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52話 報復は程々に

こんにちこんばんは。

ちょっと時間が無くていつもより少なめで申し訳ない仁科紫です。


それでは、良き暇つぶしを。

 まさかの破廉恥発言がよっぽど面白かったのか、そこかしこがシンっと静まり返る中、笑い声が響きわたる。



「ハハハッ!面白いことを言うネ?エンプティ!

 ランキング一位のファミリアのサブマスターにソレを言うなんテッ!」



 お腹を抱えてケラケラと笑う妖華さんに笑い事じゃないんですがと思いつつ、飛んでくる流れ弾という名の狙撃を避ける。

 本来ならば妨害行為はプレイヤーを狙う時点で反則になるのだが、お手玉が丁度私を狙える角度にある時に魔法が撃ち込まれるのだ。凄腕と呼ぶべきか、執念が凄いと言うべきか悩みどころである。

 まあ、私としては溜まったものでは無いですけど、避ける分には問題ないですね。その程度の度胸は下に居た時についていますから。



「……姉さん。あの人の事気に食わないからやっちゃっていい?」



 避けている最中に落とされる空のトンデモ発言に一瞬ふらつく。……え。やっちゃう?やっちゃって……良いですがダメですね!?



「ダメですよ!?空!円の外に出るのはルール違反なんですから!空は遠隔攻撃を持っていないですよね!?」


「止める理由、そっちで良いのか……?」



 何やら遠くの方でアキトさんが呆れたように首を傾げていたが、そこはスルーである。そもそもそれを言うならトアさんに言うべきである。

 故に、相手と同じことをするだけなのだから、問題は無いのだ。まあ、やり方なんて色々とありますしね。


 そんなことを考えつつ空を慌てて止めると、空はいい笑顔を浮かべた。



「大丈夫だよ。姉さん。ボクは姉さんの付属品だからね。」


「ワオ。ココまで潔いい補助AIハ初めて見たヨ。」


「ふん。ボクは特別性だからね。そこらのAIと比べてもらったら困るよ。」



 胸を張って答える空にいや、そうだけどそうじゃないと焦る。むー。なんと言えば留まってくれるんでしょう。

 そもそも、空には本当に無茶をして欲しくないんですよね。

 とはいえ……流石に鬱陶しいですね?


 宙返りをし、魔法を躱しながらチラリと後ろを振り返る。トアさんは丁度空を飛んでいる所だった。魔法の飛んできた角度を補足し、丁度そこへ影魔法を設置する。

 吸い取られるように影の中へと入っていった魔法がトアさんの影の中から現れる。一直線に飛んでいく魔法弾はトアさんに当たる前にトアさんが回避し、そのまま赤のお手玉を撃ち抜いた。



『おおっと!?今のは何ですかね!?魔法が急に現れたように見えましたが!』


『あれは……まさか、影魔法か!?光と闇の両方の魔力を持っていないと使えないことで有名だな!

 流石、魔法特化種族の人形族と言えるだろう!』



 ガハハと笑うユウギリさんの解説をどこか遠くで聞きながしながらこちらを痛いぐらいに睨みつけるトアさんにニヤリと笑ってみせる。



「〈影渡り〉っと。こんな感じでいかがでしょう?」


「このっ……!」



 憎々しげに声を荒らげたトアさんからの攻撃は益々激しくなる。しかし、その全てを影魔法で吸い取り、向こう側へと設置する。何も影は一つだけでは無いのだ。

 各自の足元に影からそれは飛び出し、次々と投げられるお手玉を破壊していく。勿論、それはときおりトアさんを狙ったり他の人を狙ったりとランダムだ。

 角度もあるが、人によっては直撃したり逃げた先で他の人にぶつかったりと向こう側は悲惨なことになっている。



「ふふふ。こんな感じでいかがでしょう?空。」


「むー。ボクも何かしたかったんだけど。」



 微笑みながら空を見ると、空は不満げな顔をしたもののやがてため息をついて私を見た。



「でも、いいよ。姉さんが手を下すならボクはその障害を取り除くだけだし。」


「そ、空……!お姉さん、空がカッコよすぎてどうすればいいのか……!」



 空のカッコ良さに思わず悶えていると、後ろからボヤくような声が聞こえた。



「いや、いつの間にお姉さんキャラになってんだよ。

 嬢ちゃんはどっちかってーと末っ子キャr……」


「お姉さんです!」


「姉さんはボクの姉さんだから。そこは譲らないよ。」



 バッと振り向くとそこには思ったより近くにアキトさんがおり、何をしているのかとふと疑問に思う。まさか、ポイントを入れる気がないとかそんなんじゃないですよね?


