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36話 ファミリア結成は騒動の元

こんにちこんばんは。

今更ですが、神様の名を使ったファミリアを作るってなかなかに神様に失礼な気がする仁科紫です。

……まあ、創作物ですし。うん。良いってことに……。


それでは、良き暇つぶしを。

 その場所は大通りにあった。周りにある建物に比べるとかなり大きい。目印は剣と盾の看板だった。


 この空島には十の街があり、それぞれにダンジョンがあるらしい。そこを攻略するのが一般プレイヤーにとっての目標になるのだ。到達できた階層を競い、最下層まで到達できるものが増えると今度はクリアタイムを競い合う。

 他にも、依頼を受けて討伐や採取に向かうなど遊び方は色々らしい。そして、その依頼を受ける場所というのがこの建物。冒険者ギルドなのだ。故に、それぞれの街に必ずあると説明を受けた。

 ……って、あれ?ファミリアを作りに来たのに冒険者ギルドってどういう事なんでしょう?



「神様。確か、冒険者ギルドって荒くれ者が集まる場所という話ではありませんでしたか?」


「ああ。それは下ではそうだけど、上ではまた違うんだ。プレイヤーが多く活躍する場所だからね。寧ろ、色々な手続きとかは全部ここで出来るようになっているんだ。」



 神様の説明になるほどと頷き、目の前にある両開きの扉を押して入る。両端に2階へと通じる階段があり、奥には沢山のカウンターがある。そこは郵便局や銀行のように個別に分けられたおり、それぞれのカウンターの上には依頼、鑑定、貯金、賃貸など、様々な表示があった。初めての人でも分かりやすい構造に感心する。

 2階からは美味しそうな香りが漂ってきており、食堂になっているのだろうと推測した。



「あ。ありました。ファミリアは一番端なんですね。」


「まあ、あまり使う人は居ないからね。」



 まだファミリアのことをよく理解していないからか神様がそう言う理由が分からず、軽く首を傾げながらも神様について行く。

 着いた先の窓口では一人の人がうつ伏せになっていた。しかも、すぅすぅと声が聞こえてくる。

 ……というか、これ、声っていうよりも寝息ですよね?



「神様。この方、寝てるんですが。」


「あー…うん。みたいだね。よっぽど暇だったんじゃないかな。」



 呆れた顔をしつつも神様は受付の向こう側に声をかけた。やがてムクリと顔を上げた受付の人は眠たげに目を擦り、こちらを見た。



「どちら……?」



 眠たげな目は緑色をしており、長いフワフワとした髪は綺麗な焦げ茶色をしていた。少女と言っても過言ではない小柄さに女性と言っていいのか悩むくらいだ。

 首を傾げる少女は神様に目を止めるとジーッと見つめる。その少女に神様も何故かあっという顔をした後、ニコリと笑顔を作った。



「今日はファミリアを作りに来たんだ。手続きしてくれるかい?」


「……はい。します。説明、要りますか?」


「そうだね。頼むよ。」



 承りましたと頷いた少女はようやく目が覚めたのかスラスラと説明し始めた。



「ファミリアとは同じ神を崇める事で結束を高め、同じ目的のためにより邁進するという団体です。

 そして、ファミリアを結成するのは2人からとなっており、崇拝する神を決める必要があります。普通のファミリアであれば、この程度の説明です。」



 予め聞かされていた内容とそう変わらない説明にふむふむと頷く。

 では、普通の、では無いファミリアは何なのかというと早い話、神様ランキングに参加しようと考えているファミリアのことだ。

 続けて説明された神様ランキングに参加するファミリアの条件とは現在、神様ランキングに参加している800あるファミリアのうち、どれか一つに勝負を挑み勝つことと、ファミリアのハウスを持つこと。この2つを満たせばいいという話だった。

 ハウスに関しては神様のお店にしていいと言っていましたからね。そこはクリアですね。



「神様ランキングに参加するメリットとしてはこの地に信仰者が生まれ、貢物を得ることが出来る点です。これはランキングをあげる事により増えていきます。

 また、デメリットとしては常に他のファミリアから敵対視される事です。信じるものが異なれば争うのも仕方が無いと言えるでしょう。

 尤も、これを回避する方法もあります。」


「回避する方法ですか?」


「はい。同盟を組むのです。ファミリア間の同盟は一度行えば簡単には反故できません。

 しかし、これよりももっと一般的となっている方法があります。」


「眷属だね。」



 神様の言葉にピクリと止まった後、頷く少女に首を傾げる。うーん。やはりこの2人、私の感では何かありそうなんですよねぇ。


 ジーッと2人を見ながらも、眷属についての説明を受ける。眷属とは名前の通り、立場の弱い方が強い方からの命令通りに従わなければならないというものらしい。

 ただし、従っている側にメリットが無いわけではなく、もし危機が迫った場合、助けを求めることが可能なのだとか。

 どちらにせよ、従うのは嫌ですね。従うくらいなら神様ランキングの参加をやめる気がしますよ。私の参加理由はあくまでも神様の名を知らしめることですから。別に神様ランキングだけが方法では無いのです。



「これで説明は以上です。何か質問は。」


「ないよ。」


「ありません。」


「では、ファミリア結成の手続きを行います。こちらの書類に必要事項を書いた上で提出願います。」



 とだけ言うと、受付の人はゆらりと頭が揺れたかと思うとまたガンッと頭を机にぶつけ、眠りについた。

 あ、あれ?今の結構痛そうな音がしたんですが……痛くなかったんですかね?


