55話 因縁はあちこちに
こんにちこんばんは。
登場人物が増えておりますが、また登場させるかは不明な仁科紫です。
51話(多分)を少し弄ったので報告しておきます。おおまかな流れは変わりません。
それでは、良き暇つぶしを。
『いよいよ最後の組、神様ランキング1位から12位の代表者が走るわよ。』
『ここだけは必ず隔離されるんだよね。まあ、レベルが違い過ぎるのが問題だけど。』
こればっかりは仕方がないねと言う声を聞き、それ程に実力差があるんだろうかと疑問に思う。必ずそうなると言うなら、やはりよっぽど実力差が出るのだろう。どうなるのかと楽しみにしていると、レーンに12人が並んだ。そこで何故か紹介が始まった。
『第1レーン、ゼウスファミリアの幹部、四天王のミツキ。数多の女性と付き合ってきただとか振っただとか、とにかく女性関係で噂が耐えないようないけ好かないやつよ。』
『ははは。彼にそこまで辛辣なのは君ぐらいだよ。サルーラ。
どちらかというと、神速の槍使いっていう通り名の方が有名だと思うよ。』
『フンッ。知らないわ!あんな奴。』
何があったのか、サルーラさんはミツキという人が嫌いなようだ。
そのミツキという人は金髪に水色の瞳の王子様っぽい顔をしており、確かにこれは女の人から人気がありそうだ。ゼウスというとトアさんが思い浮かぶためか、少しばかり違和感を感じる。
「ゼウスにはああいう人も居るんですね。」
「ああ見えてかなりやり手だし、ゼウスにいるのはその背中にある翼のせいでもあるらしいからなんとも言えないかな。」
「女性人気のためな気がするの、ボクだけ?
ねぇ。ガイア。君はどう思う?」
「……む。人の子は難しい。」
ガイアさんはそう言ったきり、眉間に眉を寄せて考え込んでしまった。よっぽど理解が出来なかったのだろう。
まあ、どちらもという可能性もあるでしょうしね。
その間も次々と紹介が進む。ヘラからも幹部の人が。アテナからは妖華さんでポセイドンからはユウナギさん。アフロディーテからは幹部の男性。
デメテルからはサブマスターとの事だったが、何処からどう見ても農家のおじさんといった容貌の人が出てきて驚いた。思わず、本当なのかと神様に尋ねてしまったくらいだ。
アポロンからはアキトさん。アルテミスからはマスターだという月光院ルカという狐の獣人の少女が出場していた。狩衣を身にまとっており、膝ほどまである長い金髪を腰あたりで緩く結んでいる。前髪はあげ、飾りのついた紐で結ばれており、少し子供っぽい印象を受けた。しかし、ツリ目気味な濃い紫の大きな目は大人びた鋭さを持ち合わせており、到底軽んじることの出来ない相手だと思った。でも、それよりも……
「なーんか、見覚えがある気がするんですよねぇ。」
思わず漏れた声に、周りを見るが神様は気づいていないようだ。空はこちらを見ていたが、片眉をあげただけでそれ以上は何も言わない。きっと気のせいだろうと次のレーンを見た。
後は、アレスからはデュランさん、ヘルメスからはサブマスターであるクラウドさんというピエロ姿の方、ヘパイストスからはマスターであるアレクセイさんという赤髪の少年だった。そして、最後のヘスティアからはラパンさんが出場している。
『うちはラパンが出るし、他のファミリアからもマスターやサブマスばかりが出場しているわね。』
『一部からは幹部も出場しているけどね。
まあ、そういう所はマスター達のステータスが魔法よりであまり早く走れないからなんだけど。』
『それもそうね。……ただ、ゼウスの方針が私には未だに分からないわ。』
『マスターが暗黒騎士だからね。素早さはトップクラスのはずなんだけど……多分、あの人が関連しているんだろうね。流石、崇拝者。』
呆れるサルーラさんに苦笑したアカツキさんは一周まわって感心しているらしい。
もはや公認と言っても過言ではないほどに、トアさんの暴走っぷりは周りに知れ渡っているようだった。周囲の観客も苦笑いしていたり、納得していたりと疑問にすら思っていない。寧ろ、またかと言いたげな雰囲気が漂っていた。
トアさん、何をやらかしたらこうなるんでしょうね。……もしや、初めからこれだからすっかり慣れきってしまったとか……?……有り得そうで笑えないですね。
全員の紹介が終わり、競技開始のピストルが鳴り響く。
一斉に走り出す12人だったが、頭角を現したのは妖華さんだった。その次にアキトさんとアルテミスのマスター、月光院さんが並んで走る。ゼウスの幹部だというミツキさんは4番手に並んでおり、ラパンさんはその後ろを追いかける。ユウナギさんとデュランさんはその後ろを走り、後方はかなりの接戦をしていた。
やはり、同じマスターであっても種族や職業によってかなりの差が出るようだ。
『今回もアテナのマスターは速いわね。本人は拳闘士だったかしら。』
『ステータスをかなり素早さ寄りに振っていると聞いたよ。
拳闘士という職業の時点でも速いのに、それを特化させただけあって他者の追随は許さないね。』
そうだったのかと解説に耳を傾け、真ん中を見る。既に何戦もした後なだけあり、決して平坦とは言えない道を全力で走り続ける妖華さんは所々にある罠や直前に設置される罠さえ軽々と避ける。
遂にはガイアさんが作り出した壁にたどり着き、直前で地面を強く蹴ると易々と飛び越えてしまった。そして、そのままゴールかと思ったが、その着地地点には大量の罠が存在する。
「ア。やっちゃったカナァ?」
へらっと笑った妖華さんは地面に着地した瞬間、重力と炎や風に包まれたが、それでも妖華さんはノロノロと進む。
