識してみる。

 何か意識して引っ張れるものはないかと探してみたが、よく分からない。



『むむむ。なかなかに難しいのです。』


『まあ、簡単に出来るなら誰も苦労はしないからね。僕はここで作業をしているから、色々と試してみなよ。』



 そう言って神様は何も無いところから針と糸、何かの作りかけらしいヒラヒラとした布を取り出し、手際よく縫いつけ始めた。


 ふむ。私の今着ている服もこうして出来たのでしょうか。


 チラリと目線を下に下ろそうとするが、目に入ったのはスカートの部分だけ。こういう所で自由が利かない体に嫌気がさした。


 窓に写っていたお人形さんはセーラー服のような紺色のワンピースを着ていたので、恐らくそれを来ているのでしょうが…。


 全身を見れない悲しさに浸ったものの、神様の視線を感じて慌てて魔力を感じる作業に戻る。


 さあ、頑張りますよーっ!神様のために!


 ・

 ・

 ・


 それからどれくらい時間が経ったのか分からないが、脳の辺りに確かに何か動かせるものがあることに気づいた。


 おっ。これが魔力とかいうものですかね?


 それをどうにかして動かせないかとひたすら意識して見ると、動かせることに気づいた。

 しかし、それは首から下へは動いてくれない。どうにかして動かせないかと意識し続けていると、頭の辺りから体の外へと出せることに気づく。


 あれ?…ふーん。そうですか。体が動かない以上、何か関係があるかとは思っていましたが、これが原因だったのでしょう。ならば、私がするべきなのはこの魔力とやらで強引にでも体を動かすことでしょうね。

 ん?そこは素直に飛ぶ練習をしろって?いえいえ。私としましては、『体が動かないなら飛べばいいじゃない!』的なノリはノーセンキューなのですよ。あと、単純に早く全身を見れるようになりたいです。


 ということで、頭から外へと出した魔力をこの体の肢体に巻き付け、動かそうとしてみる。

 まずは腕に巻き付け、上へ。僅かに浮いた腕は、ギシッと軋んでそこから先へと動くことはなく、すぐにだらんと落ちた。



『んー。これじゃなかったみたいですね。』


『そう簡単に出来たら誰も苦労しない…って、あれ?今、腕が動いていたような…?』



 思わずこぼした私の言葉を聞き咎め、窘めるようにそう言った神様は手を動かしながらも不思議そうに首を傾げた。


 おや。視界に入っていましたか。ですが、今は無視です。無視。


 それよりも、と魔力の操作に集中する。何がダメだったのかを考え、ふとふわふわっと漂っている魔力に目を向ける。


 …これ、強度が足りないということでは?そう考えるなら、強度を上げれば良いはずですね。

 ふむ。であれば、イメージするのは撚りあげた糸、でしょうか。人形と言えば操り人形というのが定番でしょうから。


 頭から魔力を細い糸のように撚りあげ、上から放射状に下へと下ろしていく。そして、右腕に巻き付け、魔力を浸透させるように意識すると、僅かに感覚が繋がったような気がした。


 ふむ。外からの浸透は可能なようです。これを起点に右手あーげてっとでも念じてみましょう。


 右手あーげて!


 すると、途端にピンッと挙がる腕。

 お?おおー!成功ではありませんか!



『な、何してるの...?』



 なお、現在神様のお言葉は無視する方向性です。


 次は頭上から分裂させるようにもう二本伸ばし、今度は右脚と左脚へ。同じく魔力を浸透させるように意識する…が。



『むぅ。弾かれますか…。』



 脚の表面から魔力を浸透させようとする度、何かに阻まれるかのようにパシッと魔力が霧散していく。

 体に浸透させることの出来る箇所に限りがあるのか、それとも脚には浸透させることが出来ないのかと原因を考え、確かめるために一度、右腕に浸透させた魔力の糸を切る。

 途端にだらんと落ちる腕。途切れた魔力を回収せず、そのままにして右脚と左脚に巻き付けて魔力を浸透させた。

 そして、伸ばされた脚に立つように命令を下す。


 起立っ!


 しかし、浸透はするものの、足は動かない。何がいけないのかと、ふと目に入ったどこにも繋がらない魔力の糸に注目する。


 もしや、魔力の糸は分散すればするほどに指示が通らなくなるのでしょうか…?

