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42話 スペックはおかしいもの

こんにちこんばんは。

そういえば人形の説明をした覚えがないなと思ったら、いつか消してしまったデータに含まれていた気がすることを思い出した仁科紫です。

ハハッ。あの時はやらかしたなぁ。


それでは、良き暇つぶしを。

 ダンジョンへと向かう事になった私たちは、冒険者ギルドへと来ていた。

 冒険者ギルドの受付より奥にあったダンジョンへの入口だという扉から伸びる列に並び、ふと思った疑問が口から漏れる。



「どうして冒険者ギルドにダンジョンへの入口があるんでしょう?」


「色々と便利だからじゃないかな?」


「素材の売買に依頼の受付。一箇所で沢山の事が出来るというのは色んなメリットがあるよ。姉さん。」



 神様の言葉を補足する空の言葉にそういうものかと頷く。一方の空は何処か勝ち誇ったように笑い、神様はそれを見て何とも言い難い顔をしていたが、前を見ていた私には見えていなかった。



 ・

 ・

 ・



 そうしてしばらく待つと、私たちの番が来た。

 魔法陣の中に入り、パーティの代表者が魔法陣の前に置いてある装置に手をかざすだけでダンジョンに入れるらしい。

 この装置は一度到達した各層へと移動することができるように個人の情報が登録されていると、神様からは説明された。

 便利だなぁと思いつつ皆が魔法陣に入ったのを確認してから触れる。ピカッと魔法陣が光ったかと思えば、次の瞬間には広い洞窟の中に居た。

 鍾乳洞とは違い、ゴツゴツとした無骨な洞窟であり、鉱山だったと言われれば信じてしまうかもしれない。そんな場所だった。



「おー。ここがダンジョンですか。」


「そうだよ。依頼のあった場所は20階層の奥。特に隠し通路の様なものは無いらしいけど、一番報告が多い場所だって言っていたね。」


「うん。ボクと姉さんの力試しもしたいから、出てくる魔物を倒しながら進もう。」


「はいです!」



 3人でダンジョンを進めることが嬉しくて、ニコニコとしながら進む。

 少し進んだところでぽよんぽよんと跳ねる透明な青のお饅頭のような物体に遭遇した。



「えっと、あれはなんでしょう?」


「ああ。あれは」


「あれはスライムだよ。姉さん。」


「へぇ。あれがスライムですか。なんだか少し可愛いですね。」



 ジーッと観察していると、真ん中に青い石があるのが分かる。ぽよぽよと跳ねる度にゆらゆらと揺れるのがなんとなく面白い。目のような部分は無いようだ。生態的にはクラゲに近いのかもしれない。……あっ。クラゲは陸に出たら溶けてしまうんでしたっけ。じゃあ違いますね。


 そうして、初めて見る生物に興味津々になっていると、それを微笑ましそうに見ている神様に気づいた。



「べ、別に夢中になんてなってませんから!」


「ん?恥ずかしがることでもないと思うんだけど。」



 首を傾げる神様にブンブンと首を横に振る。何かに夢中になっているところを見られるというのはなんとなく気恥しいものなのだ。やはり神様は分かっていない。そう思いつつも今回も私が折れるかと考えていると、思わぬ所から助け舟が入った。



「恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ。神様は分かってないね。」



 一瞬ぽかんとしつつもコクコクと頷く。なんだかさっきから首振り人形のようになっているが、そこは気にしない。何か言われても体が小さい分、リアクションは大きい方が伝わりやすくていいと私は主張するのだ。

 何はともあれ、ムスッとした顔で神様を見る。神様は少し不思議そうな顔をしていた。



「そうですよー!神様は女心が分かってないんです!」


「何でだろう。プティが2人になった気分なんだけど……。」



 疲れたように言う神様にこの辺でやめておくかと目の前のスライムを見る。未だにぽよぽよとしているスライムには悪いが、腕試しには丁度いい相手かもしれない。



「あれを倒します?とりあえず。」


「うん。じゃあ、ボクからね。」



 そう言って空はスライムに近づくと、足に魔力を集中させ、青い石がある部分に向けてかかと落としをする。

 すると、見事に足は青い石を捉え、パキリという音ともにスライムは消え去った。



「……意外と柔らかい。」



 余裕そうにスライムが消えたところを見ながら呟く空。てっきり私と同じ戦い方をすると思っていただけに驚く。

 と、言いますか、ビスクドールがかかと落としでスライムを倒すという絵面が物凄かったと言うべきでしょうか。サイズ感もそうですけど、STRが0なのに物理が効くのは不思議ですねぇ。