 首を傾げながらも渡された書類を見る。そこにはファミリア名、シンボル、マスター名、サブマスター名、メンバー名、神様ランキングの参加希望の有無、ホームの位置を書く欄があった。尚、シンボルは何を活動の中心とするかというものらしい。そこまで厳密なものでもないため、月や太陽のような抽象的なものでも構わないのだとか。

 決めるのは色とマークのようですね。これは後でもいいようなので、今決めなくても良いですね。



「さて。マスターはプティでいいよね?」


「え。神様では無いんですか?」


「いや、言い出しっぺはプティじゃないか。」



 そう言われ、確かに一理あると思ってしまったため、むむむ…と考える。いつだって最初に言い出したものには責任が付きまとうものなのは確かだと考え、それならばと頷くことにする。

 スラスラとファミリア名とシンボルを除く欄を埋めていく。……代わりに条件を神様に突きつけて。



「分かりました。その代わり、神様のお名前をファミリアの名前にさせて下さい。」


「いや、その代わりになってないんだけど!?」



 えー、と不満げに神様を見るが、渋い顔をして承諾してくれない。しかし、私にマスターという役職を任せるというのであれば、それぐらいは許されたっていいと思うのだ。



「ダメですかねぇ?」


「ダメだよ!?そもそも、何かしらの神様の名前じゃないとダメなんだからね!?」



 ちぇと言いながらも、内心ではやっぱりそうかと考える。どうしようかと考えていると、助け舟は思わぬところから出た。



「……カオス。」


「はい?」


「カオス、がオススメ、です……。」



 今まで寝ていたはずの受付の人がムクリと体を起こし、私たちの方を見ていた。眠たそうではあったが、瞳には強い意思が宿っていた。何としてでもカオスというファミリア名にして欲しいらしい。

 どうしようかと神様を見ると、そこには何故か苦い顔をした神様が居た。



「神様、どうしますか?」


「…ん?そうだね。それ以外にしような?僕は反対だ。」


「では、そのカオスという神様にしましょう!」


「プティ!?」



 ふっふっふ。神様が嫌がるということはきっと何か神様にとって不都合があるに違いないのです!

 つまり、これは僅かでも神様を知るチャンス……!見逃す訳には行かないのです!


 信じられないという顔で私を見る神様を無視し、キリリとした顔で受付の人に言い切る。ファミリア名にカオスと書いた書類を渡すと、受付の人は眠たげな顔のままいい笑顔でニコリと笑った。



「承りました。ファミリア名、カオス。

 マスター名、エンプティ。サブマスター名、アルベルト・テオズ。神様ランキングに参加希望。ホームは狭間の街ユーシキ通り一丁目ドールハウス『ジンウ』。以上でよろしいでしょうか。」


「はいです!」


「いや、ダメだからね!?」


「マスター、エンプティ様の了承により手続きを完了とさせて頂きます。今後のご活躍を楽しみにしております。」



 ぺこりと頭を下げる受付の人に怒りが収まらない様子の神様ではあったものの、やがてどうしようも無いかと肩を落とした。



「何でこうなったんだろう……。」


「往生際が悪いです。素直にお認め下さい。」


「君が!それを!言うかな!?」



 腹が立って仕方が無いと言った様子の神様に受付の人はニヤリと笑う。



「さあ?我らは、ただ待たされただけ、なので……。」



 それだけ言うと、口角を上げたままにまたフラリと頭が揺れ、ガンッと頭を机にぶつけた。すうすうと聞こえてくる寝息によく寝る人だと思った。

 やはり、この人と神様は顔見知りなのでしょうね。待たされたと言っていましたし。理由は分からないものの、待たせたのなら神様は酷い方ですよね。


 人の邪魔になることはなさそうだったが、窓口の前で話すのもどうかということで外に出た。



「さて。何にせよ、これでファミリアが出来ましたね。」


「うん。それで、今後の活動なんだけど……」



 そう言って神様が話し出そうとした時。唐突に地面に矢が刺さる。見ると、その矢には何やら折りたたまれた紙が結ばれていた。



「矢文、かな?」


「わぁ。実在したんですね。というか、やる人がいたんですね。そっちの方が驚きなんですが。」


「いや、街中で矢が飛んできたことに驚こうか?」



 何やらツッコミを入れる神様を無視して矢から紙を取る。そして、開くとそのB5サイズくらいの紙にはこう書かれていた。



『挑戦状

 我ら神様ランキング800位、摩利支天ファミリアはカオスファミリアに決闘を挑む。

 ○月▲日11:00 摩利支天ファミリア本部にて待つ。』



 文書を読み上げ、神様と顔を見合わせる。どの道神様ランキングに参加する以上、いつかはやり合わなければならない相手ではあったが、急に来られても戸惑いしか無かった。



「……えっと?いきなり挑戦状ってどういう事なんでしょう?」


「ま、まあ、手間が省けたと思えばいいんじゃないかな。相手が何を思って挑んできたのかは分からないけど。」



 そもそも、何故ファミリア名を知っていたのかすら分からないのだ。不気味で仕方がなかった。

 ……まあ、理由は不明ですが、頑張るとしましょう。カオスファミリア初の活動開始です!

次回、掲示板回挟みます


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] カオスファミリア活動開始!神様ランキングスタート!これから忙しくなりますね♪おもに神様が( ̄▽ ̄) 居眠りしていても大丈夫な職場…いいな~(笑) [気になる点] この受付さんとも何かあっ…
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