 糸が増えれば増えるほどに難易度が高くなるのは当然の事ですからね。魔力の浸透も、魔力が分散された結果、浸透させるのに十分な魔力がなかったと考えられますし。


 その考えに至ると、どこにも繋がらない魔力の糸を脚に繋げた糸へと撚りあげ、同じように願った。


 起立っ!


 その想いが通じたのか、勢いよくスタッと立ち上がる私。

 や……



『やりましたよ!神様!』



 嬉しくなってパッと神様の方を見上げ…ようとして、無理だったことを思い出す。


 足を動かせるようになっただけなんですよねぇ。そういえば。


 まあ、何はともあれ、そちらを向く。

 目をそちらへと向けると、神様は服に刺した針もそのままにポカンとしていた。



『神様!立てました!足が動いたんで…わっ!?』



 神様の方へと歩いていこうとして、バランスを崩す。


 あー…考えておくべきでしたね。普段、人間の身体とは足だけじゃなく、手などの体全体を使ってバランスを取りながら動いているのです。そりゃあ、転けもしますよね。


 失敗した。そう思いながら近づいてくる机の天板の衝撃に備えて目を閉じる。

 ところが、いつまで経っても衝撃を感じることはなかった。代わりに何か、暖かいものに包まれていることに気づく。


 ……暖かい…?


 不思議に思いながら、足だけではどうしようもなくされるがままになっていると、頭上から声が降ってきた。



「全く。足が動くようになったからってはしゃぎ過ぎだ。」



 おや?独り言のようになるからと、頭の中に話しかけてきていた神様が声を出すとは。

 よっぽど驚かせてしまいましたかね?それは失敗しました。次からは気をつけるとしましょう。

 でも、針仕事中にこれは危ない…って、針はいつの間にか針山に刺されていましたか。凄い早業ですねぇ。



『ふふふ。でも、一歩前進なのです。』


『うん。そうみたいだね。…そのやり方にはビックリしたけど…。』



 呆れたように神様は呟いていたが、私はそれを聞くことなく決心していた。


 完璧に動けるようになるまでは神様に頼りまくるぞ!っと。


 つまり、それまでが神様に持ち運んでもらえるタイムリミットなのです。終わりが見えて残念ではありますが…いえ。自分の足で歩けるようになる。即ち、神様についていけるようになれるのですから、喜ばしいことですよね!私、頑張るのです!


 ・

 ・

 ・


 そうして私が手足を動かせるようになってからかれこれ3時間。ようやく足だけで動くのにも慣れてきた頃。

 ふと窓の外を見ると空は赤く、室内は暗くなってきていた。それだけ長い間、立っては転けて神様に支えられ…を続けてきたかと思うとなんとも感慨深いものがある。



『あ...かなり暗くなってきましたが、神様のお時間の方は宜しいんですか?』



 ふと気になって尋ねてみる。


 こんなに遅い時間まで神様の時間を占有してしまって良かったのでしょうか?

 私の中にある知識に夜は各個人の自由時間とあるくらいですし、神様にも何かご予定があるかもしれません。


 そういった不安から来る質問だったが、それに対する答えは実にあっさりとしたものだった。



『うん。問題ないよ?……というか、君、ここが何処だか忘れてない?ここ、僕のm』


『神様のお店でしたね!そうでしたそうでした。

 追い出されるべきは私なのでしたね!神様。何処か泊まれるところを知りませんか?』



 神様の言葉にハッとなり、それ以上は聞きたくなくて慌てて神様の言葉を遮った。代わりに自分から捲し立てるように言うものの、自分で言っていてなんだか泣きたくなる。


 うぅ…分かってはいましたが、この街で知っている人が神様だけだからでしょうか?離れたく、ないです…。

 でも、甘える訳にはいきませんよね。厚かましい人は嫌われるのだと、私は知っているのですから。


 ところが、それを聞いた神様は予想とは異なり、不思議そうに首を傾げていた。



『どうして?君はここで生まれた人形だろう?ここを寝床に使っても構わないよ。あと、お金もないから泊まれないだろうし。』



 その言葉に、頭をガツンと殴られたような衝撃を受ける。


 ハッ!?そう言えば、私、無一文でした!?

 なんて事でしょう…。まさか、神様を頼らない以前に、頼らなければ生活すらできないだなんて…!

 仕方がありません。こうなれば、神様に頼って頼って頼りまくって、その恩返しに神様になくてはならない存在になってやるのです!