「凄いです!空は肉弾戦をするんですか?」


「うん。人形に魔力を巡らせれば魔法攻撃判定になるからね。使わない手はないと思って。」


「人形のスペックも関係しているけどね。」



 空の言葉になるほどと頷いていると、神様が補足するように言葉を足した。人形のスペック……?


 頷きかけ、首を傾げる。そういえば、今まで人形に関してはただの入れ物のようなものだと考えていたが、もしかしたらそれぞれに特徴があったのかもしれない。

 疑問に思い、問いかけると神様はあっさり頷いた。



「人形にもそれぞれステータスがあるからね。

 勿論、君たちが依り代にしている人形に関してはかなり良いものを用意したと自負しているよ。何しろ、僕の作品だからね。」



 自信満々な神様の様子を空はジト目で見る。どうしたのかと首を傾げると、空はニコリと笑って口を開いた。



「姉さん。気になるならステータスの欄から見れるはずだよ。……というか、そんな事も説明していないとか信じられないんだけど。」


「聞かれなかったからね。」


「サポート係としてはサイテーだね。もっと勉強し直してきたら?」



 わぁわぁと言い合う2人にこれはどうしようも無いなと放置することにし、一先ず人形のスペックを見てみることにした。神様は良いものと言っていましたが、どれくらいなんでしょう?



 ーーーーーーーーーー



 アイテム名:明青の姫君(あおのきみ)


 ランク:特級

 STR B

 VIT SSS

 INT S

 MND SSS

 DEX S

 AGI A

 LUK SS


 製作者:アルベルト・テオズ


 詳細:もう一歩踏み込めば神の領域にいたれるほどの職人によって一から手作りされた成長する人形。素材にも伝説級のものが惜しみなく使用され、ビスクドール愛好家の間では高額で取引される。

 頑丈になるように作られ、もはや伝説級以上のものでしか破壊することは出来ない。人形使いや人形を依代とする生命体が使用すると魔法攻撃に高い補正を得る。

 ただし、この人形がいくら成長するとはいえ、国宝級にいたれなかったのは職人の技術不足と言えるだろう。精進するべし。



 ーーーーーーーーーー



 アイテム名:赤華の皇子(あかのきみ)


 ランク:特級

 STR SS

 VIT SSS

 INT A

 MND SSS

 DEX A

 AGI S

 LUK A


 製作者:アルベルト・テオズ


 詳細:もう一歩踏み込めば神の領域にいたれるほどの職人によって一から手作りされた成長する人形。

 明青の姫君の姉妹作として作られた。

 素材には伝説級のものが惜しみなく使用され、ビスクドール愛好家の間では高額で取引される。

 前作同様、頑丈になるように作られ、もはや伝説級以上のものでしか破壊することは出来ない。人形使いや人形を依代とする生命体が使用すると物理攻撃に高い補正を得る。

 ただし、この人形がいくら成長するとはいえ、国宝級にいたれなかったのは職人の判断ミスと言えるだろう。精進するべし。



 ーーーーーーーーーー



 ふむふむ。なるほど……うん。神様は一度殴られればいいと思うのです。


 一通り詳細を読んだ結果、行き着いたのはその答えだった。

 さんざん私がおかしいと言っておきながら、そもそもこのお人形のスペック自体がおかしかったのだ。そんなものを初めから渡しておきながら今更お前が言うかである。

 だいたい、このステータスを見て思ったのですが、もしや私のSTRが0の理由ってこのBっていうのが原因だったりしませんよね?


