34話 傍観者の立場は羨ましいもの
こんにちこんばんは。
書けば書くほどに登場人物のしたい事が合ってるのか分からなくなってくる仁科紫です。
……いえ。ちゃんと合ってるんですよ?ええ。読むとうん?ってなるだけで。
それでは、良き暇つぶしを。
声の主を見ると、銀色の眼鏡をかけた背中に翼を持つ黒髪の女性が立っていた。髪は下の方できっちりお団子にされており、つり上がった目は青い瞳が冷たくキツい印象を見る人に与える。何より、口が如何にも不満だと言いたげに引き結ばれており、その印象を助長させた。
しかし、正に真面目を体現したかのような首から上に比べ、彼女の服装は真逆の印象を見るものに与えた。
足の綺麗なラインを隠せていないミニの黒いタイトスカートに白いカッターシャツ。しかも、このシャツは臍より上で裾が結ばれているため、体型の良さがより強調されている。なんとも視線のやり場に困る格好だ。
おまけとばかりに肩にかけられた黒い上着は軍服のようであり、ビシッと着こなす姿の方が違和感が無いように思えた。
なんでしょう。この気崩した方がカッコイイんでしょう?と言わんばかりの極端な格好……。正直、最早破廉恥と言われても仕方がないくらいなんですが。
うーん。真面目な人が弄ばれた結果、爆誕したキャラみたいな印象を受けますね?
なんとも言えない気持ちになりながらも女性を見る。
注目されたのが分かったのか、女性はこちらに向かってニコリと笑った。……が、どうにも作り物めいており、なんとも気に食わない。
うへぇ。やーですね。あの顔。どうも見覚えがあり過ぎるから……というのもありますが、ちょっぴり狂信者の影が見えるんですよね。〜様がどうのこうのと言っていましたし、お近付きになりたく無いんですが。
……まあ、キャラが若干被っている分、分かる部分っていうのがあったりするんですよ。誠に遺憾ではありますが。
「さて。そちらの青年がノーフェイスで人形さんが翼を持つ資格持ちですね。
初めまして。私は我らゼウスの象徴にして唯一無二の尊い方であるディボルト様の忠実なる下僕。分不相応ながらもサブマスターを任せられております。トアと申します。
この度は同じ翼を持つものとして何か助けになりましたらとお声がけさせて頂いた次第です。」
まさに慇懃無礼といった様子で礼をするトアという女性は、個人的に見てもあまり好きになれそうになかった。
「ああ。君らお得意の勧誘か。それなら断る。」
神様の即断即決に想定内ではあったが、予定外だったのか女性は片眉を上げて神様を見る。
「私はそちらの人形族の方に尋ねているのですが。」
「あっそう。だってさ。プティ。君はどう思う?」
唐突に話を振られ、2人からの視線が刺さる。その間、妖華さんはというと、ニヤニヤとした顔で私たち3人のやり取りを見ているだけだった。
くっ。私もそちら側が良かったのですけど!?
傍観者の立場に徹する妖華さんを恨めしく見ながらも考えを述べた。
「…私は神様の意思を尊重しますし、そもそも初対面の方から助けて頂く理由もありません。貴女達の登場は非常に迷惑です。今後とも出会いたくもありませんね。」
「そうですか。では、仕方がありませんね。」
そう言って指をパチンと鳴らす女性。すると、周りに控えていた背中に翼を生やした人達がこちらに剣を向けた。
ああ。なるほど。従わないなら…ってやつですね。なんて傲慢で人の個性を考えない人なんでしょう。
あまりにも動かないので、一瞬背景か何かかと思いましたよ!?……って、これは違いましたね。
えーっと、あれです。あれ。……そもそも、敬語が被ってる時点でキャラ被りなんですよ!私から翼というアイデンティティをとっておきながら、その上敬語までとは……!本当に許せない気がします……!