 睨むようにアキトさんを見る空にアキトさんは驚愕の眼差しを向け、惚けたようにポツリと呟いた。



「信頼感すげぇな。」


「当然ですよ。海ですからね。ね?海。」


「勿論だよ。姉さん。」


「そして、2人揃って地獄耳ってか……。」



 微笑み合う私たちを見てアキトさんは頬を引き攣らせる。横を通りがかった空に呼び方、気をつけてねと言われて口元を覆う。そう言えば、私はうっかり空を海と呼んでいなかっただろうか。

 ……やってしまいましたね。違う名前で呼ばれて喜ぶ人なんていません。空に悪いことをしてしまいました。



「空。ごめんなさい。」


「いや、いいよ。姉さん。気にしないで。

 それに、ボクにはよく分からないし。」



 苦笑気味の空に首を傾げたが、今はこうしている場合ではないとアキトさんに向き直る。

 アキトさんはコソコソと話し合う私たちを見て不思議そうだったが、名前について特に思うところがある訳では無いようだ。


 警戒をしてくれそうな2人が居るうちにと周りを見回すと、尚も魔法による攻撃は続いていた。しかし、それは私が何かをするまでもなく何故か妖華さんが代わりに返していた。



「ハハハッ!こうカナッ!?〈符術:鏡面異空〉!」



 そう言って妖華さんは両腕を横に振る。何処から取り出したのか幾つも放たれた札は一つの方向から向かってくる魔法の弾丸を次々と飲み込んでいくものと、赤の陣地に飛んでいくものとで別れていく。そして、向こう側に飛んで行った札は銅鏡に変化し、次々と魔法を吐き出していく。



「ちょっ!?」


「マスターがこれ使うとか酷くないか!?」


「入んないのに妨害って……!こっちも誰かあれ止めてよ!」



 何やら向こう側で更に阿鼻叫喚が上がっているが、放置する。そもそも、躍起になっているトアさんを止める方がいいと思うんですよね。あれ。結局、因果応報でしかありませんし。


 そう考えながらも、先程と同様にお手玉を運び、これ以上ポイントが入れられないという所まで入れる。

 籠は既に空のスキルから解放されていたが、そこは反魔力の魔力糸で雁字搦めにした。どうやら、普通の魔力糸では無理だが、反魔力なら籠を掴めるようだ。

 お手玉を入れながらも何故か後ろをついてくるアキトさんに話しかける。



「よいしょっと。それにしても、アキトさんは何処までポイント入れました?私はこれでラストですけど。」


「えっ。マジかよ。真面目だな。」


「姉さんはいつも真面目だよ?それで、姉さんが聞いてるんだけど。答えは?」



 もうちっと肩の力を抜けばいいのにというアキトさんに空が淡々と言葉を返す。

 アキトさんはやれやれと首を振り、息を吐き出す。



「分かってねぇなぁ?祭りは最後にドカンと決めるに決まってんだろ?早々に終えちゃあ、後は妨害に援護にって目立つことすら出来ねぇじゃねぇか。」


「いや、今、絶賛妖華さん悪目立ちタイムセール中ですが。」


「あー……。あれは無視で。」


「さっき、姉さんも悪目立ちしてたけど?」


「ははは!俺にはあんな芸当出来ねぇからな!人には向き不向きってがあるんだよ!」



 言い訳のようなことを言いつつもアキトさんはカラカラと笑ってそう言った。

 因みに、この間も何もしていないアキトさんを不審に思ったが、狙撃が当たりそうなプレイヤーのフォローはしていたため、ますます何がしたいのかよく分からなかった。勝つんだったらお手玉を入れた方がいいと思うんですけどねぇ。



 ・

 ・

 ・



 そして、15分に設定された残り時間が残り5分を切った頃、攻防戦は激しさを増していた。

 方や、安定して籠にお手玉を入れることが出来た白組。方や、妨害を妨害によって返され、まともに籠にすら入れられていない赤組。勝敗は既に決まっているかと思われたが、そこで新たな出来事が起きる。



「ちっ。誰もやらないとかどうなんです?仕方がありません。今回ばかりは特別サービスですよ。我がゼウスの力を思い知りなさい!〈space-fixed coordinate〉!〈魔術障壁〉!」



 キーンっという音ともに何かが形作られたのが見える。赤い円を覆うように設置されたそれはかなり巨大な透明な壁だった。

 更に向こう側の籠はかなり下の方で動きを停めている。どうやら、入れやすい位置に移動させたようだ。

 先程まではもっと上の方で飛んでいましたし、あの籠は動きを止めるならともかく、動かすのはほぼ無理と言っても過言じゃないんですよ。つまり、あれはその不可能なことを成し遂げているんです。確かにこれは傲慢になっても仕方がないかもしれません。


 少しばかり戦慄しながらも見守っていると、チョイチョイっと後ろから肩を叩かれる感触に振り向く。

 そこには画面の向こう側で見たメルフィーナさんの姿があった。



「えっ。えっと、応援団長さん、ですよね……?」



 首を傾げながら尋ねると、メルフィーナさんはニコリと笑って頷く。一体何用かと思っていると、後ろからコンコンっと何かに啄かれた。なんだろうかとまた振り向くと、後ろには黒い烏が居た。

 その烏は足が三本あり、バサバサと翼を羽ばたかせながら今度はメルフィーナさんの肩に乗る。



「こら。黒。その子は玩具ではないわ。啄いてはいけないのよ。」


「メルフィーナ!コレから良くない匂い!キライ!」



 カァッ!と鳴きながらメルフィーナさんに言う烏は少し生意気そうに見えた。うーん。これは啄かれたことへの偏見でしょうか?まあ、何でもいいんですが隣の空の顔が怖いので程々にして欲しいですね。

 それにしても、本当になんの用事なんでしょうね?

次回、メルフィーナさんの目的


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。


〜2022/02/27 18:00 色々と書き足しました。〜

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― 新着の感想 ―
[良い点] プティちゃんの大活躍♪ あ~あ♪オネエサンが我を忘れてはいないみたいだけど、暴走気味ですね(笑) 妖華さんも便乗して悪ノリ中♪ さて、どうなるのやら?(焚きつけたのにワレカンセズでゴメ…
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