 ムカムカと神様に八つ当たりをしたくなり、今も言い合いしている2人の間に割って入った。



「かーみっさま?」


「う、うん。なんだい?」


「もしかして、このお人形のステータスって私のステータスにも結構反映されていたりしますか?」



 ニコニコと綺麗な笑みを作って話しかける。話しかけられた神様は頬を引き攣らせたが、私の話を聞くと真面目な顔で否定した。



「いや、どちらかというとプティのステータスが人形に影響を及ぼしているはずだ。」


「という事は、このSTR格差は私のステータスのせい……あれ?でも、VITはそんな事ありませんよね?」


「それはとにかく頑丈にってことだけを念頭に置いて創ったからね。プティのステータスにも影響されないのはそれだけステータスが飛び抜けてるってことだよ。」



 なるほどと頷き、もう一度ステータスを見る。どうやら、私は魔法型。空は物理型という性能になっているようだ。実に分かりやすいなとぼんやりと思った。



「そろそろ先に進まない?確認は終わったみたいだし。」


「そうだね。先を急ごうか。」


「はいです!」



 その後、何匹かスライムを倒し、貰った地図通りに進むと、大きな空洞が見えてきた。



「あそこからショートカットできるんでしたっけ?」


「うん。ボクはまだ飛ぶのに慣れていなくて少し不安だから、姉さんに運んでもらってもいい?」


「良いですよー。お姉さんに任せるのです!」



 キリリとしながら言うと、空は背中に抱きつくように掴まる。神様は何やら呆れていたが、そんなことは気にせずに降りていく。後ろの神様はどうするのかと思えば、ふわりと浮いてついてきた。

 神様って浮いているイメージは無かったんですが、意外に飛べたんですね。


 ボーッとそちらを見ていると、後ろから空が声をかけてきた。



「姉さん。前見て。」



 なんだろうかと見てみると、前からコウモリの集団がやってくる。それも、一匹一匹が1m程とかなり大きい。

 これがショートカットをしようとする者たちへの障害なのかと神様が言っていたことを思い出す。


 なんでも、このダンジョンは十階層ほどをショートカットできる大穴が幾つか空いているそうなのだ。当然、メリットもあればデメリットもあり、今回はそのデメリットの一つである空からの妨害を受けているのだ。

 通常、この世界で空を飛べるプレイヤーは20%にも満たないらしい。故に、大抵は自由落下からの受身を取るか、崖をおりるかの2通りぐらいなのだとか。だからこそ、空からの奇襲はかなりの難関になるらしい。



「ここは私の番ですね。きゅっと絞めて終わりなのです!」



 説明を思い出しながらも、すぐさまきゅきゅっと糸を動かし、相手の首に巻き付けて切る。

 首のなくなったコウモリはポンっと音を立てて消えた。そういえば、外の敵は青い粒子になるが、ダンジョンの中の敵は倒すとアイテムになって消えてしまうという違いがなんとも不思議だった。

 次々と同じ様に倒していき、10匹程いたコウモリ達を無事に撃退出来た。



「姉さんの戦い方はカッコイイね。効率的で好きだよ。」


「えへへ。そうですか?」



 唐突に背中からかけられた声についゆるゆると糸が緩んでしまい、顔の表情が無になってしまう。空に勘違いされていなければいいがと後ろを見ると、空は楽しそうにニコニコとしていた。



「それはいいけど、ちゃんと下を見てね。回廊ボスがこっちを見てるから。」



 神様の声に従って下を見ると、確かに大きな二本足の鳥がいた。あれを倒せば十階層に到達した事になるらしい。

 さあ、頑張って倒しますよーっ!

次回、vsボス


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。


〜2022/02/14 11:00 取引させる→取引されるに訂正する誤字報告を2箇所適用しました。〜

コピペがバレる……


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― 新着の感想 ―
[良い点] 何処か抜けているのはお互い様では(笑) 二人の人形のハイスペックさ!そしてあと一歩のこの詳細!どうしてかな♪ [気になる点] 妹の空ちゃんが使っているのに「皇子」…ここにツッコミが無いよ…
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