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私、神様推しです!〜信者(自称)の恋模様〜  作者: 仁科紫
序章 記憶喪失な私と神様
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4話 見知らぬ人は不安とともに

こんにちこんばんは。

唐突にシリアスを入れてしまった仁科紫です。

ちょっと情緒不安定だったのかもしれませんね…。


それでは、良き暇つぶしを。

 神様が後ろを振り向く。

 必然的に見ることになったその人の姿はキラキラとした神様とは真逆の印象を受けた。スラリとした長身に眼光が鋭い真っ黒な瞳。暗闇を溶かしたような黒髪は短く、スッキリとしている。

 一際目を引くのは背中に背負った大きな剣で、これまた見た目が黒い。着ている服装も黒で統一されており、そんなに黒が好きなのかと言いたくなる程だ。

 私の中にある常識が剣に対して違和感を訴えていることから、どうやら日常的に見慣れるようなものではなかったらしいと推測する。


 …というか、面倒だから黒でいいやという思いで着ていたりしませんよね?こだわりがあるんですよね?ね?からかっていいものかと悩んでしまいますよ。



「やぁ。クロ。こんな所で会うなんて奇遇だね?見ての通り暇じゃないよ。」


「あっそう。てか、クロって呼ぶんじゃない。」



 犬猫じゃあるまいしと続けた男性と神様の様子を見て関係性を予測する。


 ふむ?これは神様のお友達と言った所でしょうか?


 突然の知らない人の登場に僅かに胸の辺りがヒヤリとしたが、それが何故だかは分からなかった。

 彼が気に食わない。排除したい。それよりも…嫌われないように、傷つかないように身を引いて、自分を守らねばという考えが私を支配していく。


 ……あ、れ…?…おかしいですね。私が何故身を引かねばならないのです?二人の邪魔をしたら嫌われる?誰が決めたんですか?そんなこと。

 そんなのは理不尽じゃないですか。私は神様とお話したいのです。その邪魔をするならば神様のお友達とて許せないのです。…でも、それで…。


 私が黙って考えを巡らせている間にも神様と黒い人の会話は進む。



「見ての通りって…ん?そいつ、誰?」


「ああ。この子は僕が創った子だよ。クロも知ってるだろう?僕が人形を…」



 そう言いかけた神様の言葉を黒い人は遮った。



「そうじゃなくて。中のやつ、誰なの?アルベルトが気にかけるほどってことはよっぽどの訳アリだろ?」



 その言葉にドキリとする。急に話題が自分のことになったからだけではない。言葉と共にこちらへと向けられた視線にあまり良くないものを感じたからだ。


 確かに、私は訳アリといえば訳アリなのでしょう。ですが、どうしてでしょう。彼の言い方や視線に何故か不安になる私が居ます。

 彼は神様のお友達、なんですから見知らぬ私について気になるのは当然のはずです。…でも、彼からはそれ以上の何かを感じるんですよね。


 確かめるようにクロと呼ばれた男性を見る。瞳の奥には焦がれるようなドロリとした何かが見えた気がした。

 それに見覚えがある気がして深く考えようとする前にズキリと頭が痛む。きっと、体が自由に動けば思わず頭を抱えていた事だろう。


 これは…深く考えてはいけないのでしょう。動かない体も案外便利なものですね。神様に心配されずに済むのですから。


 私の身に起きた異変に気づくことなく、間を開けて神様が貼り付けたような笑顔で黒い人に問う。



「…あのさ。もしそうだとして、君に話す道理はあるのかい?クロ。僕には到底そうは思えないんだけど。」


「分かってるよ。でも、気になるだろ。アルベルトが仲良くしてるやつなんだから。」


「だからって全てを君に話す理由はないよ。ほら、もう他所へ行ったら?」


「でも…」



 その先は言わせないとばかりに神様は黒い人の名を呼んだ。



「クロ。クロード。これ以上無駄な時間を取らせる気かい?いくら君でも容赦しないよ?」


「…はぁ。分かったよ。でも、そいつの名前くらいは良いだろ?なんていうんだ?」



 ため息をつきつつも頷いた黒い人は今度は私に目線を向けた。その視線に思考から意識が浮上する。


 あ。何故か話を振られましたね。

 …いえ、これは答えないというのが正解なのではないでしょうか?いざとなれば神様が答えてくれるでしょうし。

 それに…気に食わないじゃないですか。私よりも前に神様と出会っていて、私の知らない神様を知っているなんて。


 ふと我に返り、自分の思考に違和感を覚えた。


 えっと、あれ?私はどうしてこんな事を考えているんでしょう?おかしいですね。神様とは初対面なのにどうしてこんなにもモヤモヤするんでしょう。うーん…?……うん。分からないですね。

 とにかく、気に食わないので話しかけないことにしましょう。失礼なのは分かっていますが、そもそも神様以外への話しかけ方を知りませんしね。うんうん。これは仕方がありませんよね!