『はい!分かりました!神様!私、頑張りますね!』


『う、うん…。頑張る要素なんてあったかな…?』



 唐突に頑張ると言い出した私を、不思議な子でも見るかのようにボソリと呟いた神様の声も耳に届かず、そう決意したのだった。


 その日は結局、二階にあった神様のベッド横にあるサイドテーブルの上に座るようにして眠りに落ち…眠れませんね。

 目が冴えてしまって一向に眠れない私は、そういえば、神様は私に飛んで欲しかったのだということを思い出す。


 なんというか、まー出来そうにない事ですよね。


 すぐさま出来ないと断定しつつも、暗闇の退屈さから自然と飛ぶことについて考えていた。


 …飛ぶ、飛ぶ…体の質量を小さく…というか、マイナスにする…?

 いえ。現実的でないのは間違いありませんね。コントロール不可ですし、お空にさよなら間違いなしです。そんな危険は要りませんね。


 そうなりますと、考えられるのは…宙から吊り上げるように糸をコントロールすることか、地面に魔力の糸を伸ばして支えるか、と言った所でしょうか?

 …それとも、魔力って纏えば空を飛べたりするのでしょうか?うわぁ。謎理論ですね。


 突拍子もない事だと否定し、どうしたらいいのかとため息をつく。


 まあ、そう簡単には方法なんて思いつきませんよね。

 でも、魔力を纏う、ですか…こう、伸ばした魔力の糸を胴体にグルグルっと巻き付けて浸透、浮けっと命令したらどうなるんでしょう…?…やってみますか。


 足に繋げた糸を切って頭上で撚りあげ、今度は腰の辺りへとグルグルと巻き付ける。そして、浸透させるイメージをすると、強く願うのではなく、そっと祈る。


 浮いてください。


 すると、ふわっと浮き上がる身体。やったーっと喜ぶのも束の間の話で、直ぐに慌てることとなった。


 ちょっ、何処までふわふわと浮いてくんですか!?…ハッ!?そういえば、私、何処まで浮いて欲しいか言ってませんでした!?

 うわぁ。やらかしですね…。……そうです!今からでも止まってとお願いすれば、止まってくれるのではないでしょうか!?


 その場で停止!


 願うと同時にピタッと停止する身体。ひとまずの危機を出したことにほっと安心する。


 ふむ。案外、細かい指定がいるのですね。では、ゆっくりと机の上へと降りてもらいましょう。


 ゆっくり机の上へ着地して下さい。


 そう頭の中で指示を出すとゆっくりと机の上へ音もなく停止し、神様を起こすこともなく元いた場所へと着地できた。


 ふぅ。いろいろと焦りましたが、無事に着地ですね。

 そーいえばなんですが、この方法ってかなり不格好な気がしません?バンジージャンプでもしている気分です。…した記憶はないですが。

 どうせなら、肩甲骨辺りに魔力で羽を作るイメージをしてはどうでしょう?浸透させて、その魔力をぶわっと外に出して翼みたいに生やすんですよ。

 そうすれば、案外、天使のように飛べるかもしれません。翼の生えた人形…ちょっと可愛い?と思いますし。神様に気に入ってもらえるかもしれません。


 そこまで考えて、神様をチラリと見る。眠る神様の顔は穏やかで、なんだか可愛く思えた。


 ……まあ、実際、神様は神々しい程にイケメンさんですからねぇ。何をやっても様になるのです。

 だから…きっと、人気者なのでしょうね。それこそ、私が入り込む隙間なんてないほどに。


 ふと胸に込み上げた不安に慌てて蓋をする。


 いえ、神様は神様なのです。期限付きの関係ですし、元からよく知らない人だったんですから関係ありませんね。


 ふぅっと一息つき、気分を切り替える。これからは人ではなく人形のための時間なのだから。


 さぁ!神様を驚かせるためにもとびっきり可愛い羽を作って飛べるようになりますよーっ!


 こうして私が目覚めた日の夜はふけていくのだった。

次回、朝の驚かしタイム。


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。


〜2024/09/07 02:51 寄り→撚り、来ている→着ているに変更する誤字報告を適用しました〜

うーん。私のポンコツさが滲み出ている……。

報告していただき、ありがとうございますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] 歩けました。浮けるようになりました。 エンプティちゃんの進化が止まりません♪ [気になる点] 旗振りゲームとかはしました? [一言] 天使?降臨! …小悪魔では(笑)
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