見当違いな方向に怒りを発散させながらも考える。そもそも今は翼すら生やしていないのに、これなのだ。本当にこの女性には呆れた目を向けるしかない。
仕方がなく、どうするのかと神様に目を向ける。そこには油断なく周りを警戒し、剣を向ける神様が居た。
あっ。すっかり忘れていました。話し合いの雰囲気になっていましたが、普通に剣を構えながら話してたんですよね。
形だけでもと、何時でも糸を張り巡らせれるように準備しておく。魔力を手に集めておくだけでもかなり時間が省略できるのだ。
「なるほど。この展開が読めていたから来たのか。戦闘狂の君らしいね?」
「そういうコト。だけド、理由はベツ。キミなら確実に大丈夫ダと知っていたヨ。デモ、そっちの子を守りながらハ厳しいデショ?」
「……見返りは?」
「モチロン、アテナに入るコト。」
そう妖華さんが言った瞬間、神様は素早く私の目の前に移動すると、私を掴んで距離をとる。妖華さんのことも敵だと認識したようだ。
確かに、これは面倒くさいことになりましたね。ぼんやりと神様の手に掴まれながら思う。尚、神様の腕の中にいるとか間違っても考えてはいけない。今ポンコツになるわけにはいかないのだ。
ジッと待っていると、またやれやれとため息をついた妖華さんはニヤリと笑って口を開いた。
「……ッテ、言ってみたいケド、違うヨ。ヤダなァ。そんなに警戒しないでヨ。
キミとの本気の一戦でドウ?訓練場なら死ぬことはナイシ。」
一瞬呆気に取られた神様は少しの間悩み、やがて頷いた。それを見た妖華さんは機嫌が良さそうに懐から紙幣くらいの大きさの紙を数枚取り出し、体の重心を下げて何かの体術らしい構えをとった。同時にすぐさま神様の手から解放される。
なんというか、複雑な気持ちになりますねぇ…。
「やはり貴方はその為に来ていたのですね。ご苦労なことです。わざわざ人の問題に首を突っ込むとは。
それだからトリックスターなどと言われるのです。」
「ハハッ。魔王狂には言われたくナイものダネ?実におかしな話ダヨ。
それヨリ、やらないノ?やるノ?やらないナラ……」
皮肉げな女性に妖華さんは淡々と言葉を返す。
言葉を途中で切った妖華さんはニヤリと笑った。
「こっちカラいくヨ?」
その言葉と共に妖華さんの姿が消える。次に姿を現したのは、一番右側で後ろで剣を構える手に持つ男性の前だった。
「まずハ、肩慣らしダネ。
〈宵の一:発勁〉」
「ガハッ!?」
しかし、気づけばその男性は吹き飛ばされており、額にお札が張られていた。
男性は起き上がろうとするが上手くいかず、立とうとしては転んでを繰り返す。
「ハッハッハ。すまないネ?札でキミの動きハとめさせてもらったヨ。」
ニヤリと笑う妖華さんの言葉に男性は額の札を取ろうとする。しかし、まるで実態のないものを触るかのように手は札を素通りしてしまう。
「相変わらず嫌なスキルです。
〈全ては我が願のままに〉貴方のルールに沿って結果は導かれる。
今回はいつもの『自分に負けたら相手は動けない』って所ですか。」
「酷いネェ?種明かしは最後にするモノと相場は決まっているダロウ?」
ワタシが面白くないじゃナイカと、ニヤニヤと笑いながら言う妖華さんはまったく酷いと思っている様子はない。それどころか、バレたこと自体を楽しんでいるようにも見える。
2人が話し合いをする間にも神様は右側の残り3人に近づき、剣を振るった。
カキンッ!という衝突音の後、1人と鍔迫り合いをしている間に2人が後ろから魔法と剣でそれぞれ援護しようとする。しかし、その瞬間、神様の姿が一瞬消えて再び現れた。何が起きたのかと見ている間に3人とも地面に沈みこんだ。1人は距離が離れていたにも関わらず、だ。
ぐぬぬ……。御二方とも、早すぎて目が追いつかないとは……やはり、まだまだ精進が足りないのでしょう。致し方がないとはいえ、やはり悔しいものがありますね。
そうして悔しさを噛み締め、反対側で様子を伺っている残り6人の影を一先ず縛ることにする。動きさえ止まらなくとも、何も役に立たないのは私の存在意義がないように思えて嫌だった。
魔力たっぷりの〈影縛り〉ゴーですっ!
