51話 玉入れは再会の場
こんにちこんばんは。
人物紹介を多分作る仁科紫です。
……もういっその事、一旦1位から12位までのマスターとサブマスのまとめでも作りますかね……。
それでは、良き暇つぶしを。
転移した先は上から見ていた場所だった。ここから神様とガイアさんが見えるかと見渡すが、流石に人が多すぎて何処にいるかは分からない。
赤の陣地と白の陣地が半分に分けられているようで、大きな円が二つ描かれている。また、当然のように周りには沢山の白いお手玉が転がっていた。
ところが、同じく当然あるはずの籠はどこにも見当たらない。玉入れ……ですよね?
戸惑っている間にもアナウンスが流れ、聞き覚えのある声が耳に入った。
『さあ!いよいよ始まります第一競技、玉入れ!
今回の実況は私、ラパン・アルビーナが!』
『解説はポセイドンのマスター、ユウナギで送るぞ!』
ガハハと笑う解説の男性は乱雑に切られた薄浅葱色の髪に浅葱色の瞳をしていた。ガッシリとした筋肉質な体型のその男性は陽気な雰囲気と和風な服装も相まって海の男という感じがする。
ポセイドンと言えば神様ランキング4位のファミリアでしたか。実況が白組だから解説は赤組って感じなんですかね。
そんなことを考えつつ、説明を聴きながら開始を待つ。
当然、今は籠がなくとも玉入れは玉入れである。ルールは普通の玉入れとそう変わらない。
ただし、魔法が使えたり、自分の入れられるお手玉の上限が決まっていることや妨害や協力といった事にもポイントが生じたりするのが一般的な玉入れとは異なる点のようだった。また、それに応じて注意事項も魔法関連や妨害方法に多いようだ。
待っている間にも周りを見渡す。この競技は各ファミリアにつき一人しか参加出来ない競技のため、ここに居るのは私と空だけだ。勿論、空も私ということで2人合わせて1人カウントだからであり、決して、ずるいとは言わせない。
つまり、見渡したところで空以外に知り合いなどいるはずもない……と言いたかったのだが、物凄く見覚えのある人と目が合う。
それは黒い蝙蝠のような翼を持つ赤い目が特徴的な人物。アキトさんだった。
慌ててそっぽを向くものの、何故か向こうからよってくる気配を感じる。それに伴い、周りにいた人々は遠巻きにするように離れていった。
どうやら、神様ランキング7位のマスターであるアキトさんは有名らしい。
ひそひそと相手、誰?だとか、知り合いなのか?という不思議そうな声が飛び交う。
……はぁ。なんで私はこの人と知り合いなんでしょう。
注目されている事に嫌気がさし、大きくため息をつくと隣にいた空が前に出てきた。
「何か用?」
「いや、用は後ろの人形の嬢ちゃんにあんだが。アンタこそ誰なんだ?」
堂々とした物言いにふーんとだけと言い、アキトさんの質問に答えない空は私を守るように前に陣取りながらもどうすると尋ねてくる。
少し悩んだが、話すくらいならいいかと口を開いた。
「なんですか。アキトさん。私は用事なんてありませんが。」
ただただ突き放すように言うが、アキトさんはそれを気にすることなくニカッと笑った。
「いや、何の因果かまた会っちまったからな。そこはほら、魂に導かれし盟友と言っても過言じゃないってな。」
「過言です。今すぐ言葉を訂正してください。めんどくさいです。」
「つれねぇなぁ。で、そっちの子はなんていうの?」
そう言って空を見るアキトに慌てて空を後ろに隠す。これと言って理由はないが、なんとなくそうしないと空が減る気がした。
「おいおい。それは、ねぇだろ?」
「嫌ですー。この子は大事な子なので、教える気はありません。」
どっちも教えてくれねぇのかよと言うアキトにあっかんべーと舌を出すと、何故か周りがどよめく。そこへまた聞き覚えのある声が聞こえた。
「それはワタシも興味があるネ!」
「あ。妖華さん。こんにちは。」
コイツには普通に話すのかよとアキトさんは口をひきつらせ、ボヤいているのが見えたが、そこは気にしない。気にする必要も無いだろう。それに、アキトさんがいちいちそんなことを気にする質だとは思わなかったのもあるが。
どうも言ってるだけって感じがするんですよね。アキトさんって。本気じゃないっぽいので無視でも構わないでしょう。
アキトさんの後ろからやって来た妖華さんもアキトさんのことを気にすることなくヘラりと笑い、長い袖に隠れた手を振った。
「ハイハイ。こんにちはダヨ。」
「まためんどくせぇ奴が来たな……。嬢ちゃん。コイツの事は本気で信じるなよ?いつ裏切るかも知れたやつじゃねぇんだから。」
「はい?それくらいは知ってますよ?当然ですよね?」
「知ってて普通に接してんのかよ……。」
怖いもの知らずなのかなんなのか……と呟くアキトさんには悪いが、こっちとしては下手に接し方を変えられないという事情があるのである。
一度手を貸してもらっている以上、無下にも出来ないんですよねぇ。
むむむと考えていると、妖華さんは私とアキトさんを見比べて興味深そうに口を開いた。
「にしてモ、何したらそんなに嫌われるンダイ?確か、アキトは事情を聞くためのパシリにされてたハズだケド。」
ニヤニヤと笑う妖華さんにアキトさんは引きつった顔を向ける。どうやらそれは言われたくない事だったようた。
どこか不貞腐れた顔になったアキトさんはそっぽを向いてうっせーと言うと、妖華が居るなら大丈夫かと反対側へ行ってしまった。
うん?大丈夫とはどういう事でしょう?