その間に後ろから何やら言い争いながら走ってきたアキトさんと月光院さんが妖華さんを追い越す。2人は何処か髪が焦げたりボサボサになったりしていたが、壁を越えた先で罠を踏まなかったため、減速することなく走り続ける。
その後ろからミツキさんが走っていき、ゴール寸前で妖華さんを抜き去った。その後も次々とゴールしていく。
最下位はデメテルのサブマスターだったが、走り終わった彼は腰をポンポンと叩き、ただのおじさんにこれはキツイわーと話していた。どうやら、元から争いごとに向いていない性格をしているようだ。
『最後のレースは1位、アキト。2位、月光院ルカ、3位、ミツキね。ちっ。もっと頑張りなさいよ。妖華。』
忌々しいとばかりに舌打ちをするサルーラさんにアカツキさんはまあまあと言いながらも、それ以上強く止める気は無いらしい。
そのまま試合を進行していく。
『今回の集計はお昼頃に出る予定だよ。』
『流石にかかった罠や新ルールの加点とかなり面倒臭く計算になっているようだもの。楽しみに待っている事ね。』
『それじゃあ、これにて200メートル走は終了だよ。
次は陣取り合戦だよ。協力が鍵だけど……出来るのかな?』
何やら不穏な言葉で締めくくられ、200メートル走は終わった。
次も私は観客であり、参加者は神様……ではなく、ガイアさんだ。私には参加しない方がいいと言っておきながらガイアさんはいいのかと思うのだが、仕方がない事情というものがある。
まあ、神様が私を大事に思ってくれているということでそこは良いとしましょう。……玉入れの恨みは忘れていませんがね?ええ。当然ですよねぇ?ふふふ。
『これより第3競技、陣取り合戦の説明を始めるわ。
実況は第2競技に引き続き、私、サルーラ・サラサーティ・フルフラリーが。』
『解説はアフロディーテのサブマスター、アナリスがお送りします。』
淡々とした声で話すのは古そうなローブを身にまとった灰色の髪に暗い緑の瞳をもつ女性だった。
黒縁眼鏡をかける女性は少々野暮ったく見え、美の女神として有名なアフロディーテを象徴とするファミリアのサブマスであることに違和感を覚えたが、そこは他のファミリアの事情である。気にする事ではないと気にとめなかったが、周りからは少しばかり不満そうな声が聞こえた。
「まだアイツがサブマスなのかよ。あそこ。」
「ねー。マスターのキャラメリアさんも何を考えているのかしら。」
「あそこだけはイマイチよく分かんねぇんだよなぁ。中のヤツに聞いても、要領を得ねぇし。」
「正直不気味だよな。」
コソコソとした声だったが、聞こえてくる声にそんな事もあるのかとぼんやり思った。
『この陣取り合戦。物騒なことに全員で斬りあってもらうわよ。』
『正しくは相手を倒したり、魔法で地形を変えたりして旗を取り合ってもらいます。』
『あら。ジョークが通じない子ね。』
『ジョークだったんですか。てっきり本気かと。』
ニコリともせずに淡々と話すアナリスさんにサルーラさんは頬を引き攣らせたものの、一つため息をついてまた話し始めた。
『アナリスの言う通り、今回は陣取り合戦よ。
スクリーンのマップを見れば分かると思うけど、フィールドには大きな旗が2本と15本の小さな旗があるわ。』
『フィールドには初め、赤と白関係なくランダムに出現することになります。皆様にはそれぞれ大きな旗の元へと集っていただき、初めに自身の陣地の旗になった旗が本拠地となります。』
『最後まで小さな旗を持っていると300ポイント、大きな旗を持っていると5500ポイント獲得できるわ。相手を倒せば50ポイントと言ったところね。』
『勝敗は敵を蹴散らしきるか、本拠地の旗を守りきるか、全ての旗を得るかで決まります。本拠地の旗を守りきると1万ポイント。全ての旗を自分のチームの色で染めても1万ポイント。
この競技では200対200を基本としています。相手を全て倒した場合も1万ポイントですので、勝ち方は様々となっています。』
面白そうな競技だと思いながら、出場するガイアさんはどうするのだろうかと考える。
実際のところ、アナリスさんが言った方法の中で一番現実的なのは旗を守りきることだろう。全滅や全てを陣地にするのはかなり手間なのは想像にかたくない。
「空ならどういう方法を取りますか?」
「マップにもよるけど……そうだね。半分は旗に近づけないようにする壁役。4分の1は相手の旗に攻撃して、残り4分の1は他の旗への遊撃隊ってところかな。」
「そうするんだ。僕なら4分の1で旗を守って、4分の1で相手の旗に攻撃を仕掛けるよ。それから、残りで他の旗を奪っていくけど。」
意見のすれ違った二人は顔を見合わせ、ムッとした顔をしている。聞いている限り、どちらも一理あるように思えた。
要は、守りに100人欲しいか欲しくないかって話なんですよね。結局二人とも旗を守るという意味では同じ意見なんですよ。だから、そんなにムッとしないでもいいと思うんですよね。二人一緒じゃないと嫌だみたいな子供っぽさも無いですし。
まあ、二人とも同じ意見なんて仲がいいですよねー。
『魔法は自分のチームにも効果がある為、同士討ちに気をつけてください。』
『毎回居るのよね。同士討ちをしてチームを追い込むやつ。気をつけなさいよ。大魔法なんて撃った日には全滅だったなんて事があるんだから。』
粗方終えた説明の最後はフレンドリーファイアの注意喚起によって締められた。
いよいよ開始ですね。楽しみです!
次回、陣取り合戦
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。