発動させると同時に動きがぎこちなくなる6人に一瞬隙が生まれた。それを見逃す神様ではない。
「ハッ!」
後ろから前からと斬り掛かられる6人は、抵抗しようにも剣をノロノロと動かすのみでまともな抵抗にすらなっていない。魔法を発動させようにもその兆候を感じた時点で神様が斬りかかり、吹き飛ばされる。
よく見ると、神様が相手した人にもお札が貼られていることから、妖華さんのスキルは神様にも適応されているようだ。
そうして周りの人達が全員倒れた頃。妖華さんと話すだけで状況を静観していた女性はやれやれと首を振った。
「彼に貴方までいるとこうなるのも必然でしょう。仕方がありません。ここは引いて差し上げます。」
そう言って女性は背中の翼をバサりと広げ、空へと浮かび上がる。
「では、皆様またお会いしましょう。」
「えっ。この人たち置いていくんですか!?」
去ろうとする女性に驚愕の眼差しを向ける。女性は億劫そうに振り向くと、あぁと今思い出したとばかりに自信を見上げる人々を見た。
「負け犬は要りませんから。」
「お、お待ちください!我らはまだ戦ぇ……」
それ以上言葉を発する前に女性の手から氷の槍が放たれる。あまりに予想外だったのか、女性に訴えかけていた男性は己の足に突き刺さったそれを信じられないと言わんばかりに見た。
「何故……?」
「おっと。手が滑りました。」
淡々となんでもない事のように言う女性は、もはや男性の事を路傍の石にしか見えていないのだろう。
表情のない顔を見た他の人達も顔色を悪くし、声もなくただ目を伏せている。皆分かっているのだ。この女性に何を言おうと意味は無い。自分たちは敗者であり、既に元の場所には居場所など無いのだと。
その様子を見てもなお、女性は笑った。それは酷く冷酷で無慈悲なものだ。
「一度ファミリア以外の者に負けた者に慈悲をかけない。それが我らゼウスのやり方です。気に食わないなら消えろと言いましたね?それでも所属し続けたのは貴方たちです。」
事実だったのか、声を荒らげるものはいない。ただ皆目を伏せ、唇を噛むだけだ。
彼らはきっと、可哀想、なのでしょう。でも、それは私が彼らに向けていい感情ではありません。それは彼らをより惨めにさせます。ただの侮辱でしかありません。
私がしていいのはただ聞いている事だけ。それだけでしかない。その事実につい口を挟みそうになる自身を戒める。……戒めなければ、何をしでかすのか分からなかったからというのもあるが。
あれだけ自分勝手な愛を海に注いでおきながら、その結果が実る前に突然消えた両親と海の関係と重なって見ている自分がいる。
彼らは盲目的に信じていたものから突然捨てられた。
私は盲目的に従っていたものが突然消えた。
どちらも形が違えど、相手からの裏切りに変わりない。しかし、例えそれでも彼らは仕方がないと彼女に従うのだろう。自身で選んだ道なのだから。
とにかく、必死で耐えながらも目の前の話がどのように展開するのかを見続ける。
女性は一度笑みを消して無表情になると、しかし…と言葉を続けた。
「もし、貴方たちが再び元の地位に収まりたいのなら、努力しなさい。それ次第ではゼウスも許して下さる事でしょう。貴方たちの弱さを。」
『それまで私たちは待つこととします』と言うと、もう言うことは無いとばかりに何処かへと飛び去っていった。
……何だったんでしょう?あれ。……と言いますか!私の感傷を返せなんですが!?
次回、そろそろファミリア作りたい……
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。