首を傾げながらも、空の紹介を済ませておこうかと妖華さんを見る。妖華さんはニヤニヤとしながらもこちらを見ているだけで何を考えているのかさっぱり分からない。
「あの、妖華さん。こちら、私の分身の空です。」
「……空だよ。姉さんが紹介するから僕も名乗るけど、馴れ馴れしくしないでね。」
後ろから顔を出し、それだけ言うとそっぽを向く空に慌てるが、妖華さんはそれを面白そうに見ているだけだった。まあ、妖華さんが不快に思っていないのなら良い、んですかねぇ……?
「そうカそうカ。キミは空というンだネ。
ワタシは妖華。変人と名高いアテネのマスターサ。取って食ったリなんてしないカラ仲良くしてネ。」
「……宜しくはしないよ。貴方からは危険な感じがする。」
「オヤオヤ。コレまた随分と嫌われたもんだネェ!」
でも、それで正解ダヨ?とニヤニヤ可笑しそうに笑う妖華さんは実に胡散臭く、愉快そうであった。本人も自分でそういう評価をしているということだろう。
ハッ!これは空もターゲットの仲間入りしてしまったのではないでしょうか!?
やってしまったかと思ったが、後の祭りだった。先程までは私にしか向いていなかった視線が空のこともとらえ、ジーッと観察している。
ぐぬぬと終わった事を悔いていると、ルール説明や注意事項の説明も終わり、後は開始を待つだけになっていた。
あれ?籠は……と思っている間にもスクリーンに現れるカウントダウンの文字が0になり、ようやくそれは現れた。
『今回の籠は一味違いますね〜。』
『うむ!そうだな!まさか空飛ぶ籠などと誰が思いついたのか!きっと性根がねじ曲がっているに違いない!』
ガハハと笑う解説の人に一言文句を言いたくなったが、それどころでは無い。籠を注視してどうしたものかと考える。
円の真ん中に空から現れたのは白い羽を生やした籠だった。それは赤い円の中にも現れたのか、向こう側からもどよめきが聞こえた。
観客席の一部で何故かブーイングが起きていたが、それよりもとさっそくお手玉が飛び交うようになった周りを見る。
空を飛ぶのもOKというルールから飛ぶ人の方が多いのかと思えばそうでも無い。
「〈水球〉!」
「〈念動力〉!」
「うぉおおらッ!」
幾つも声が飛び交うが、水の中にお手玉を集めて籠に入れようとする人、魔力で一纏めにしたお手玉を操って入れようとする人、物理的に一塊めにしたお手玉を物凄い勢いで投げる人と投げ方は実に人それぞれである。
確かにお手玉は地面落ちているわけであり、地面から投げた方が早いのも分かる。しかし、それにしては皆それぞれやりたい放題が過ぎるだろう。
「うわぁ。凄いですねぇ。」
「確かに。でも、あまり入っていないみたいだ。」
つい呆気に取られ、呆然と見ていると空の言う通りスクリーンに表示されているポイントはかなり少ない。理由は言うまでもなく籠に翼が生えているからだ。いくら追尾しても籠は上へ下へと避けて入れさせようとしない。しかも、お手玉は投げられてから一度でも下降するとそれ以降は上昇させることは不可能なようだ。籠は縦横無尽に円の中を移動できるのだからよけいだろう。
まあ、魔法が使える時点で仕方がないルールなのかもしれないですが。
そんなことを考えつつ、どうやって入れるかを考え、いい案を思いついた。それを空と共有する。
「うん。それなら出来るよ。いけるんじゃないかな。」
「ダメ元でしたが、流石空です!さっそく行動に移しますよ!」
「了解!」
妖華さんはそれを見て何をするでもなくただニヤニヤと笑っていた。
・
・
・
「よいしょっと。空!任せましたよ!」
「りょーかい!月に叢雲花に風!〈シレネ〉!」
空が唱えた途端にぶわりと赤い花が籠の周りを包む。すると、今まで俊敏に動いていた籠はその場で動きをとめた。そこを見逃さず、魔力糸で包んだ大量のお手玉を上から放り込む。問題なく加点されたそれによしっとガッツポーズをした。
「ナイスですよ!空!」
「いやいや、姉さんこそ。こんな事、良く思いついたね?」
凄いとキラキラした目で言われ、どう言えばいいのか分からず、笑って誤魔化す。あまり褒められるとどう反応していいのか分からないのだ。
一先ず、今でも下からポンポン飛んでくるお手玉に当たらないように再び地面に降りた。
どうやら、どうやら周りの人々は動きをとめている今のうちに追加点を入れようと躍起になっているようだった。
しかし、そうは問屋が卸さない。
唐突に何かがパンッパンッと破裂していったのだ。何事かと確認すると、投げられたお手玉目掛けて魔法が放たれているのが見える。それは向こうの陣地からのものであるらしかった。
「うわっ!?」
「なんだ!?」
一部の人が赤組の方を見る。そちらには黒い軍服を痴女といっても過言ではないほどに着崩した人。トアさんが居た。片手にはライフルのような物を持っている。
妨害とはいえ、そこまで的確にお手玉を狙えるとはやはり神様ランキング一位のサブマスターなだけはあると思った。
「ただの破廉恥なお姉さんじゃ無かったんですねぇ。」
思わず漏れた声に何処からか吹き出した声が聞こえる。後ろを見ると、アキトさんが肩を震わせているのが見えた。空も顔が無表情になっている。あっと思っているうちに向こう側からの攻撃が激しくなった。
どうやら、向こう側にも聞こえていたらしく、トアさんが目をつり上げているのが見えた。
もしかして、やっちゃいました?私。
次回、妨害合戦
それでは、これ以降も良き暇つぶしを。