 そうして話しかけられて少し。無言の時間が過ぎ、痺れを切らした黒い人は口元をひくつかせながらポツリと呟いた。



「…いつまで待てばいいんだ?コイツ、全然話さないんだけど。」


「話したくないってことなんじゃない?もう良いだろう。今度構ってあげるから。

 僕は今、街案内をしている途中なんだ。邪魔しないでくれ。クロード。」


「そうかよ。じゃあ、またな。」



 神様の突き放すかのような態度に、ちっと舌打ちをした黒い人はそのままひらひらと手を振り、去っていった。…ポソりと何かを呟いて。

 私の耳に聞こえるか聞こえないかといった男性の声は確かに聞こえたものの、その内容に首を傾げる。



『空っぽの人形如きが…』



 確かにそう聞こえたのだが、私の名前を知っている訳でもない彼の言葉が不思議でたまらなかった。


 なんだったんでしょう?あの方。もしや、神様と一緒にいる私に嫉妬…?…うん。ありえなくはないですね。

 神様といるということは、負の感情を向けられるということ…覚えておきませんと。


 うんうんと脳内で頷いていると、神様が気を取り直してとばかりにこちらへと笑顔を向けてきた。



『さて。それじゃあ、案内するね。』


『よろしくお願いしますね。神様!』



 黒い人がいなくなり、やっと清々したとばかりに脳内のテンションを上げてそう答えると、神様は苦笑する。先程の対応に思うところがあったようだ。



『人見知りなのかい?』


『さぁ?どうでしょうね?気分屋なのかもしれません。』



 はぐらかすように答えた私に神様は何も言わず、ただそっかとだけ呟いてスタスタと歩き出した。


 本当のところは私も分からないんですよねぇ。ただ、なんとなく答えたくなかっただけなので。

 でも…今回は彼が去ることとなりましたが、次は私の方が神様のお邪魔になるかもしれません。また今度構ってあげると言っていたのですから。当たり前のことなのに何処か沈んだ思いになるのはどうしてなんでしょう…?


 自分の心がよく分からず、戸惑っている間にも狭い路地を抜けて大通りへと出た。そこは先程までの閑静な通りとは異なり、屋台やお店が多く並ぶ活気のある場所だ。


 なるほど。先程の道は裏通りというものなのでしょう。


 見覚えのない新鮮な光景に目を輝かせてキョロキョロと見渡す。…とは言っても、やはり目が動く範囲だけでしかないのだが。



『ここが大通りさ。大抵のものはだいたい何でも揃うよ。』


『賑やかですね。』


『王都ほどでもないけどね。』



 そう言いながら神様は一つの屋台の前で止まり、リンゴを指さして「これ下さい」と言い、懐から出した代金と交換していた。

 そして、そのままシャリっと齧り付いた神様は説明を再開する。


 わぁ。絵になりますねぇ。…人形である私への嫌味ですか?食べれないというのに。ぐぬぬ…美味しそうです。


 恨めしく思いながら神様を見つめていると、その視線に気づいたのかコホンっと咳払いをひとつした。神様は気まずげに頬を掻きつつも誤魔化すように口を開く。



『えーっと、今みたいに、この世界で物を買うには硬貨が必要になる。』



 なるほど。どうやら、買い物のお手本を見せてくれるつもりだったらしい。


 まあ、そういう事にしておきましょう。とはいえ…動かないこの体でどうしろというんですかね?まあ、知っておいて損ではありませんが、使うのは果たしていつになる事やら。



『そう言えば、硬貨はどうやって手に入るんですか?働こうにも今のままでは動けませんし。』


『あー…そもそもその問題があったね。うーん。流石に動けないのは不味いよなぁ。かと言ってあれはまだ…いや、緊急事態だし。

 ……うん。ちょっとくらいいいよね。』



 何やら悩んだ様子の神様は最終的にうんうんと頷き、ニコリと笑った。



『よーし。じゃあ、街を案内し終えたらいい事を教えてあげるよ。それで解決するんじゃないかな。多分。』



 多分ってなんですか。多分って。


 そう疑問に思いつつも既に問題が解決したとばかりに鼻歌を歌いながら『あそこは…』と街案内をしだした神様に私は何も言えなくなるのだった。



 ・

 ・

 ・



『そうそう、エンプティ。君が勝手に何処かに行ってしまうことはないと思うけど、危険な場所だけ先に伝えておくね。』



 そう提案されたのは街をあらかた紹介された後だった。危険な場所と言われ、よく分からず首を傾げ…ようとして、無理だったことを思い出す。


 本当に不便ですねぇ。この身体。リアクションがしにくいったらないですよ。


 心の中で眉を顰めつつ、とにかく返事をしてしまおうと神様に念話を送った。



『そんな場所があるのです?』


『うん。街中だと荒くれ者の集まる場所だったり、君が落ちてしまいそうな場所だったり。特に、街の外は今の君の状態で行くには危険だからね。紹介しておいて損はないだろう?』


『ふむ。そういう事ならよろしく頼む!なのです!』


『なんで上から目線なの…?』


『そういう気分だからです!』


『そ、そっか。』



 そうして私は神様から荒くれ者が集まるという冒険者ギルドや何処かに繋がりそうな道の端にある溝。門の外に続く道の先にある森を教えて貰った。その向こう側には平原が広がっているらしい。


 この街では外に出るのも中に入るのも自由だと神様は教えてくれました。だからこそ、外の危ない場所を教えてくれたのだとか。過保護ですよね。そんな所、行く機会も理由もないんですから。

 あと、場所によっては許可がいるところもあると神様はおっしゃったのですが、それがどこかは教えられませんでした。あえて聞く必要もないかとは思ったのですが、聞いておくべきだったかもしれません。また随時聞くとしましょう。


 こうして神様による街案内は終わり、私たちは神様のお店へと戻った。

次回、人形の移動方法ってなんだと思います?


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。


〜2022/03/13 17:04 名前を間違えていたので訂正しました。〜

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